2016年7月、

灼熱の京大のピッチで筆者の選手としてのキャリアは終わった。当時筆者は育成チームに所属して、OBコーチ行天さんから選手たちに「7月の京大戦を境に何人かの選手をLB2ndに落としメンバーを絞る」と前々から伝えられてた。当落戦上だと感じていた筆者は京大戦を最後のアピールの場だと思っていた。3軍戦に出場した筆者だったが納得のいくプレーを出せず、ミスも目立ち、試合後は絶望に打ちひしがれていた。3軍戦後の集合で当時4年の出戸さんは感動的なスピーチをしていた気がするが、筆者は絶望のあまり耳に入ってこなかった。3軍戦は引き分けだったが2軍戦1軍戦と勝利し意気揚々とするア式の中で筆者は何かもう落とされたのが決まったかのように虚しい気持ちで東京へ帰り、翌日のメーリスの新しい育成のメンバーを見て予想通りかLB2ndへ落とされたことを知る。数日後部室二階にて代替わりで主将になったのぼりさんや幹部たちとのミーティングで今後どうするのか、聞かれた。 

これが筆者が選手からスタッフになった経緯だが、あのとき辞めるという決断をしていたら今どうなっていたのだろうと考えたときもある。というのもその年選手もスタッフもあり得ない人数がア式から離れていった。多くの人がやめていった時期なのでそういうことが頭をよぎっても不思議ではないだろう。退部者が続出したその時期LB2ndは存在していた。 
他の同期が卒業文集のごとく感動系の文章を載せているので、筆者は、筆者、そして一個下に大きく影響を与えたLB2ndについて大真面目に述べていこうと思います。  

まずそもそもLB2ndとは。簡単に言うと戦力外制度です。将来的にAチームに絡めなさそうと判断された選手を育成チームから落とし、それでもサッカーしたかったらグランドの隅でやってくれと、そしてア式に貢献するならスタッフとしての道も検討してくれと、そうでないなら辞めてくれと。筆者が入部するちょっと前からこの制度は始まり、今の二年生が入学する前までは存在していた。  

LB2ndの根幹にあるのは、3,4年生が耳にタコができるほど聞かされた機会損失という考えです。おそらく日本で一番多くの選択肢を持っている東大生という立場で、週6でサッカーに打ち込むということは、その他の成功出来たかもしれない分野での機会を損失していると。サッカーで成功しそうな見込みがないなら、他のうまくいきそうな方面に時間を割いてくれと。  

それではLB2ndがどう影響して退部者が続出したのか。筆者が数えたところ、LB2ndが存在していた、筆者が1,2年生のとき25人も退部している。1つの代とだいたい同じ人数である。3,4年生のときはそこまで退部していない。そもそも部活とはそう簡単に辞めるものではない。やはり影響があったのは間違いないだろう。だが全員が全員戦力外通告を受けたのだろうか?確かにLB2ndに落とされ悩んだ末辞めていった人は同期にも一個下にも一定数いるが、実は多くは戦力外とはあまり関係のない理由であった。ある者は部の体制に不満を抱き、ある者は急に陸上に熱を上げ、ある者は成功の可能性がより高い分野に邁進するために部を去っていった。こうした理由なら別にLB2ndが有ろうと無かろうとあまり関係がないと思えるかもしれない。      

一見無関係に見えるLB2ndと退部者の嵐の関係について、筆者はこう考えている。LB2ndの真の問題は、部を去る道を部員に必要以上に意識させすぎたことにあると。最近ではあまり聞かなかったが、LB2ndが存在していた時期、ミーティングなどことあるごとに機会損失という言葉や内容を耳にした。筆者の代に至っては新歓のときや入部時の個人面談でもそういう話を受けた。機会損失を考えること自体は悪いことではなく、むしろ部に属する以上考えておくべきことである。しかし必要以上に意識させられるとどうしてもこの部にいることが果たして正しい時間の使い方なのか悩みすぎてしまうかもしれない。悩んだ結果他の方面に進む人が出てきてもおかしくはない。一人辞め出すと、同じように悩んでいた人が、辞めるという道もあるのかと悟り、辞めていく。こうして退部続出という負の連鎖ができていったのかもしれません。
  
部員の人数が減っていくと当然部にさまざまな問題が生じました。練習の人数が少なくなるので、練習の質が下がる。また組織としても運営も難しくなる。スタッフが減ってしまうとその分選手が運営の仕事を頑張らざるを得ない。選手が少なくなって生じた運営の問題の例としては筆者が2年生の時に育成が参加していたIリーグは3年生の時には、育成の人数が少なすぎて参加が運営上叶わなかった。  

選手の退部としては特に育成の選手が多かった。ア式はスポーツ推薦をとっていないので、ア式が強くなるには保証されてるわけではない上手い選手の加入に期待するよりも、育成の選手の底上げが大切なのではと思います。それなのに育成の人数が少なかったり、練習の質が低いと強くなるものもなれない。また将来リーグ戦に出れたかもしれない人材を退部によって失ったこともあった。

以上述べてきたようにLB2ndとそこから発生する退部者の続出はトータルで見て部に大損害であったと考えてもよいでしょう。何よりもLB2ndがあった時期はア式にとって一番大切なリーグ戦での結果が全く振るわなかった。直接的な原因ではないが、雰囲気など間接的に影響を与えたことは間違いないだろう。 LB2ndは失敗だったと思わざるを得ない。 

ただトータルではなく、筆者自身に限定すればLB2ndは良い結果をもたらしたと考えている。選手として成功の見込みはなかったが、自分の頑張れる分野でスタッフとして多少なりとも部に貢献はできたのではないか。同じことは他のスタッフに転向した人にも言えると思います。

今現在LB2ndや戦力外制度は存在しない。コーチやスタッフのいる練習に全員がちゃんと参加できるというのは本当に恵まれていると思います。選手はなかなか実感するのが難しいかもしれないが、与えられた環境に感謝して、日々練習に取り組んでいってほしいです。スタッフも部にいる意義とか悩むかもしれません。そうしたら同期とかに打ち明けてください。部員が減っていくというのは本当に本当に悲しいことです。人それぞれ色んな葛藤があると思いますが、悩んだ時はみんなに相談してください。みんなで協力して、誰一人辞めることなく、ア式が強くなるのを応援してます。  

4年間ありがとうございました。 
4年 濱田広輝

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