最後のfeelings

9月23日、帝京大学との頂上決戦に勝利した東京大学は、3試合を残して、来季の1部リーグ昇格を決めました。


昇格を手にしたら、どんなにか嬉しいんだろう。そう考えていたシーズン前。
しかし、実際に昇格を決めて私の心を満たしたのは、ただただ安堵の気持ちでした。

色んなことがあったから。色んな人に支えられてることを知ったから。みんなの成長を肌で感じていたから。
努力が必ずしも報われるとは限らない厳しい勝負の世界で、一人一人の成長を、みんながピッチで表現するサッカーを、結果として示すことができたから。
ピッチ外から支える人や、それぞれの想いを抱いて応援してくれる人たちに、結果をもって恩返しすることができたから。
まず湧き上がってきた気持ちは、「本当によかった」という、ただそれだけでした。


みんなの頑張りが、私を支えてくれました。

左サイドでボールを持てば、必ず相手を抜き去ってクロスを上げてくれる主将。圧倒的に高くなったクロスの精度や、チームをまとめる熱い魂に、何度も助けられました。

その他にも、全てを挙げることはできないし、全てを知っている訳ではないけれど、
格下相手に負けたあと、「悔しい、勝ちたい」とバレないところで死ぬほど泣いていた姿を、
シーズン前に「今シーズンこそは」と不安と期待の中で活躍を誓っていた姿を、
育成チームにいた頃も、「ただ自分がやるべきことをやるだけ」と練習に取り組んでいた姿を、
絶望的に大きな怪我をしても、心は折れることなく、さらに逞しくなって戻ってきた姿を、
皆がもがき、苦しみ、それでも努力し続けるのを見てきました。そんな彼らがピッチで躍動している姿は、私の誇りでした。心震わせるようなプレーを見せてくれて、本当にありがとう。

そして、チームのスタッフ陣。
30分のスカウティングミーティングのために、何時間も、ともすれば何十時間も映像を見て分析していたことを、
掃除、審判、試合運営、面倒だなと思ってしまうような仕事も、完璧にこなしてくれる人がいたことを、
決定機は決して逃さず、毎試合ベストショットを撮ってくれる人がいたことを、
本当はサッカーをやりたくてたまらないのに、スタッフとして自分の役割を真摯に全うしてくれる人がいたことを、
皆がチームを支えていたことを知っています。私もいつも助けてもらっていました。感謝の気持ちでいっぱいです。

そして、チームの外から応援してくれる人たち。

応援にきたあと、「正直強すぎてびっくりした」と連絡をくれたこと、
ア式を辞めても毎試合のように応援団に混ざって、誰よりも応援してくれたこと、
毎試合Twitterを追って、なんなら他のチームのTwitterまで把握して、ア式の勝ち点を計算してくれていたこと、
毎週御殿下まで来て、選手の名前やプレースタイルを覚えて応援してくれていたこと、
「面白いサッカーをしているから」という理由でグラウンドに足を運んでくれる人がいたこと、
競技は違えど、同じように運動会で頑張っている友達がいたこと、
どのくらいの人が、このブログを読んでくれているか分からないけれど、この人たちにいい結果を届けたかったから、自分のため、仲間のためにやるだけよりも、もうひと踏ん張り頑張ろうと思えました。本当にありがとうございました。


さて、昇格決定からかなり時間が経ちましたが、落ち着いて自分の気持ちを見つめ直すと、安堵の気持ちに加えて、若干の後悔の気持ちが湧き上がってきていることに気付きました。
人間というのは欲深いもので、「ああ、1部でもっとやりたかったなぁ」とか、「あのときもっと上手くやれたんじゃないか」とか、昇格という目標を達成してなお、後悔の念は消えないのです。

個人の性格にもよりますが、「1つも後悔なんてない!」と言い切って卒部できる人は、相当少ないんじゃないかと思いますし、ア式のこれからを担う後輩たちも、そういう道を辿るのではないかな、と思います。
でもア式を選んで入ってきてくれた後輩たちには、4年間という限られた時間の中で、少しでも成長し、少しでも充実した時間を過ごし、そして、私なんかよりも何ランクも上の後悔を携えて卒部してもらいたい。そんなことを考えたので、最後に私がみんなに意識してもらいたいことを残したいと思います。

先に断っておくと、別に私が全部意識できていたわけでもなければ、みんなに当てはまることでもないかもしれません。
でも、何らかの助けになればいいな、と思って書くので、参考にしてみてください。
(スタッフの後輩たちを想定して書いていますが、他の人にももしかしたら参考になることがあるかもしれません)

結論から言うと、私が意識したらいいと思うことは以下の3つです。

①貪欲に学ぶこと
②俯瞰して物事を考えること
③細部にまで気を配りつつ、ときに大胆に行動すること

では、詳細に見ていきます。

①貪欲に学ぶこと

特に意識してほしいのは、サッカーを学ぶことです。スタッフの仕事は、ともすればサッカーのルールを知らなくても出来ることが多いかもしれません。でも、この東京大学ア式蹴球部の核は、間違いなくサッカーです。
別に、戦術オタクになれと言っている訳ではありません。自分なりに、サッカーをもっと好きになる努力をしてください。サッカーは、逃げずに正面から向き合えば、思っているよりずっと多くの世界を見せてくれるスポーツだと思います。

