副将






「俺は副将をやらない」





部活後の旬悦で我らの主将大和に言い放った言葉だ。
大和は非常に困った顔をしていたが、これが本心であった。




なぜか?



それは仕事がないからだ。




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今回はまず副将という役職について一年間やってて感じたことを書きます。副将って何してんだろって思ってる人多いと思うので、そうなんだ〜って感じで読んでください。

あっ、あといつも通りなんですけど、読みたくない人は最後だけでも読んどいてください笑。

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遡ること8年前、ふく将を中学サッカー部で務めた。これは立候補したのだが、立候補した理由はこれまた仕事がなさそうだったからだ。我らが武蔵中学校は男子校であるため、もちろんマネージャーはいないので、ボトル係やビブス係など一人一人に役職が振り分けられていた。当時の俺はとにかく楽な仕事をしたかったので、仕事が実はそんなになさそうな副将に立候補した。実際、仕事は全くなかった。かなり楽な思いをした。

その3年後でさえ、仕事がなくて楽な副将を高校サッカー部でもやる気満々だった。しかし、同期との話し合いの末、主将に任命された。最初はものすごく嫌だったが、実際は色々なことを学べた。声のかけ方から始まり、後輩の扱い、顧問とのやりとりなどを学び、何より自分の手によってチームが強くなっていく姿、強豪校相手に奮闘する姿、そして勝利して全員が喜びを爆発させる姿を見ることができた。主将としての高校サッカー最後の1年間はかなり充実していた。副将という「楽な」役職ではなく、主将という「重大な」役職が自分を大きく成長させてくれた。



大学入っても一年生の時から主将は軽く意識していた。
特に同期が次々と辞めていく中、絶対にやめなさそうなのは正直俺くらいしかいないと思っていたので、どうせ俺が主将になるなら前もって考えながら練習しようと考えていた。



そして、2年の秋、まあこういう意識で練習してきたからであろうが、代替わりのタイミングで副将にならないかと提案された。合宿で一個上の先輩たちに俺と大和が呼び出され、全体ミーティングで新幹部を発表するから、副将になるかどうかあと4hで決断をしてくれ、と言われた。

悩みながらお風呂に向かうと偶然当時の主将副将がいたので、「副将って何やるんですか?」と聞いてみた。

副「ん〜まあ特にこれといった仕事はないけど、部の決定権は持ってるからね」
主「重要な会議とかに立ち会うから部で何が起きているのかがわかるよ!」
俺「他になんか仕事ありませんか?」
二人「ん〜……」




5分ほど軽くしゃべっただけで、俺は副将になる気が完全に失せた。理由はお察しの通り、仕事がさほどなさそうだったからだ。失う時間に相当する成長が期待できなかったからだ。


その後すぐに先輩たちに副将の願い下げを伝え、全体ミーティングを迎えた。そこで大和が副将になる旨を全員の前で発言し、大和が副将になった。






そして去年7月末、やっとだが、俺らが幹部代になる時が訪れる。




俺は主将か広報長を務めたかった。




主将になったらピッチ外のことにも関わって行きたかった。俺の理想の主将像はピッチ内でもピッチ外でも仲間に対し厳しく指摘して、組織全体のレベルを上げられる人。この人に従っておけば良いと仲間全員から信頼される人、である。この”ピッチ外でも”っていうのが難しい。

ピッチ内であれば、サッカーの技術と的確な指示をする力があれば、リーダーシップを発揮でき、仲間から信頼してくれるであろう。ピッチ外に置き換えると、サッカーの技術とは、ピッチ外に関する知識の豊富さであり、的確な指示とは、その知識を元に何を改善するべきか、新しく何に取り組むべきか、逆に何を消すのかを判断して、仲間に伝えることである、と考える。

代替わり前に大和と旬悦で話し合った時に一番驚いたことは、大和が考えるこのピッチ外の構想の具体さであった。大和はこの時期にリクルートやスポンサー、予算などあらゆる部門を改善する具体的な案を持っていた。俺はおそらくほんの一部しか聞いていないが、それでも圧倒されてしまった。自分の描く主将像に近いのは明らかに大和であったので、大和に主将を任せるべきだと判断した。





また、広報長もやりたかった。


一年の時から広報班に在籍しており、画像班映像班で多く仕事をしてきたため、自分なりにどう外部に広報して行きたいという構想はあった。企画系のアイデアを出すことは割と得意であったので色々なことを試してみたかった。

