電子のおとぎ話でもいいじゃないか
明けましておめでとうございます。昨年は先輩、同期、そしてOBの方など様々な方にお世話になりました。今年もどうぞよろしくお願いします。
さて、またテストの期間に回ってきてしまったので、前回同様テスト勉強からの話題です。
東大理系の1年生には、現在Aセメスターで構造化学という科目が必修として課されています。これは恐らく、一般的に量子化学と言われているものと似た内容を扱っているので、まぁ同じと考えてもらっても差し支えないと思います。この講義では、必修科目のカリキュラム上では初めて、量子論と向き合います。
量子論とは何か。量子論の世界に足を踏み入れてから3ヶ月程度の僕なりに答えを出すと、それは「確率的に物事を捉えること」によって物事を解明しようとするものだと思います。それはどういうことか。そこには電子が深く関わっています。負の電荷を持つ電子という代物は、正に帯電する原子核に比べてとても小さく軽いのですが、この電子、実はある時刻における位置と運動量(質量と速度の積という認識でいいと思います)を正確に求めることができません。これは不確定性原理と呼ばれています。つまり、電子の運動の様子は、古典的な物理学の方法では分からないということです。(位置を正確に求めようとすれば、運動量の誤差が大きくなり、逆も然りといった感じです。これは測定技術云々の話ではなく、電子の波動性に起因するものらしいです。)それに対して量子論はどうしたかというと、電子が「大体どこにいるか」という確率を扱おうと決めました。そうすると、なんということでしょう、電子の挙動は正確に分からないのにもかかわらず、様々な分子についての解釈が上手くいったのです。こういう構造は安定とか、この反応ではここがこう変化する(しやすい)とか。このように、電子が「ここら辺にいます」と示すのが、僕が体験した量子論の根本的な部分です。
つまり、我々の構成単位である原子ですが、それも確率的な解釈によって認識されています。我々の基本単位は、言ってみれば不確実な存在なのです。本質的にゆらぎを内包しています。それならば、と思いませんか?ここに居る我々自身は確実なのか?果たして本当に今この地点に存在しているんでしょうか?実は我々は常にゆらいでいるのかもしれません。
また、逆の解釈もできます。「不安定な土台の上には立派な家は立たない」というようなことがよく言われます。だから勉強でも、サッカーでも、基礎を大事にしろとか言われます(まぁ確かにそうです)。しかし、もしかしたら我々自身が、その反例になっているのかもしれません。もし中学校のときに不確定性原理を知っていたら、「先生、でも僕たちを構成する、土台である電子の挙動は、確率的にしか捉えられない不確実なものですよね?」って反論できたのになぁ。
さて、ここからは想像です。古典的な物理学の世界では、運動方程式F=maなどの基本法則を元に物体の運動を記述し、正確に未来を予言できました。しかし、電子の運動はうまく記述出来ませんでした。科学者たちは、始めは、確率的な解釈というものに大きな抵抗があったと思います。分かるのならば、正確にわかった方がいいに決まっている。整った古典物理学の論理体系の中で説明できればいい。しかし、受け入れ難いものを受け入れた後、また別の新しい、1つの整った体系を手に入れることが出来ました。鍵を握ったのは、未知のものに対して、今までの安定した状況を脱してでも、それを解明しようとした姿勢です。1つに決まらなくても、確率的に解釈すればいいじゃないかという捉え方の変化です。...
想像が過ぎておとぎ話みたいになってしまいました。断った通り、実際こうだったのかどうかは知りません。でも別にそれはどうでもいいのです。僕がもしその時代の科学者だったらこう思う、とかそういう話です。
だってそうでしょう。
正確じゃなくてもいいじゃないか。水素原子における電子の挙動すら、ピンポイントで示せないのだから。
おとぎ話でもいいじゃないか。大事なのはそれが、ゆらぎながらも確かに存在しているということだから。
ただ感じた通りに書き連ねればいいじゃないか。これはhistoryでもtheoryでもなく、僕のfeelingsなのだから。
新シーズンが始まりますが、この一年、僕は「今より少しでも高いレベルでプレーする」ことを本気で追求したいと思っています。昨シーズンは、OBコーチや先輩、同期、そして恵まれた設備、環境のおかげでサッカーに今までとは違った見方ができるようになり始めました。ピッチの外からサッカーを知ることはいつでも出来ると思いますが、中から知る機会は今しかない。幸い時間はあります。あとは試行錯誤を繰り返すだけ。書きながらやる気がみなぎってきました。
ミスをしたっていいじゃないか。すぐに結果が出なくてもいいじゃないか。ただ自分が上手くなって、チームに貢献できる確率を最大化できるなら、もうそれだけでいいじゃないか。
勝手ながらこんな気持ちで頑張っていきたいと思います。ということで皆さん、今年もよろしくお願いします!
1年 東 将太
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