サッカーについて学ぶことは、日々のスタッフの仕事にも活かせます。
毎日の練習で書いているログも、初期の頃に比べて見違えるほど濃い内容になったな、と思いながら読んでいますが、今はまだ、コーチが言ったことをひたすら正確に記録するだけだと思います。コーチの指示の中で、どこが一番大切なのか、何を伝えたいのか、しっかり理解して書くことができれば、練習の振り返りにもっと役立つものになるはずです。

他にも、例えばプレスやビルドアップの練習が上手くいってないのであれば、スマホを取り出して上の視点からビデオを撮ってあげるとか、
チームの置かれた状況を正確に理解して広報するとか、
チームのプレーモデルに合わせてフィジカルメニューを考案するとか、
可能性はいくらでもあります。そのために、知ることを厭わないでください。

サッカー以外にも、学ぶことは山ほどあります。怪我の種類、ストレッチの仕方、テーピングの巻き方、一眼の使い方、写真や動画編集の仕方、データの扱い方、会計の理論・・・
自分の好きなこと、得意なこと、学びたいことを見つけて、貪欲に学んでみてください。きっと、もっと充実した毎日になると思います。


②俯瞰して物事を考えること

簡単に言うと、「何のためにやっているのか」を常に考え、目的と手段を履き違えないでほしいということです。

グラウンドでもピッチ外でも様々な仕事があると思いますが、考えることをやめてしまえば、ただ仕事をこなす機械になってしまいます。自分にとってもチームにとっても、そんなに勿体無いことはありません。
目的を理解し、常に思考しているからこそ、「仕事をこなす」ことに意味が出てくるのだと思います。

データ分析をするのは何のため?
トレーナーとマネージャーでシフトを分けている理由は?
なんで怪我人を管理したり、疲労度を測る必要があるの?
広報は誰のために行なっているの?SNS毎の役割は?
リクルート活動は何を目的としているの?強い選手を1人獲得するのと、幅広く色んな高校生にア式を目指してもらうのではアプローチ方法は違う?
そのミーティングの目的は?何にどのくらい時間を使うべき?
そもそも、今のア式に必要な活動ってなんだろう?

毎週データを「出す」ことが、毎日グラウンドに「来る」ことが、高校生大会を「行う」ことが、目的ではないはずです。

毎日の活動のなかで、その活動の本質を考える時間を設けてみてください。


③細部にまで気を配りつつ、ときに大胆に行動すること

組織の本質は、細かなところにこそ表れると思います。
毎日の準備、新歓期の対応、メールの返信、マッチレビューの誤字1つにも気を配ってください。

なぜなら、私たちは外部から「ア式」として見られているからです。
その活動に関わっている人はごく一部かもしれないけれど、「出来て当然」と思われているようなことに綻びが出ると、それはいとも簡単に「組織のマイナス評価」として表出します。

とはいえ、細部に気を配りすぎて、チャレンジする気持ちが失われたり、ミスを恐れて「行動」しなくなってしまうのでは本末転倒なのが難しいところです。
①②で、学ぶこと、考えることが大切だと言いましたが、何よりも大切なのは「行動すること」です。
新しいことを始めるとき、初めてのことをやるとき、ミスは付き物。下の学年はどんどんチャレンジして、上の学年の先輩が、細かなところにまで気を配ってあげてください。

4年間は、長いようであっという間です。ましてや、チームの骨格を作るシーズンオフの期間なんて、もっとあっという間です。
充実したものにするもしないも自分次第。誰もそこに責任を負ってはくれません。
誰も提案しないなら自分が、誰もやらないなら自分が、と自ら動き出す勇気を持ってください。


色々長々と書きましたが、来季、関東を目指して戦えること、素直にうらやましいなぁと思っています。楽しみながら、がんばってください。

いいときも悪いときも、応援しています。


関わってくれた全ての方への感謝を込めて。

4年スタッフ 小坂彩

コメント

  1. a fan since 20152018年11月29日 23:50

    感動しました。ありがとうございます。密度の濃い体験を重ねてきた4年間だったことでしょう。関東昇格という目標を、もしかしたら選手以上に強く抱いていたのかもしれませんね。だから、チーム全体でも一人一人でも、大切なことはなにか言葉にできるのでしょう。
    昔、私の大学のサッカー部監督は、関東1部を目指す自チームに「違いは美である」とよく言ってました。あなたの文章が思い出させてくれました。ありがとう。
    来季も御殿下に応援に行きます。ア式頑張れ!わたしもがんばる。

    PS. 昨年読んだ工藤君のfeelingsに続く、
    my favorite blog でした。

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