断捨離宣言

「同期の女子もいない。毎日部活に追われている。そんな中で何で部活を続けてきたの?」

スキルが身につくから?大人と関わる経験ができるから?選手に感謝されるから?いや、そんなんじゃない。

「まあ、勝ちたいからかなぁ」

心の底から思う、「部活を続ける理由」なんて、これ以外には存在しない。
でも、「勝ちたい」という気持ちと、自分が今やっている仕事が、純粋に結びつかないことも多々ある。

スタッフの仕事はすべて勝利に結びついている、と人は言うけれど、正直ピッチに近い仕事以外は、勝利に貢献しているという実感は湧きにくい。

例え勝利への結びつきが弱くても、部の仕事は誰かがやらなければならないもの。
でも、これは誰か特定の人がやるべきではない。
「出来る人がやる」ということを続けているのは、部にとって大きな損失である。これでは、「出来る人」はいつまでも「出来ること」しか出来ないし、「出来ない人」はいつまでも出来ないままである。

おそらく、「出来る人」に仕事が偏りがちなこの部が、スタッフの多い新4年生が引退したあとに直面する課題でもあると思うが、仕事をしない人を責めているわけでは決してない。
むしろ逆。これは、私自身の反省と、自戒を込めたfeelingsである。


昨年の後期リーグの終わり頃、私はよく泣きながら帰っていた。
電灯の少ない本郷キャンパスは、部活が終わる21:00過ぎにはもう真っ暗で、人通りも少ない。部室を出てから、飲食店が立ち並ぶ明るい本郷通りに出るまでの約10分間は、誰にも心配されずにストレスを発散できる唯一の時間だった。

恥ずかしい話だが、「やりたいことは全部やりたい」という強欲さと、「自分が頑張ればなんとかなる」という過信によって、あれやこれやと手を出したうえ、「やるからにはちゃんとやり通したい」というせめてもの責任感が、いわゆるキャパオーバーという状態を作り出してしまっていたのだろう。

本当はこんなことは胸の内に閉まって、サラッと仕事をこなしたほうがカッコイイと思うのだけれど、自分の弱さを隠したまま偉そうなことを言うのもどうかと思い、この機会に書いている次第である。

当時を振り返ると、自分の視野の狭さにうんざりしてしまう。目の前の試合や仕事、人間関係に精一杯で、せっかくア式の門戸を叩いてくれた後輩たちや、必死に闘っている同期や先輩方のことを、本当の意味では信頼できていなかった。
自分が信頼することが、相手からの信頼を得る近道なのに。
その信頼が、自分自身を救うことにも繋がっていたのに。

相手を信頼し、自分が本当に為すべきことを為すこと。
チームとして初歩中の初歩とも言えるこのことに気づいたのは、つい最近のことだった。


幸いにも、私にはあと1シーズン残されているので、以上の反省を踏まえて、残りのア式生活で私が成し遂げたいことを2つ書いておこうと思う

①様々なことにおいて、組織の基準を高める存在になること。

人間は良くも悪くも適応する生き物なので、求められる基準が高いか低いかで、出来ることが変わってしまいがちである。
目の前の仕事に追われていたり、視野が狭くなっている状態では、現状の基準に甘んじ、その基準すら保てないこともしばしばある。
そのため、組織の中には、日々の雑務をこなすだけでなく、周囲に気を配り、自分のことでいっぱいいっぱいで基準を見失ってしまいがちなチームメイトに適切な基準を設定し、それを示すことのできる人材がいることが望ましい。
おそらく本来、この部における「GM」という役職はこのような役割を担うべき存在であるはずなのだが、日々のしなければならないことに忙殺されていてはこのように広い視点をもつことは時に難しくなってしまう。

今後は、部員を信頼し、頼ったほうがいい時には周りの部員に助けてもらいながら、スタッフとして、ア式部員として、GMとして、はたまた1人の人間として、組織の基準を高める存在になることで、チームにいい影響を与える。これが、私が成し遂げたいことの1つ目である。

②ア式に所属する皆が、目的を持って存在できる環境を作ること。

ア式には大きな可能性がある。しかし、その可能性を開花させ、「大きな成功」を収めることができるかどうかは、「失敗する自由」があるかどうかなのだと思う。
「自分が頑張ればなんとかなる」と信じ込み、自分1人が頑張ったところで、それは「小さな成功」にしか繋がらない。そうではなくて、周りの仲間を信頼し、部員一人一人が「失敗する自由」を持って積極的に仕事に取り組む。
そのいくつかはもしかしたら失敗してしまうかもしれないが、そんなことの責任は私たちが取ればいい。失敗を恐れずに積極的に取り組んだ活動がいくつも合わされば、きっといつかそれは「大きな成功」となってこの部に返ってくるはずだ。

皆が目的を持ってア式で過ごし、やりたいことを存分に出来る、そんな環境を作ること。これが、成し遂げたいことの2つ目である。


先輩方のおこぼれのような昇格を経験してから2年間、正直悔しい思いしかしてないし、上手くいかないことの方が多かったけれど、集大成となるこのシーズンは、絶対に笑って終わりたい。

何となく部活に来て、サッカーをしたり部の仕事をして過ごすこともきっとできてしまう
でも、ア式蹴球部という大きな船に乗った私たちは、お互いの人生に対して少なからず責任を負っている。
風向きが変わるのを待っていても、帆を動かしてくれる人がいる限り船は進んでいくだろう。しかし、高い基準のなかで、目的を持って自ら帆を動かせる人が増えていけば、この部はスピード感を持って進む、もっと強くて、いいチームになる。

リーグ開幕まで、時間があるようであっという間。
同じ方向を向いて、焦らず着実に、本当に為すべきことを見失わないこと。



新4年スタッフ 小坂彩

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