捲土重来

 


12/6の亜細亜戦、試合終了のホイッスルが鳴った時、自分はピッチにいなかった。


赤木との交代でピッチから退いたその時に自分の大学サッカーは終わっていた。

自分が交代した後に2失点して敗戦。

ベンチでは、なんで交代させられたんだよ、とか思っていた。

「諦めるな」「まだ時間はある」なんてアリバイみたいな声を出した。


試合が終わった時、自分のあまりの無力さに泣きそうになった。というか、少し泣いてしまっていたかもしれない。


「お前が交代しない方が良かったんじゃない?」なんて、本気なのか冗談なのか、言ってくれた人もいたが、きっと自分がピッチにいたとしても結果が良くなることはなかったと思う。

あの状況でチームを勝利に導くことができない選手。

コーチ陣にそう思われていたし、実際そうだったんだと思う。

ア式でサッカーをしたこの4年間を振り返っても、自分が結果を変えられる選手でなかったことは、明らか。


ア式での最後の試合。

4年間、リーグ戦の応援に来た時も、新人戦で山梨学院と戦った時も、前期の亜細亜戦も、亜細亜大のグラウンドでは一度も勝利したことがなかった。

今年の亜細亜は強かったな。敵わなかったな。で終わりたくなかった。

今年のチームはなんだかんだ昇格できたけどそこまで良いサッカーしてなかったよね。で終わりたくなかった。

絶対に勝ちたい。強い気持ちを持って試合に臨んだ。


でも、勝てなかった。得点を取ることすらできなかった。


やっぱり自分は、あそこで交代させられてしまう程度の選手、チームに勝利をもたらせない選手なんだな、と、チームを助けられなかった自分が不甲斐なく感じた。



1個上の先輩たちが引退し、最後のシーズンが始まった時、ラストイヤーこそは試合に出たいと思った。一度もリーグ戦の舞台に立ったことがなかった。


育成チームでは、自分のやりたいプレーがはっきりしていたし、自信をもってプレーできていた。紅白戦ではセカンドチームにも勝ったし、アンカーで絶対的な存在だった優さんが抜けて、ついにチャンスが回ってきたと思った。


いざ練習が始まると、何度もAチームを経験していたし、育成チームとは違うなんてことはわかっていたのに、プレースピードの違いにすぐには適応できなかった。

練習試合では何度かスタメンで使ってもらったが、あまり効果的なプレーができていないことの方が多かった気がする。リーグ戦に出られないんじゃないか。こんなはずじゃなかった。

そんな状況で、リーグ戦も次第に近づいて来ていた時、コロナの影響で、部活がストップした。


自粛期間中、自分でも驚くほど、サッカーのことを考えなかった。今年のリーグ戦は絶対に無くならないでほしい、とまでは正直思ってなかった。結局リーグ戦に出られずこのまま終わっちゃうのかな。悲しいけど。くらい。


でも、大学と交渉して活動再開しよう、と言い出す人たちがいて、最初は、そんなことできんのか、とか思っていたが、他の部と協力して、運動会と話し合って、というように少しづつ光が見えてきた時、考えを改めた。

自分なんかがサッカーをできる環境を取り戻すために、リーグ戦ができる状況を作るために、大変な思いをして闘ってくれている人がいる。自分もこのままで終わるんじゃなくて、リーグ戦に出て、チームの勝利に貢献する。強い気持ちを持って闘わなければならない、と思った。


自分は、得点を決めたり、演出したり、といった決定的なプレーを見せられる選手ではない。

それでも試合に出るためには、ビルドアップでディフェンス陣を助け、前線の力のある選手たちに良い形でボールを運ぶ。とにかく周りの選手たちを助けて、より良い形でプレーしてもらえるように。それを意識してサッカーをしようと思った。


実際、それを意識してから、簡単にはたいて、また受けて、というプレーが以前より増えた。天才的なポジショニングで1本で決めるのを狙わず、仲間のサポートを心がけ、何度もパス交換をする。下手くそでプレー精度が高くない自分にはそのほうが合っていた気がする。


リーグ戦が近くなってきたころから、OBコーチの優さんに、本当に色々なアドバイスをいただくことができた。とても感謝している。

特に、自分は、技術の低さを言い訳にして、相手との距離が近いときにすぐボールを失っていた。無意識的に、相手が近いと簡単に諦めてしまっていた。

そこを何度も指摘された。と同時に、お前ならできるはずだ、とも言ってくれた。

それまではマクロな配置やポジショニングのことばかり考えていたが(これはア式にいる人なら結構陥りがちな状況では?)、もっとミクロな、どうやって体を入れたら良いか、ぶつけたらいいか、などを自分なりにも考え、試行錯誤してみた。少しは改善できたのではないか、と思う。


