要塞
2016年12月31日16時00分(イギリス時刻)
イギリスを訪れた僕はある要塞に足を運んでいた。ライムストリート駅を出発し、歩くこと30分。日が暮れて灯がともり出す街の中心部が遠く下の方に眺められた。同時に、要塞が近づいてきたこと非常に胸が高鳴っていた。
2016年12月31日16時15分
人数が増えてきた。誰もが要塞に向かう同士である。赤い帽子をかぶっている8歳くらいの男の子とその父親。テンションが高い青年3人組。赤いマフラーをつけた早足のおじさん。ゆっくりお喋りしながら歩いてる老夫婦。皆が志を同じくして要塞へと足を運んでいた。
2016年12月31日16時25分
到着した。空はすっかり暗くなったが、要塞は真っ赤に輝いていた。要塞に刻まれた名は『Anfield』。そう、リヴァプールFCのホームスタジアムである。ここでリヴァプールFCは数々のドラマを生み出してきた。ファンであれば、一生に一度は訪れたいと思う場所であろう。この日はプレミアリーグ第19節マンチェスター・シティ戦が行われることになっていた。
要塞の外は非常に賑わっていた。多くの店が並び、食べ物やグッズ、パンフレットが売られていた。大型ビジョンには前回のシティ戦のハイライトが流れ、沢山の人で盛り上がっていた。皆が皆、30分後を待ち望んでいて、僕もとても興奮していた。
2016年12月31日16時35分
入場口での厳重な検査を超えた先には、とても言葉にはできないような世界が広がっていた。画面の中でしか見たことがなかった大好きな選手たちが目の前でアップしていた。席はもう大分埋まっていて、両チームのアップに対する野次や声援が飛び交っていた。沢山の光によって照らされた要塞の内側は、1つの大きな生き物のように奮い立っていた。
2016年12月31日16時58分
試合開始直前、要塞の中をある歌が響き渡る。
『You'll never walk alone』
大声で歌う者。早口で歌う者。明らかにメロディがおかしい者。もはや叫んでるだけの者。統率されたとは言い難いサポーターたち一人一人の魂の叫びが、要塞を"要塞"としていた。
2016年12月31日17時00分
試合開始。要塞は"要塞"としての力を発揮する。1つのプレーのたびに起こる歓声、悲嘆、どよめき、ブーイング。全てが選手たちを後押しし、リヴァプールFCを勝利へと導いていた。
試合結果は1-0
前半序盤のワイナルダムのゴールを守りきったリヴァプールFCが勝利を飾った。
ゴールシーンでのサポーターたちの歓声は凄まじいものであったが、それよりも試合を通じての熱意のこもった声援が印象的だった。
サッカーにはホームとアウェイが存在する。多くのチームがアウェイよりホームでの勝率の方が高い。これにはピッチ慣れや移動距離、試合前の準備や気候など様々な要因があるが、プレミアリーグにおいてはスタジアムの『要塞』としての力が非常に大きいな要因になっていると感じた。
しかし、これはプレミアリーグに限った話ではない。Jリーグではプレミアリーグに比べ、ホームの勝率は低いというデータが出ている。とは言っても、Jリーグでもアウェイよりホームでの方が勝率は高い。
御殿下グラウンドだって『要塞』にできる。ピッチ内の選手たちはプレーで観客を本気にさせることができる。ベンチの選手たちは試合に出ずともピッチ内の選手たちを鼓舞することができる。ベンチ外で応援する選手たちは応援歌でピッチ内の選手を後押しすることができる。ピッチ内外での結びつきがより強くなれば、御殿下グラウンドを『要塞』にすることができると思う。
まもなく開幕のリーグ戦。御殿下グラウンドを『要塞』にしてやりましょう。
2年 島田
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