8月といえば

8月が終わった。4年前から、僕にとって8月といえば、選手権の都大会予選。全国高校サッカー選手権への出場をかけ、猛暑の中、都内の高校サッカー部員が全力で闘う。

今年も後輩達の応援に行ってきた。彼らは勝ち進み、今は10月から始まる都大会本戦に向けて毎日練習している。躍進を心から願っている。

試合を観ているうちに、高校時代を思い出した。

僕は高1の夏から試合に出させてもらえた。夏合宿中に初めてメンバーに選ばれた時は本当に嬉しかった。しかし、背負うものが重く感じられ、思うようなプレーが出来ず、次第に自信を失っていった。合宿が明け、都大会予選が始まると、公式戦のプレッシャーから「自分よりも上手い先輩がいるのにどうして自分を使うのか」という思いを拭い去ることが出来ないまま試合に出続け、先輩の引退を迎えることになった。試合後、涙を流す先輩の姿を見て、申し訳ない気持ちから自分も涙が溢れた。先輩達は高校3年間この大会に向けて毎日汗を流してきた。当時の自分は後ろ向きな気持ちになるだけで、その3年間の重みに値する仕事が出来なかった。

ふと今を振り返ってみる。

今の自分は、あの時の自分と重なる。先輩達は東京都1部への昇格を目指し、今までの大学生活をかけて闘っている。そのことは頭では分かっているが、先輩達の求める水準に、僕はプレーの面でもメンタルの面でも足りていない。8月からAチームに上げていただいて、もう1ヶ月が経ったが、周りの先輩との実力差を毎日痛いほど実感している。ミスをするのが怖く、自分に自信が持てない。
しかし、そんな気持ちのまま練習に出続けたら、先輩の4年間の努力に応えるプレーは出来ず、自分も成長出来ない。
コーチも先輩もよく見ていてくれて、自分のプレーの悪い点を指摘し、どう改善するべきかも丁寧に教えてくれる。なかなかAチームに打ち解けずにいた時期に、先輩達は声をかけ続けてくれた。恩返しをする意味でも、自分はア式の勝利に少しでも貢献したい。自分が実力不足でも、チームの勝利に何らかの貢献ができるはずだし、ア式の1部員として、そうしなければならない。
アドバイスされたことは数え切れないほどある。ボールをもらう前に周りを見て次の選択肢を複数持つこと、ボールをもらう時の体の向きやポジショニング、ボールを置く位置を気をつけること、早く判断すること、ボールサイドに寄りすぎず中盤のスペースを埋めてバランスを保つこと。ネガティヴにならず、その1つ1つにもっと向き合う。それが自分の成長につながり、チームへの1つの貢献になる。自分の強みは守備だから、もっと突き詰めた高い強度の守備をすることも、チームのためになるかもしれない。長いリーグ戦を闘っていく上でチームの雰囲気を良い方向に保ち続けるために、練習でも試合でも前向きな声をかけ続けることは、今の自分にでも出来るはずだ。

高校の選手権とは違って、大学サッカーは「負けて引退」とは限らない。長いリーグ戦の末、たとえ最終節で勝っても、昇格が出来なかったら気持ちよく引退は出来ない。最終節でも勝って昇格も出来れば、最高の形での引退ができる。4年生の先輩が理想の形で引退できるように、僕は今の自分に出来ることをただひたすらやろうと思う。先輩達の4年間を無駄にしないためにも、そして何よりも、自分が後悔しないためにも。

ア式にとって8月といえば、後期リーグ開幕。
ア式に入ろうと受験勉強も部活も頑張っている母校の後輩にも「1部昇格」という良い知らせを伝えたい。

1年 茶谷晋伍

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