暫定では、その6ヶ月前辺りに俺が「YouTuberになりたいだろ?」というテキトーな誘いで簡単に動画班に入ってくれた島田が新広報長になる予定であったが、「ぼくまだ広報のことわかってないからまきやりたかったらやっていいよ」と言ってくれた。





結局、大和に「俺が試合出れない時に槇にキャプテンマークを託したい」と言われ、副将を引き受けた。実際キャプテンマークを巻いて試合したかったので、こう言ってくれたことには非常に感謝している。





こうして副将生活がスタートしたのだが、やはり副将としての仕事はあまりできなかったように感じる。

ピッチ外に関しては、確かに幹部ミーティングに出たし、たまにユニット長にも出た。OBの方々とたくさん話したし、卒部式の送辞も述べた。しかし、それだけである。

ピッチ内に関しては、誰よりも声を出し、誰よりも選手に気を配った。同期や後輩に対し平等に、対等に接した。しかし、今まで通りであった。一年の時から誰よりも声を出すことを意識していた。先輩後輩関係なく面と向かって怒るし対等に褒める。正直いつも通りであった。





では、副将の仕事とはなんなのか?めっちゃ考えた。




俺の結論は、
・主将のできないことをやる
・主将になる準備をする
の二つである。


残念ながら副将にしかできない仕事は存在しない。ピッチ内の仕事は基本主将とコーチで全て賄える。ピッチ外の仕事も基本主将主務GM、各ユニットの長で賄える。つまり、副将がする仕事は副将ではない人でもできる仕事なのである。

しかし、主将がすべての仕事に手が回らない場合、副将がその穴埋め、補佐をするべきである。例えば、主将がピッチ内の仕事にほぼ専念するならば、副将はピッチ外の様々な場面で、選手代表として意見を述べながらピッチ外の仕事に携わっていくべきである。



では、今年のように主将が全てに手を伸ばして仕事をしてくれる場合、副将はどうするべきか?



それは主将のできないことを探すしかない。



大和は長く副将としてピッチ外に携わっていたので、俺が大和よりもピッチ外で勝る点は一切なかった。
また、ピッチ内でも大和は声を出しているし、そんなに俺が大和に代わってリーダーシップを発揮する必要がない。



大和にはできないことは何か。それはキャラの違いから生み出されることである。


大和は部員に対し厳しいことを要求し続けることで、あえて部員との距離をとるタイプである(と勝手に思い込んでる)ので、俺は逆に親身になって話しかけるタイプである必要がある。つまり、主将が「ついて来いよ」タイプなら、副将は「一緒に頑張ろう」タイプの方が良い。

部員にこう接するためには相手を知る必要がある。相手がプレイヤーであれば、どういう選手か、どういうプレーをしたいのか、どういう性格かを全て知る必要がある。そしてその選手を見ること。いつもより周りに要求している、ポジショニングがいい、逆に声が出てない、プレーが雑、ミスが多い。注意深く見ていればいろいろと気づくはずだ。その上でその選手がよりチームに貢献できるように、なんて声をかけようか、今声をかけるべきなのか、励ますのか、率直に言うのか、を判断する。些細なことでも聞いてみる。あれ、なんか調子よくね?なんか意識変えた?逆に、今日どうした?もっとこうした方がええでー。そうするとさらに相手を知ることができる。


「ついて来いよ」タイプが自分の考えを突き通すのであれば、「一緒に頑張ろう」タイプはいかに相手の心を読めるかが大事である。副将は相手と同じ目線に立って接して欲しい。




そして、主将になる準備をすること。


俺の理想像的に、主将にもがっつりピッチ外に関わって欲しい。となると、やはり主将になる前からピッチ外に関わっていくべきなのは大和を見れば明らかであろう。副将のうちにいろいろピッチ外について具体的に考えておくことで、主将になったときに様々なところに顔を出して意見して欲しい。


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ということで、


これで、堅いfeelings「副将」は終わりです。





えっどういうこと?。





実はあと二つ書きたいことがあって、十八年間してきたサッカーへの感謝、そして四年間一緒に戦ってきた同期一人一人への感謝です。

でも、「副将」以外の文章は恥ずかしいので隠しました笑。興味がある人はぜひ読んで欲しいです。




隠れた文章を見つけたいときは


「順番に五文字後を読む」


と見つかります。




それではまた続きの文で


最近の口癖は「はらへった〜」
前副将 四年 槇 憲之




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