身に余る幸運

こういった形でア式の人に何かを発信することは稀なので非常に書き出しに悩みます。ここまで同期たちのfeelingsを読んできて、引退した身で読んでも胸を熱くさせられるもの、「卒業文集」とか言って後の人間がちょっと書きづらい空気を作るもの、昔存在した制度についてフラットな視点から論評を加えるもの、と方向性がバラバラすぎて、実に「らしいな」と感じるばかりです。ということで僕も僕なりに考えたことを書こうと思います。

 自分が体験してきたこと以上のことに触れられるだけの器ではないので、狭い世界観の話になってしまいますが、今後ア式を創っていく選手の皆さんに、いちテクニカルスタッフだった者としてひとつお願いしたいことは、「スタッフ陣に出来る限りの信頼を置いてほしい」ということです。理由はシンプルで、そうすることでお互いに一番速く成長できるからです。スタッフは選手たちの(場合によっては潜在的な)需要に応えることで己の存在価値を見出していくものだと思うし、選手にとってスタッフは「資源」のようなもので、上手く利用できる者はそれだけ効率よく成長できる者であるとも思います。

 僕はそういったことを一つ下のテクニカルの後輩を通して強く実感しました。前期の一橋戦、彼がスカウティングを担当し、勝利したあの試合からの成長速度はすさまじかったと思います。試合後の姿を見て、多分あの試合から彼も「選手からの信頼・期待」を感じられるようになったのではないか、と勝手に考えています。思い返せば、僕にとって一番タメになったのは、3年の夏に育成チームのサッカーについて同期達とああでもないこうでもないと話し合った経験で、それもつまるところ「選手に求められた」からこそのことなのかなと思うわけです。

 最後になりますが、今になって色々と振り返ると、ただただ幸運なア式人生でした。入部するタイミングで既にテクニカルスタッフという役職が存在していたこと、下手っぴもいいところな人間がピッチ上の事象に意見することが許されていること、何の実績もない状態であっても大事な大事な公式戦のスカウティングを任せてくれること、分析資料を作ったら感想や改善点を伝えてくれること、長い話にもきちんと耳を傾けてくれたこと、最後の1年まで日々成長できる環境で過ごせたこと。

どれをとってもただただ周囲の人たちに感謝するばかりです。正直なところ僕はア式を辞めたいとか思ったことがほとんどなかったです。みんなそれぞれ色んなところでめっちゃ悩んでたのに、なんか浅い感じもしますが、ア式辞めても結局サッカー観るだけなので、辞める選択肢がなかった。それくらい僕にとって幸運な環境でした。前の日にあった海外とかJリーグとかの試合の感想について、ある程度誰とでも盛り上がれるのはまじで最高でした。この環境から離れなければならないのかと思うと寂しい気持ちでいっぱいです。

ひとつくらいシンプルにア式良かった!って感じのfeelingsがあってもいいと思うので、ここらへんで終わりにします。今まで色々と関わってくれた皆さん、本当にありがとうございました。関東昇格の日を心待ちにしています。



日野と佐俣と山口いつもテク部屋来てくれてありがとう。

4年 テクニカルスタッフ 小椿 直輝

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