覚悟
初めまして。一年の三谷深良惟です。
さて、ア式でサッカーをし始めてから早三ヶ月が経とうとしている。今回は自己紹介も兼ねて自分の経歴と今思っていること、サッカーに取り組む姿勢について簡単に書こうと思う。
自分がサッカーを始めたのは幼稚園のときで、小学校は地元の少年サッカーチームに入った。その頃は特に何も考えず、ひたすら毎日ボールを蹴っていた。当時はサッカー選手になりたいなんて本気で思っていた記憶がある。
中高はサッカー部がそんなに強くない学校に通っていたのでいわゆる街クラブに入り、そこそこのレベルでそこそこのプレーをしていた。ほんの時々プロが出るようなチームだったため、何か間違っていつの間にかプロになれたりしないかなあ、なんていう微妙な感じの気合でサッカーをしていた。とはいうものの、基本的にずっとスタメンではあったし、一応それなりにちゃんとサッカーに向き合っていたつもりである。
そして大学。東大は家の近くにあったため、小さい頃からいずれはこの大学でサッカーをするんだろうなと思っていたが、結果的に本当にそうなった。
コロナで始動が遅くなり最初の三ヶ月ほどは練習がなかったが、一年のうちには絶対に試合に絡みたいという思いもあって週六で友達と近くの公園でサッカーをし、自分を追い込むようにした。この時一緒にサッカーをしようと誘ってくれた大谷と水本には本当に感謝している。
しかし、九ヶ月ぶりの試合となった育成の紅白戦では、やはり体力がかなり落ちゲーム中に全く動けず、そもそもボールタッチもおぼつかなくなっている自分に腹が立った。そんな中一ヶ月ほど経ってお試しのような形でAに上げてもらい、とても驚いたと同時にこのチャンスは掴まなければと意気込んだのを覚えている。
さて、いざAに上がってみるとプレースピードに全くついていけない。本当に正直言ってしまうと、スポーツ推薦をとっていない東大のサッカー部なんてそこまで上手くないんじゃないかなんて思っていたのだが、これは完全に思い違いであったことを痛感させられた。みんな上手いのである。インサイドハーフやアンカーをさせてもらっていたが、相手のプレッシャーに焦ってしまいボールを奪われることもかなり多かった。その分自信もなくなり要求の声が出せない、ボールを受けたくない、などよくない方向に進んでいた。このままいけばすぐに育成に落とされるんだろうななんて思っていたし、一時期Cチームのベンチまで落ちた高校時代が頭をよぎった。
ただ、時間が経つにつれてだんだんとスピード感にも慣れ、先輩ともコミュニケーションが取れるようになったことでここ一ヶ月は何とか持ち直している。もちろん遼さんが辛抱強くアドバイスをくれ続けたり、内倉さんがちょっとしたことで褒めてくれたりしたことも大きい。最近はリーグ戦にも途中出場させてもらい、そろそろきちんと目に見える結果も残さなければならないなと思っている。
以上自分の経歴とア式で過ごした三ヶ月間で思ったことについて綴ってみた。
次に少々長くなってしまうが、最近自分が気付いたサッカーに取り組む姿勢について書こう思う。
さて、みなさんは今までの自分の人生で一番頑張ったことといえば、何を思い浮かべるだろうか。
自分は今まで最も頑張ってきたことはサッカーだと自信を持って言える。それだけサッカーが好きだし、15年間ずっと熱中し続けている。四六時中サッカーのことを考え、勉強、学校行事、恋愛などを差し置いて何よりも一生懸命取り組んできた。
などとついこの前までは思っていた。というより勘違いしていたのではないかな、と最近になって感じ始めた。
この自分のサッカーに取り組む姿勢に対する疑問を持ち始めたきっかけは、ある日の何気ない先輩とのやりとりである。
「お前結構いい守備するじゃん」
「いや実は高校の頃守備担当みたいな感じで試合出てたんで得意なんですよ、そのかわりパスを捌いたりとかは他の人に任せっきりだったのであんまりできなくて」
この返答をしたあとしばらくして、なんとなく違和感を覚えた。今発した言葉は、中盤でのパス捌きを苦手とする自分に対する言い訳ではないのか。今までの環境を理由に、相手のプレスに負けてボールを奪われピンチを演出してしまう自分のプレーから目を背けているのではないか。
サッカーは足でボールを扱う競技である以上、いつもミスが隣り合わせであり、リスクを背負いつつプレーしなければならない。それと同時に、時には一つ一つのプレーに対してとてつもない責任が伴う。例えば、ボールを奪われればすぐに失点につながる最終ラインでのボール回しや、味方が懸命にボールをつないでくれた末のキーパーとの1対1、試合終了間際の一点ビハインドでのPKなど、一人一人の選手に大きなプレッシャーがかかるシーンは数えきれない。そして、これらの場面で求められているプレーをきちんと遂行するには、この責任をすべて受け入れる覚悟が必要になってくる。自分のそのプレーが試合において持つ意味の大きさを認識し、失敗してしまったときの責任をとるという覚悟である。
上のやりとりでの先輩に対する返答からも分かるとおり、自分は自分のプレーに責任を持つことを避ける傾向にある。アンカーの位置でボールを奪われることに対し、決して自分の技術不足を自覚していないわけではないものの、それと同時に「高校時代あまりプレス回避をやってこなかったから」「Aに上がったばっかりでまだ慣れてないから」「受験やコロナでサッカーができず今までの感覚がまだ戻りきっていないから」など無意識的に責任転嫁してしまっている部分がある。簡単に言えば、リスクを背負ってプレーする覚悟が足りていないのである。
