公式戦を戦う喜び

10月14日に引退してから、しばらく時間が経ちました。改めて、とても濃密な大学サッカー生活を送ることができたと感じています。自分は4年間ほとんどけがをすることなく、サッカーを楽しむことができました。家族にも全面的に応援してもらいました。そして何より素晴らしい仲間に恵まれたことに感謝しています。
 
 
今年の4年生はよくも悪くも曲者揃いなので、自分はストレートな文章を書きたいと思います(笑)。初めは、仲間への感謝について書こうかと思いましたが、それは直接伝えたり、行動で示したりすることとして、ここでは自分の4年間を振り返りつつ、「うまくなって公式戦で活躍すること」の喜びについて書きたいと思います。
 
 
 
・東京都2部優勝、1部昇格
・15試合以上に出場する
・5得点とる
 
 
トップチームの公式戦に、出場はおろかベンチ入りすら1度も経験しないまま、僕は最上級生になりました。上の3つは、昨年末に初めてAチームに入ったとき、自分のサッカー人生の集大成となるリーグ戦全18試合に向けて立てた目標です。
 
「昇格に貢献する」とか、「サッカーを楽しむ」のようなあいまいな目標ではなく、客観的な数値目標をクリアすることで、これまでピッチ上で全くチームに貢献することができなかった自分の取り組みを、自分の中で意味のあるものにしたいと思っていました。
 
 
 
今季のリーグ戦の半年間は、自分の人生で最も充実した時間でした。サッカーが楽しくて仕方がない。自分のプレーがよくなっていることも、チームがどんどん強くなっていることも、はっきりと感じられる。結果も出る。応援してくれる人に、喜んでもらえる。サッカーが日ごとに好きになりました。
 
幸運にも全ての目標を達成することができました。東大ア式は13勝3分2敗で優勝、自分も16試合に出て7得点とることができました。触るだけのパスを供給しまくってくれた仲間に感謝しかありません、正直もっと取れました。
チームがよいゲームをして勝つ、これだけを考えて毎週準備をしました。
 
 
 
とはいえ、最後の半年間は本当に特別で、僕にとってのア式生活の大半は、育成チームで悪戦苦闘し続けた日々です。ア式にいる人はそれぞれ、様々なことで悩んだり嫌な思いをしたりすることがあると思いますが、僕の場合はとにかく自分が下手でチームに貢献できないことがただただ嫌でたまりませんでした。
残念ながら、僕には実力がなかった。自分よりうまい選手に食ってかかるガッツもあんまりなかった。トラップとパスが下手で、ドリブルと左足のキックができなくて、状況判断が悪く、高い強度でプレーができない選手でした。
 
 
でも、絶対にうまくなって、試合に出て活躍したいとずっと思っていました。その一心でサッカーをし、自分の実力の無さに打ちのめされ続けました。
 
 
ア式に入部してからしばらくは、いつ自分が戦力外通告をされるか、怯えながらプレーしていました。2年の京大戦の後、カテゴリー再編の連絡のメールを開くときは、スマホを持つ手が震えました。自分の名前を確認した後も、そこに名前の無い人に思い当たったときは、悲しくてやりきれませんでした。
 
Iリーグの帯同メンバーに呼ばれないことが続いたときは、試合のキックオフの時間に開始を合わせて、毎回泣きながら90分ランニングをしました。
 
並々ならない思いで臨んだはずの新人戦の初戦、前半30分で代えられて、以降出番が訪れなかったときは、心が空っぽになりました。
 
3年生になってもなお、育成チームですら目立った活躍ができない自分に、毎日苛立っていました。
 
 
淡々とやっていたように思われるかもしれませんが、とんでもない。こらえきれないような悔しさをなんとか消化して、エネルギーにする。そしてまた自分の下手くそなプレーにうんざりする。
これを何度も、何度も繰り返して、気がつけば大変お世話になった1つ上の代が引退しました。
 
 
 
それでも、練習に行きたくないと思ったことは一度もありません。まして辞めようなんて1ミリも考えたことないです。自分より公式戦に近い人が、辞めたり休部したりするのが許せませんでした。俺があれだけ出たかったIリーグに出てたお前が辞めたらお前のせいで(まあそう単純なものではありませんが)出られへんかった俺何なん!!みたいな感じで。
 
