2012年12月21日金曜日

DREAMS COME TRUE(ただし、

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"...five,four,three,two,one,ZERO.....good luck...ever..y.one...."
管制塔指揮官の見送りの言葉が、脱重力エンジンの猛烈な爆音に混ざってかすかに聞こえた。横にある小窓から見えるケネディ宇宙センターの施設が、みるみる小さくなる。見送る大勢のひとびと、あそこに僕の家族もいるんだろう。エンジンの放出熱を吸収するよう発射台下部に貯められた大量の水が、あっという間に膨張して水の煙となり辺りを飲み込むのが見えた。予定軌道に対応するためにロール運動とピッチ運動を繰り返す機体のなかで、僕らの体に一気にGがかかる。ぐんぐん高度を上げる機体は、いまの僕の期待の高まりを表すように、青空にすーっと伸びていった。 



僕は宇宙飛行士になりたかった。 



ふと追想から現実に帰る。見上げていた空に、巨大なオレンジの嘴を重そうにぶら下げて飛ぶ大きな鳥が横切って、ばさっと音を立てて木にとまった。僕は思い出したように双眼鏡を覗くと、その鳥はちょうど、寝床とする木にぶらさがった甘そうに熟れた果実をほうばっているところだった。鮮やかで大きな嘴が眼を引くこの奇鳥、僕らが今回の研究テーマとして注目しているのはその飼育方法で、どうやらその大きな嘴の中に雛を飼っているらしい。カンガルーの袋が有名なように、赤ん坊を肌身離さず連れて育てるという例はさして珍しいものではないが、この鳥の特異な点は、嘴の中にひとつのミニ・ジャングルがある事である。つまり、大きな嘴の中に、盆栽のような小さな木々が自生していて、そこに生る実を小さなヒナが食べるといった具合である。なぜこんなマトリョーシカ構造が生命のとある部位の中で起きているかは定かでないし、こうなると当然、そのヒナの(相対的には)大きな嘴の中にもう一つのマイクロジャングルがあるのではないかしら、とファンタジックなことを真顔で推測する研究者も少なくない。アリエッティもびっくりである。しかし現実は小説より奇なり、自然人間様の予知を裏切るのが仕事なので、さしあたりそのヒナのクチバシの中には、MEN・IN・BLACKのビー玉さながらの小宇宙が有るのではと僕は睨んでいる。 



僕は自然科学者になりたかった。 



閑古鳥がカアーと鳴いた。気がする。がらんとした店内にはメガネをかけた男がひとり、ずるずるとラーメンをすすっている。頬杖をついてカウンターに座る僕は、はあーっとため息をついた。客がいないことに落ち込んでるのではない。いや、それもあるのだが一番の問題はそこではない。うちはラーメンじゃなくて餃子で勝負してんだ、まずメニューにも餃子のほうがラーメンよりデカく乗ってるだろう。さらに言えば店の名前だって「ちゃおず」なんだから明らかに餃子押しだろ、気づけよ、と、心で毒づいて、あまりに暇なので店内の小さなテレビをつけた。あれ、今日代表戦の日だったのか。 



僕は(あくまで餃子で勝負する)中華料理屋の主人になりたかった。 



息を飲む展開、一進一退の攻防。歓声、悲鳴、祈り。そこで呼ばれる自分の名前、緑のピッチ、青いユニフォーム、ひとつのプレー、ひとつのタッチで勝利を。 



僕はヒーローになりたかった。 



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夢見たものに限る。)


人間が想像できるものは、人間が必ず実現できる。----ジュール ヴェルヌ


だいたいほんと、だいたいフィクション
2年 FW 羽場優紀

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