2013年3月31日日曜日

ナンノタメニサッカーヲスルノカ


相手からボランチがボールを奪った。ボランチは右サイドに大きく展開した。ナイス。

 

 

 
 
今日は天気が最高だ。カラッとしていて空気はほどよく冷たい。風がユニフォームの首元から入り、汗をように飛ばすように俺の体をつたって裾から抜けていく。

 

 

 
俺はなんとか執拗にくっついてくるDFのマークを振り払い右サイドからボールを受ける。ボールはまるで磁力でも持っているかのように俺の足にスッと収まる。今日はすごく調子がいいみたいだ。

 

 

 
今日の相手はなんていうところだっただろうか、トラップした瞬間にふと考える。もう忘れてしまった。この忘れっぽさを直さなければ。まあ今はそんなことはどうでもいい、どっちにしろこのボールをゴールに放り込めば準決勝進出が確定する。

 

 

俺は上体のフェイクだけでマーカーを置き去りにした。残るは大会屈指のCBGKのみ。俺はまず右に仕掛けた。予想通りだ、やつは素早い反応で体を寄せてくる。すかさず俺は得意とする切り返しでやつの意表を突く。バランスの崩れたやつの左側はまるで救急車が通る際の道路のようにぽっかりと空いている。遠慮なく抜かせてもらおうか。

 

 

今日までの1、2回戦調子が上がらずにチームに迷惑をかけてきた。それでもコーチは起用してくれた。観客席からは自分の名前を叫ぶ声が、不思議と心地よい不協和音となって耳に届く。

 

 

このキーパーの特徴は分析済みだ。確か右足の付け根を痛めていて踏ん張れないはずだ。ペナルティエリアに侵入した俺の忘れっぽい頭には、きめの粗いふるいに引っ掛かったパウダーのだまのようにそんな情報が残っていた。

 

 

この試合にはわざわざ仕事を休んで両親が見に来てくれている。サッカー人生で初めてだ。「今日は応援に行くからな」。もともとサッカーの嫌いだった父親が今朝そういったときには驚きの気持ちよりも父に認めてもらったような感じが嬉しかった。

 

 

今日は本当に冴えている。ゴールの右上に向かって、最新のサッカーゲームのようにシュートコースが白く映し出されて見える。

 

 

 

俺は迷うことなく右足を振りぬく。

 
 
 
 
ボールは少し回転のかかったまま思った通りのコースを進んでいく。

 

 

 

不思議だなあ、今日はなんですべてがスローモーションに見えるのだろうか。

 

 

キーパーが少し遅れて反応する。俺にはわかっている、お前にそのシュートは届かない。

 

 

ボールはあざ笑うかのようにキーパーの手をすり抜け、ネットに突き刺さる。

 

 

 

その瞬間、世界が停止する。ゲームみたいに。

 

 

そしてその次の瞬間には何とも形容しがたい、ヴィヴァルディの「夏」の暑さでも、沸かしたてのお風呂の
 
 
 
熱さでもない、熱い何かが、俺の胸に溢れる。ドクドク、ドクドク。

 

 

 

そんなマンガみたいなカッコイイプレーができたらいいな。

 

           

                   

                  新2年 坂本晋悟

 

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