 
そもそも、プロを目指している人が見たら、笑ってしまうようなレベル。サッカーとは別の、何か他のことを頑張った方が生産的かもしれないし、社会からもそう期待されているかもしれない。
 
こういう感じで、サッカーを頑張ることに迷いが生じたことは、僕には1度もありません。それくらいには、僕はサッカーをプレーすることが大好きで、そもそものレベルがどうであれ、もっとサッカーがうまくなることが、4年間ずっと興味の中心でした。
 
 
でも、うまくなるのって、難しいですよね。うまい人はうまくなるのがうまいわけで、そういう人どうしで練習して、お互いにいい影響を及ぼしあって、どんどんうまくなる。逆に、下手な人は、うまくなるのが下手なわけで、そういう人どうしで練習して、的確かどうかもわからない意見をぶつけ合う。普通にやっていれば、差は開いていく一方なはずです。下手な人がうまくなりたいと思うことは、「なるべく早く目的地にたどり着きたいけど、その方角も、行き方もわからない」みたいな感じになりがちだと思うのです。
 
 
小さい頃からサッカーを続けてきて、大学生になってもなおうまくなりたいなら、やっぱりサッカーについて自分なりに勉強するのが大切なようです。このことに気づくのが僕は遅かった。
そのせいで、自分の戦術的な役割を最低限こなすだけの、中盤にいるのに進んでボールを受けたがらない情けないプレースタイルが出来上がりました。もっとサッカーについてよく学んでいれば、技術的にも、戦術的にも、精神的にもよりサッカーが楽しめただろうにと残念に思っています。
 
今なら定額のサービスでサッカーの試合を見放題ですし、ネットで様々な情報にアクセスできます。ア式の後輩に一つだけアドバイスを送るとするならば、「サッカーオタクになれ!」と言いたいです。サッカーがどのようなスポーツで、どのようにプレーすればよいのかを、研究しましょう。これなら、誰にでもできる。
 
自分が最後にある程度試合に出ることができたのは、完全にたまたまです。自分より優れた選手が何人も部を辞めて、システム的に自分にちょうどいいポジションがあって、運よく怪我をしなかったから。
けれど、こういう努力を早いうちから続けていると、必然的に試合に出られるようになると思います。少なくとも、その可能性が大きく高まります。そして、もっとサッカーが好きになると思います。
 
 
今は育成チームでプレーしている人も、頑張ってください。僕は特に応援しています。1人でも多くの選手に、公式戦を戦う喜びを味わってほしいです。
「いつか自分もあんなふうにプレーしたい」と憧れていたあいつの隣で、ユニフォームを着てプレーするのが、どれだけ誇らしいか。
自分がプレーして勝った試合の後の、普段支えてくれるスタッフの笑顔で、どれだけ報われるか。
こればっかりは、経験してみないとわかりません。こういう経験を、たった1試合するためだけでも、4年間を懸ける価値があると僕は思います。
もちろん、1日でも早くAに上がることを目指して努力してください。チームの底力は、実は皆さんにかかっています。
 
 
すでにトップの試合に関わりつつある人、あるいは主力として活躍している人も、もっともっとうまくなって下さい。うまくなればなるほど、サッカーが楽しく、奥深く感じられることでしょう。これだけ恵まれた環境で毎日サッカーができることは、奇跡的なことです。1日1日を大切にプレーしてほしいと思います。
それから、自分がいることで、試合に出られない人やメンバーに入れない人がたくさんいるということを忘れないで、プライドを持ってサッカーをして下さい。
 
 
 
 
来年、東京都1部の舞台で戦える後輩たちが、正直まじでうらやましいです。
自分もできることなら、もっといい選手になって高いレベルでサッカーを楽しみたかった。
 
 
それでも、うまくいかなくて悩み続けた日々には愛着があるし、後悔もあまりありません。今年創部100年を迎えたア式の、立派な諸先輩方もきっと、いろいろと悩みながら大学生活をサッカーに捧げたのでしょうから、そうした方々と同じように、自分もまあそれなりに頑張ったと思うと、少し自信が出てきます。
この4年間、いろんなことがあって、たくさんのことを学びました。
東大ア式という、素晴らしい部の一員であったことを誇りに思います。
 
 
ありがとうございました。
 
 
 
東大ア式のさらなる発展を願って。
4年 佐俣勇祐

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