リーグ戦が始まり、初めて先発出場した成城戦や、次に先発した玉川戦では、めちゃくちゃ緊張して思うようにプレーできなかったが、途中出場したり、セカンドの試合に出たりするなかで、プレーのリズムを掴んでいった。

そして武蔵戦、フル出場した。自分としては、やっとチームの勝利に貢献できた気がした。

リーグ戦の舞台に立つ喜びは確かに大きなものだった。


だが、昇格を決めた玉川戦。途中出場したものの、試合の流れを全く変えられなかった。なんとか1点をもぎとって辛勝し、昇格が決まって嬉しかったが、自分はあまりチームの力になれていなかったので、複雑な気持ちになった。俺なんもしてねぇ。


だから最後こそは、というのもあった。だが、結果は冒頭で述べた通り。

チームを勝利に導くことができない選手。


もっとできた。

なんていうのはきっと自分を過大評価しているだけ。自分より出場機会に恵まれなかった選手たちもいる。自分は幸運だった。リーグ戦出場0分から、スタメンで出られるまでになれた。成長した、なんて言ってくれた人もいる。

でも、もっと試合に出て、もっとチームの勝利を噛み締められたら。心の底から昇格を喜べたら。

もっとできた、はず。


同期にも、先輩にも、後輩にも、この4年間でかっこいい姿を見せることはほどんどできなかった。だからこそ、自分は、今後の人生で、いつか、絶対にかっこいい姿を見せたいと思う。苦しい時に信頼してもらえる、運命を託してもらえる、そんな男になる。





締めに入っているように見えるかもしれませんが、まだ続きます。申し訳ありません。


話は変わるが、後輩たちに伝えておきたいこと。

この4年間で大事だと思ったことを2つ。



1つ目。

遠い目標や、今の自分にはどうすることもできない事柄について思い悩まず、現状できることに集中して、サッカーを楽しむ。


1年生の頃、4年生が引退して少しした頃にAチームに上がることができたが、Aチームに上がってから時間が経っても実力の無さからチームの足を引っ張るばかりだった。

周りの選手やコーチの遼さんからも怒号が飛び、萎縮した自分はさらに悪いプレーを繰り返す。悪循環に陥っていた。次第に、チームに迷惑をかけていると負い目を感じるようになった。

そして、育成チームに落ちたタイミングで、退部を決意した。

技術もなければ身体能力も低い自分が4年間やったってリーグ戦に出てチームの勝利に貢献できることはない。それならサッカー部にいても意味がない。サッカーは好きだったが、ただ好きというだけでこの部にいても、リーグ戦に出場して勝利することを目標にして頑張っている他の部員に迷惑なはず。


こんな自分を引き留めてくれた方々には感謝しかないが、いろんな人と話をするうちに、考え方を変えるべきだと気づいた。

あまり褒められたものではないが、自分がリーグ戦の舞台で闘える選手になるか、なんてことはとりあえず考えないようにしようと決めた。

そんなこと考えても、自分の実力の無さに絶望するだけだから。毎回の練習の中で少しずつ成長していくしかない。今の自分が上手くなるために必要なことは何かを考える。そして目の前のできることに集中する。結果的に試合に出られるようになることを目指す。


もちろん紆余曲折ありながらも結果的にリーグ戦のピッチに立たせてもらえたのは、自分だけの力ではなくて、ピッチでもピッチ外でも自分を助けてくれた仲間たち、コーチ陣のおかげ。運が良かった。

ただ、目の前の課題に自分なりに取り組んできたことは無駄ではなかったと思う。

自分がリーグ戦のピッチに立てるかなんて、自分が決められることではない。最終的には監督が決めること。だったら、まずは今の自分がより上手くなって価値ある選手になるためには何をすれば良いか。そこに集中する。そうすれば自ずと自分の成長に目を向けられて、少しはサッカーを楽しめるようになるはず。

もう試合に出ていたり、出られそうな人たちにはあまり関係ないかもしれない。でも、うまくいかずにサッカーを楽しめなくなってきたとき、こんなことを考えてみてほしい。



2つ目。

試合に出られずに悔しい思いをしている人たちは、心の奥ではピッチに立つ選手たちの幸運を祈らなくていい。でも、ピッチに立つ選手たちは、ピッチ外でサポートしてくれているすべての人への感謝とリスペクトを常に忘れてはいけない。


2年生の秋ごろ、4年生が引退して、自分は再びAチームに加わる機会を得た。新人戦では、自分としても自信を持って前を向いてプレーできた。

冬オフが明けてリーグ戦に向けての練習が始まると、新人戦での良いイメージのままにシーズンに入ることができた。今年こそは、という気持ちがあった。

良いプレーができることもあったが、練習試合を重ねていくうちに、自分は試合に出せるほどの実力がない選手として見られていると気づいた。実際、1部で戦うチームとの練習試合のなかで、全くやれていなかった。全く適応できなかった。4月になり、1年生が入部してくると、有望な選手が何人か入ってきた。試合に出る確率が限りなく低かった自分は、そんな1年生に押し出される形で、再び育成チームに落ちた。

