「楽しむ」ということ
村上悠紀(4年/MF/宮崎西高校)
自分にとってサッカーとは何か、という問いをずっと考えている気がする。
より上手く、より上を目指していた昔は、プロやセミプロを目指さないサッカーには価値がないと思っていた。早々にそのレールからこぼれ落ちた自分にとって、大学に入ってサッカーをする理由はなかった。
それでもなぜか大学生になってサッカーを続けることを選んだ。もしかしたらもっと他の大学生活があったかもしれない中で、なんとなくサッカーを続けることを選んだというのが一番正しい表現だと思う。
そんな新入部員にあるまじき熱量の乏しさで部活への入部を決めた1年目のリーグ戦が忘れられない。初戦、山梨大学戦で、1-20の大敗を喫した。ほぼ全員経験者のチームに、太刀打ちができなかった。20点も取られる試合を経験したことはほとんどなく、自分の中でどのように結果を解釈して良いか分からなかった。この試合を筆頭に、自分にとって初めてのシーズンのほとんどの試合で同様の大敗をした。なぜ負けたか、という問いに、自分を含めたサッカー経験の違いとしか答えようがなかった。あのとき自分がこうしていれば失点を防げた、といった個々のプレーの反省をして、次は勝てるように練習に励むのが普通のあり方だと思う。しかし最初からどうしようもなく経験の差があって、自分達が死ぬほど努力しても来季もほぼ確実に負けることが予想されるのに、何を目指して努力すれば良いのかわからなくなった。
そんな苦しい1年目のリーグ戦だったが、大学でサッカーをする動機が曖昧だった自分にとって、なんのためにサッカーをしているのか考える機会になった。以前は、試合での勝利や他人からの評価といったわかりやすい指標に達成感や満足感を感じていた部分が大きかった。試合に勝つこと、自分に評価をつける人達に自分が価値のある選手だと印象付けることが最も重要で、それを第一目標にして練習や試合に臨むことが正しいサッカーとの向き合い方だと思っていた。しかしそれが現実的に難しい状況の中で、自分の中にサッカーをする理由を見つけていく必要があるのではないかと思うようになった。自分の頭の中で思い描いていたプレーが実現できたときに感じる楽しさにこそ価値を置くべきなのではないかと考えるようになった。サッカーには勝敗があり、部活でサッカーをする中で勝利にこだわることは必要なことだが、その過程の一瞬一瞬のプレーを楽しむためにサッカーをしようと思い始めた。サッカーを始めてすぐの頃は、できなかったことができたときに一番嬉しさを感じていたのに、いつの間にか結果が出せないとやっている意味がないと考えるようになっていたことに気付いた。そうではなくて、自分の中のサッカーを楽しむ気持ちにこそ価値を置くことが大切だと気付かされた。
結局、自分がサッカーを続けたのは、何か結果を出して自分の価値を確認するためではなく、単純にサッカーをすることが楽しいと思うからで、そう考えることで苦しくても投げやりにならずにサッカーに向かい合えたように思う。自分がしたかったプレーができたときの嬉しさや達成感にこそ目を向けようと思うようになった。苦しんで練習して、勝利を掴んで結果を出して、そこで始めて楽しさや達成感を感じることが正しいサッカーだと思っていたが、そこに至る過程の中で楽しさを見つけることが大事なのではないかと考えるようになった。
そしておそらくその考え方は間違ってはいないと思えたのが、4年生のリーグ戦の最終試合で勝利したときだった。3年前に16点差をつけられて負けた相手から、1点守り切って勝つことができた。4年間自分達がしてきたことは、一人一人がサッカーを楽しむことだった。チーム全体ででサッカーを楽しめる環境を作って練習してきたことが、結果につながった試合だと思った。
自分がサッカーを続けてきたのは、サッカーをするのが楽しいからだ、という、当たり前のことを長々と述べてきたが、そのことに気づけたのも、部で関わる人達が本当に楽しそうにサッカーをする姿を見たからだと思う。人と環境に恵まれて4年間部活を続けられたことは、自分にとって本当に幸運なことだった。卒部にあたり今後部活としてサッカーをする機会はもうないが、それでもこれからもサッカーを続けようと思えていること、そして今、ア式女子でサッカーができて本当によかったと思えていることをとても嬉しく思う。
自分達を支えてくれている方々に試合で結果を出して報いることはできなかったことの方が多かったが、それでも次も頑張ってねといって応援し続けてくださった方々、目に見えないところで支えてくださった方々には本当に感謝の言葉しかない。この場を借りて4年間部活動を支えてくださった皆様に心より感謝申し上げます。これからは今までたくさん受け取ってきたものを返せるように、支える側の人間として部に貢献していきたい。
そしてこれからも、サッカーを楽しんで行きたいと思う。
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