ハットトリック

サッカーを少し知っている人にはお馴染みのハットトリック。言うまでもなく一試合で3点取ることだ。残念ながら大学に入ってからは一度も達成できていない。あと2年ほどあるので、一度は達成したいものだ。

だが、ハットトリックは何もサッカーに限ったものではない。ハットトリックを辞書で調べてみると、「一人で一試合三点以上ゴールすること。クリケットで三球で三アウトを取ると記念に帽子を贈られたことが語源」とある。ハットトリックはサッカーに限らず、スポーツの試合で3点取ることらしい。主にサッカーやアイスホッケー、ダーツなどで用いられるようだ。

そう!ダーツ

風の噂で知っている人も多いだろうが、僕は一時期、気が狂ったようにダーツに打ち込んでいた。冗談抜きで週5くらいのペースで行っていた。知らない人もいると思うので言っておくと、ダーツは1ゲーム20分ほどでたったの100円という圧倒的コスパを誇っている。身を滅ぼしそうな雀さんやお馬さんとは違う。そして、何よりダーツはサッカーとは違って短いスパンで確実に成長できる。日々の成長を常に実感できるのだ。しかしこれは幻想だった。何事も初めはそうなのだ。きっとサッカーを始めた頃は日々成功体験を積むことができ、それが楽しくて僕たちはサッカーにのめり込み、その結果今もこうしてア式にいるのだろう。だが、当然成長曲線が停滞し、納得のいかない日々を過ごした経験が皆あると思う。僕のダーツもしばらくしてこの状態に陥った。


ダーツは、とりわけビギナーズラックが起きやすい競技であると個人的に思っている。というのも、よく隣の憎きラブラブカップルがダーツをしていて、明らかに初心者の彼女がマイダーツでイカした投げ方をしている彼氏にぼろ勝ちしていて、彼氏が引きつった表情で彼女にすごいね、と言っている光景をよく目にするからだ。これは一寸違わず投げられるプロを除けば、一マスずれただけで点数が最大60倍異なるダーツの的に起因していると思う。熟練度が上がるにつれてそのズレに対する恐怖が増すが、初心者はそこまで正確性はないので思い切って投げることができ、結果として良い結果を生むことが多いのだ。それ故に先ほども言ったがハマり始めた頃、正確性は増す一方で、何も考えずに思い切って投げられるのでダーツのハットトリックも数回決めることができたりと調子が良かった。だが、しばらくして成長は止まった。

ダーツの的を見たことがある人は多いと思うが、各数字のエリアに2倍ゾーンと3倍ゾーンがあり、当然倍率が上がるにつれて面積が小さくなるので当てるのが難しくなる。いうまでもなく強い人はトリプルに入れることに重きをおくのだが、僕のように中途半端な状態に入るとわずかなズレが恐ろしく、そのような余計なことを考えるうちに全く思うようなプレーができなくなる。自分の最高のプレーに挑戦するのが怖くなるのだ。このようになると人はどうするかというと、状態を安定させるために比較的当てやすいシングルという安パイに逃げるようになる。当然こんな弱気な奴は負ける。負け続ける。

これは本当にサッカーに通じるなぁと書いていて思った。
真っ先に思い浮かぶのは新人戦の自分。
また、同じ感覚を持っている人がア式にもいるのではないだろうか。

ではどうすればこの情けない状況から脱却できるか。一度競技を離れてリフレッシュすることや時間に解決を委ねるなど人それぞれの答えがあるのだろうが、多少強引でも恐怖心を拭って、成功体験を積めるいつかまで失敗し続けていいと、僕は思う。安パイに逃げて失敗してまた怖くなって安パイに逃げるという負のサイクルから得られるものは何1つない。不安げに、申し訳なさそうにプレーしている人がいたらチームメイトまで影響されかねない。自信を持って挑戦して失敗するからこそ得られるものがあるし、たとえ失敗しても挑戦の結果なのだから胸を張れるし、きっとチームメイトが支えてくれるだろう。本当に今のア式は日々臆せず挑戦できる環境が整っているとも僕は思う。来たる一部という舞台に向けて成長し続けよう。

今いるほとんどのプレイヤーにとって未知の世界である一部。強豪ぞろいで僕らからしたらほとんど格上と言えるだろう。しかし不安に侵されてる場合ではない。むしろ不安になるべきなのは格下に食われていく強豪たちなはずだ。臆せず思いっきりプレーして一部に東大旋風を起こしてやろう。


ア式ダーツ部 
2年 松本周平

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