こんなに育成チームへの降格を繰り返すと、さすがに純粋な気持ちではいられなかった。部員としての義務だと思って応援はしたし、ア式が得点すればそれなりには嬉しかったが、心の底ではうまくいかないでほしいと思った。自分を必要としていないこのチームが成功するなんてことは受け入れられなかった。


考えてみれば、その怒りのような感情は良い方向にも働いていたかもしれない。もちろんその前からプロのサッカーを観るようにしていたが、より詳しく観るようになった。

自分はマンチェスター・ユナイテッドのファンだし、レアル・マドリーも結構好きなのに、マンチェスター・シティやたまにバルセロナの試合を繰り返し観ていたのだから、それだけでも評価してほしい。

育成チームで完全にアンカーとして定着したこともあって、特にビルドアップのシーンは何度も見返した。

当時の育成チームが華麗なビルドアップをみせていたかというとそんなこともなかったが、プレーイメージが以前よりも少しは豊かになったと思う。

それもあってか自分としては良いプレーができていたような気がする。ボールロストでチームに迷惑をかけることもあったが、ボールをどんどん自分につけてほしいと思うようになっていった。

だから、自分は下手だからこの立ち位置で当然、なんて受け入れずに、あいつらを打ち負かしてやりたい、くらいに思っていた方がいい。紅白戦の時だけじゃなくて。



一方で、試合に出られない選手たちは、そんな悔しい思いを抱えながらも、試合前の会場準備をする。アウェーの試合では試合のメンバーのアップが始まる前に会場に行って部の荷物を届け、試合中はピッチの横で声を枯らして応援する。資格を取って、ア式とは無関係な試合で審判をさせられる人もいる。

その他諸々、不本意ながらも、ピッチに立つ選手がちゃんと試合ができるように、多くの雑務に耐えている。

試合に出ないんだから当然。そんなことは百も承知。こっちだって自分のせいだって分かってる。だけど、その恩恵を受けている人たちはそんなこと言ってはいけない。そのおかげで試合ができているんだから。

選手に限らず、いつも献身的にサポートしてくれているスタッフに対しても、感謝とリスペクトを持って常に接するべき。他人に勝手に点数つけて、馬鹿にするような振る舞いは論外。

練習後にボールを探すとか、部室とグラウンドの往復で荷物を運ぶとか、自分でもできるようなことは最低限やる。俺は上手いからやらなくていい、なんて思ってないかもしれないが、ちょっとそういう傲慢さがあるのではないか。と思ってしまうこともある。


ピッチ外のことはどうでもいい。どんなに他者にリスペクトを欠いていたって、ピッチで素晴らしいプレーができればそれでいい。そういう考え方もあるのかもしれない。実際、そういう人も、いる。

もしかしたら、もっと強いチームや、プロのチームでは、それで良いのかもしれない。質の高い選手をいくらでも外から集められるようなチームでは。

でも、ア式は違うはず。入部した時に大したことない選手でも、成長しなければ、成長させなければ、強くなっていくことはできない。

だったら、ピッチに立つ選手たちは、嫌われるのではなく、目指されるようになった方が、チームが強くなる方向に働くはず。形だけでも良いから、感謝とリスペクトを持って、行動する。この人みたいになろう。そう思ってもらえるように。

さっきの話と矛盾しているように聞こえるかもしれないが、当時の自分は、どうしようもない怒りを感じるとともに、ああいう選手に、ああいう人になりたい、そんな思いもあった。

そんな人の姿が、くすぶっている選手たちの背中を押す部分も、きっとあると思う。

そして、スタッフのみんなにももっとサポートしたいと思ってもらえる。さらに言えば、外から支援してくださっている方々からも、もっと応援しようと思ってもらえるチームに、なれるはず。


良い人になってほしいわけではない。チームがいい方向にいくための行動をとってほしい。それだけ。


偉そうなことを言ったが、自分も完璧にできてたわけじゃない。足りてなかった。反省。後輩のみんなも、全然できていないとかではない。ただ、できていないときに、それでいいんだと思わないでほしい。




長いなあと感じているみなさん、もう終わります。


自分には、優れた哲学もない。鋭い分析力もない。成功に導くノウハウもない。

経験から感じたことしか話せない。


良い構成が思いつかなかった。拙い文章ですみません。


今まで自分が関わってきた全ての人に、感謝の気持ちを伝えたいと思います。

ありがとうございました。



でも、俺の逆襲はこれから。捲土重来。


4年 西 雄太

コメント

  1. 泣けた。ここ数年御殿下のア式の試合を外から見学していた1ファンだが、自分も大学卒業までサッカーをしていた身なので気持ちが分かる。お疲れさまでした、今後のご活躍をお祈りしています。これが明けたらまた御殿下で応援したい。

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