追いつきそうにない

 永田怜音(3年/FW/浜松北高校)


人生は自分が選んだ道を正解にしていくことだと誰かが言った。


今の自分が歩んでいる道は不正解であり、歩を進めるたびにそれは不正解であると裏付けられていく。



 

小学生の時車の中で、「サッカー習いたいんだよね」と母に言った

「うーん、女の子はサッカー難しいんじゃない」

基本やってみたらいいんじゃないと何でも肯定してくれる母が渋い反応をした

幼い頃特有の鋭い勘のようなものが、これはNOであると感知していた。


世の中を覆う黒いものに立ち向かうための勇気の大きさを母は知っていたんだろう。

今思えば、自分がもっともっと本気でやりたいんだと伝えられていたら、結果は変わっていたのかもしれない。

 



だけど、それ以上懇願して否定されたら

自分の大好きなサッカーがもうできないという決定打を、

扉を、完全に閉ざされてしまう気がして、

サッカーが汚れてしまう気がして、


言われるくらいなら、

傷がつかないままそっと置いといてしまった方がいい

知らないうちに忘れてしまう方がいい

と思った

 


 

それ以降口にすることができなかった。

どうでもいいことには何でも言えるのに、

好きなものこそ、本当に必要なことこそ、あと一歩が出ないちっぽけな人間だ



 

その時に涙を流すこともできず自分の心の奥底に埋葬した想いに、

どうにか報いてやりたいと思って、今サッカーをしている



 

文京のLの人たちを見ていると時々思うことがある。

「もし、あの時もう少し自分が強くて、サッカーを始めていたなら

あのくらい上手くなれていたんだろうな」

 



タイムスリップで戻れるとしたら、絶対その地点に戻ってやり直したい。

私の人生は、確実にあの地点で分岐した。

サッカーを始める方を選んだ人生と、選べなかった今の人生。

自分のライバルは小学生からサッカーを始めていた自分である。

 



今を正解にするには、そのもう1人の私よりもサッカーを上手くなることにしかない。

だから今は不正解なのである。そして今の努力量では到底追いつくことができない。


1年生の頃は自分はなんだってできるんだと信じることができた。3年になって現実を見てしまうようになり、4年の最終節の自分像がどんどん悪いものになっていっている。

 


 

少し前までは、卒部しても文京でずっとサッカーを続けようと思っていた。

 


しかし最近は、調子が上がってきたなと思えば怪我をして、ゼロにリセットされ、また復帰して調子が戻ってきたところで病気になってリセットというようなことを繰り返し、主将なのに離脱ばかりで気も弱くなり、




自分にはもしかしたらサッカーをする資格なんてそもそもなかったのかもしれないと思うようになった。このままでは、自分のサッカー史は初めから終わりまで黒の連続になってしまう、それだったら早めに引いた方がいい。



 

だからタイムリミットを卒部までのあと1年にして、

そこで上手くなれなかったらサッカーというものにケリをつけて、

新たな道に行くことに決めた。

 




 

放課後に小学校のグラウンドで友達と遊んでいても、同じグラウンドでやっている、同級生の男の子がプレーしているサッカースクールにしか気が向かなくて



生まれ変わったら男子になりたいと願い、

小さいながら社会の不条理を恨み、

どこに何をぶつけていいのかも分からず、

「女の子」が好きなものを好きなふりをしていた

あの頃の自分を、どうしても救ってあげたい。



上手くなったら救えるのかはわからない、でもこの道でも良かったんだと少しは肯定できるようになる気がしている。

 

 


そして、GSSについてもここで述べたい。

8,9割が男の子の中で、勇敢な女の子が混ざってサッカーをしている。

体格差もあり、男の子に比べたらプレーは劣ってしまったり、男の子から強く言われてしまったりすることが多い。

いつか花が咲く日まで、小さな蕾を守り続けることが自分の役目だと勝手に思っている。

スクールに来てくれると、今週も来てくれたんだ、まだサッカー嫌になってなくてよかった、とホッとして嬉しくなる。私のようにならないでねという祈りを込めて。

 



 

最近気づいたことであるが、私のサッカーにはチームというものが欠落している。

チームのためにというより、自分が「自分」を超える道のりを歩むことが目標である。

 


そんなやつに主将なんて向いているはずがない。

プレーだって大したことがない。

それでもついてきてくれている(本心はわからないが)後輩と同期には感謝しかない。

 



チームというものが欠落しているなんて言ったが、

私にとって同志がこんなにも集まってサッカーをできること自体が、本当に夢みたいな日々なのである。だからそれに充足して、たまに自分のやるべきことを忘れてしまう

 

 

 

憧れ続けてきたチャンスを下手に無駄にするくらいだったら、

そのまま埋もれたままにした方が良かった

ア式に入らない方がよかったことになってしまう

 



 

1年後、最高の仲間と、最高の景色が見れますように。


努力しろ自分

 

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