自陣深い位置でのパス回しだけでない。キーパーとの一対一を外してしまったとき。コーナーキックを蹴れと言われた時に渋い顔をしてしまったとき。後ろが数的不利になりハイプレスで相手がハマりかけているのにも関わらず味方を押し出せなかったとき。ことあるごとに自分には覚悟がないなあ、責任を負うことから逃げているなあと思ってしまう。
さらに、もっと大きなスケールでも同じようなことが言えることに気付いた。
自分は小さい頃から自分の大好きなサッカーで生活していくことを夢見ていて、その一つのステップとなるかもしれなかったような決断をいくつか経験した。しかしプロへの茨の道を生きていくような自分の人生を考えてみると、それに責任を持つ覚悟は持ち合わせておらず、結局凡庸で平坦な道のほうを選択し続けてきた。
例えば、中学から高校に上がる時に、高校サッカーで厳しい競争の中でやっていくか、それとも将来を見据えて勉強もある程度頑張りつつ街クラブでサッカーをするのか、という選択肢があった。全国大会を勝ち進めるような高校からも声がかかっていたにも関わらず、勉強もきちんとして東大かどこかに入ったほうがその後の人生楽だろうな、街クラブでも一年からスタメンとか取れればサッカー推薦とかでプロに近づくチャンスがあるかもしれないな、なんて甘い考えから街クラブを選んだ。
また、あるJ下部のユースの練習会に参加する機会があった。自分はどうせ受からないだろうと思っていた上に、入ったら入ったで試合に出られなかったら辛いし、勉強との両立が大変だし、グラウンドが家から遠いし、といった後ろ向きな理由で気合が入ってないプレーをしてしまった。結果は案の定不合格である。
もう一つ紹介しておくと、どこの大学でサッカーをするかを考えた時に、監督のコネなどを使って関東リーグレベルの大学に推薦で入るという選択肢もあった。最終的に、上と同じような理由から東大でサッカーをすることを選んだ。
気付いてみれば、勉強という逃げ道を用意しつつサッカーをしようとした結果、中高大と毎回同じようなそこそこのレベルでサッカーをすることになっている。プロを目指すならもっと上のレベルにいかなければと足掻いていた中学時代と何も状況は変わっていない。もちろん逃げ道があったほうが精神衛生上いいことは間違いないし、中にはそれを羨む人もいるかもしれない。しかし逃げ道を用意するにはそれなりの時間と努力が必要だし、本当に頑張りたいことに集中しきれなかったり中途半端になってしまうことも多い。
それに対して何かに覚悟を決めた人の「一生懸命」のレベルはまるで違う。みんな死に物狂いで努力し、それを継続している。同じレベルにいたとしても、背水の陣で死ぬ気でサッカーに挑んでいる彼らのほうが、結果としてより大きな成功を勝ち取る可能性も高くなるだろう。
サッカーで生きていく覚悟を決め、夢を実現しようとしている例として、いつも中高のチームメイトを思い出す。
中学のチームメイトのうち一人は、英語もろくに話せないのにアメリカの大学へ旅立ち、そこで強靭なフィジカルにもまれつつ闘っている。
もう一人はJ下部のユースを経て、日本一の大学でJ内定者からすでにスタメンを奪い取っている。おそらく彼はプロになるだろう。
高校のチームメイトの中には、途中でドイツに飛び立ち、下層のリーグながらもすでにプロとしてサッカーをしている人もいる。
下手くそなお前がプロだとか何をほざいているんだ、と思われる人も多いかもしれない。しかし、上の例にあげた彼らはかつて紛れもなく自分と同じくらいのレベルだった。その事実がとても悔しいし、自分もサッカー一筋に覚悟を決めていたらそのような未来もあったかもしれない(なかったかもしれないが)と思うと何だか心が落ち着かないのである。また、それと同時にこれから自分にも急成長が待っているのではないかと期待してしまうし、それが自分のモチベーションになっている部分もある。
別に今までの自分の人生に後悔はないし、勉強という逃げ道を常に持ちつつサッカーに取り組んだ自分の姿勢を否定するつもりもない。しかし、覚悟を持って何かに取り組むのとそうでないのとではこんなにも違いを生み出すことがある、ということは大きな教訓になったと思う。
それではこれからどうすればいいのか。さすがに今から自分の人生を全てサッカーに捧げてみようとは思わない。その代わりに、ア式でプレーする上で最大限の覚悟を持とうと思う。それはつまり、試合の重要な場面を全て任せられるような、自分の調子次第でチームが勝つか負けるか決まってしまうくらいの絶対的存在になること、そして失敗した時に自分に降りかかってくる大きな責任と向き合えるようになることである。
そのためにはもっと上手くなることが必要だし、普段の練習から意識を変えていかなければならない。とりあえず当面は、自陣深い位置でセンターバックからボールを受け取るときに、奪われてピンチを生み出すかもしれないというリスクを背負う覚悟を持って、ミスを怖がらずにプレーしようと思っている。
さてだいぶ長くなってしまった。ここまで約4500文字。
最後まで読んでくださりありがとうございました。これからも頑張ります。
一年 三谷深良惟
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