さらば青春

4年 松山樹立




2022年1月20日。

期限1ヶ月オーバー、篠塚君本当にごめんなさい。

 

自分の中でのfeelingsの優先度を最下位にしてしまったのがいけなかった。4年の後期ともなると流石にやる事は沢山あるので、そっちにフル動員してしまうと必然的に優先度の低いタスクは埋もれしまう。ただ、篠塚君が粘り強く催促してくれたので、埋もれていた物を掘り起こすことに成功し、ようやく今になって書き始めた次第である。

 

本当にそんなにやることがあるのかと思う人もいるかもしれないから、この1ヶ月間ないし引退してからの2ヶ月間何をしていたのか、簡潔に説明する。僕の所属する研究室は室員あたり二つのテーマを持っていて、実験に換算すると4つ程の実験となり、これを同時並行で進めることになる。消費する時間は実験に依るが、僕がする実験はハード寄りなため、土日が潰れる事はざらにあるといった感じである。最近では卒論が別テーマで決まったので、その調べ物もしていたらア式の4年間を振り返る余裕はない。

まあ元から振り返る気などなかったので、頭を使わずにだらだらと最後のfeelingsを書き上げようと思う。

 

 

2020年に世界的なパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスは2年近く経った今でも猛威を振るっている。収まりかけたかと思ったところでまた感染が拡大するその原因は、よく耳にする〇〇株という所謂変異体である。最近流行っているオミクロン株は基準株と比較し、スパイクタンパク質に30か所のアミノ酸置換変異を有し、3か所の小欠損と1か所の挿入部位を持つ特徴があるらしい。(国立感染症研究所より)

これだけ書いても何を言ってるのか僕もさっぱりわからないので、少し調べてみてわかったことを以降記述する。

 

 

コロナウイルスはニドウイルス目コルニドウイルス亜目のコロナウイルス科に属するプラス鎖RNAウイルスである。RNAウイルスとはゲノムとしてRNA(リボ核酸)を持つウイルスのことであり、我々ヒトとは違いDNA(デオキシリボ核酸)を持たない。コロナウイルス科は更にレトウイルス亜科とオルトコロナウイルス亜科に分けられ、後者はαコロナウイルス属、βコロナウイルス属、γコロナウイルス属、δコロナウイルス属の4つの属を含んでいる。コロナウイルスは哺乳類や鳥類に感染し、これまでに46種が報告されている。このうち、ヒトの病原ウイルスとして同定されているのは7種あり、SARSコロナウイルス2型、通称新型コロナウイルスはここに含まれる。2型ということは1型も存在し、種名には含まれないがSARSコロナウイルスと言う。SARSコロナウイルスは2002年に広東省を発端とする、致死率10%の重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome; SARS)の病原ウイルスであり、世界各地で流行した。コウモリが自然宿主であり、感染したコウモリあるいはコウモリから感染した他の動物と接触したことでヒトにも感染したと考えられている。新型コロナウイルスもコウモリが自然宿主らしい。

コロナウイルスの粒子は直径約100nmの球状で、表面にスパイクと呼ばれる突起のような構造物がある。この形がコロナ(太陽の外側に広がる高温の気体)のように見えることから、コロナウイルスと名付けられたらしい。ウイルス粒子の内部には遺伝情報を持つRNAとNタンパク質が結合してできるヌクレオカプシドが存在する。Nタンパク質はウイルス粒子中に最も多く存在するタンパク質であり、ウイルスタンパク質を検出する抗原検査では、コロナウイルスにおける標的タンパク質としてNタンパク質を用いるのが一般的である。ヌクレオカプシドの外側はエンベロープで包まれており、エンベロープにはスパイクタンパク質(Sタンパク質)などのウイルスタンパク質が存在している。アルコールや石鹸などを用いたて指の消毒は、このエンベロープを破壊するためであり、エンベロープを破壊されたウイルス粒子は宿主への感染性を失う。というのも、エンペロープに存在するスパイクタンパク質は、宿主であるヒトの受容体ACE2(angiotensin-converting enzyme 2)に結合し開裂することでウイルス粒子の宿主細胞内への侵入を可能にしているからである。エンベロープを破壊されたウイルス粒子は宿主を認識する手段を失うので、感染できなくなるという訳だ。ACE2は上気道の粘膜上皮細胞や肺の肺胞上皮細胞で発現しており、新型コロナウイルス感染症に呼吸器系の疾患が目立つのはこれが理由であると考えられる。

新型コロナウイルスの複製機構についても軽く触れておく。前述の通り、宿主細胞のACE2受容体にスパイクタンパク質を介して結合したウイルス粒子は、細胞内へと侵入し脱殻(エンベロープが外れる)する。脱殻により細胞室内に遊離したウイルスゲノムは、まずリボソームに取り込まれる。新型コロナウイルスのゲノムはプラス鎖RNAであるため、そのままタンパク質翻訳をすることができ、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RNA dependent RNA polymerase; RdRp)が最初に産出される。RdRpはウイルスのゲノムRNAを鋳型としてマイナスRNAを合成する。合成されたマイナス鎖を鋳型としてRdRpによりSタンパク質やNタンパク質などのウイルスタンパク質のmRNA転写が起こり、ウイルスタンパク質が合成される。また、マイナス鎖RNAを鋳型としてRdRpにより子孫ウイルスのゲノムRNAが合成される。合成されたウイルスタンパク質(Nタンパク質を除く)は宿主の小胞体膜状に集結し、エンベロープの前駆体となる。Nタンパク質は合成された子孫ウイルスのゲノムRNAと結合し、ヌクレオカプシドを形成する。最後に、エンベロープがヌクレオカプシドを包み込み、宿主細胞外へと放出される。

さて、ここから変異体の話に入る。遺伝子の変異は一定確率で起こり、どの生物(ウイルス含む)にも共通している。RNAウイルスにおいては、RNA複製の段階で一定の確率でミスが生じ、塩基配列が変わってしまう。塩基配列が変わることは、翻訳されるアミノ酸が変わる(非同義置換)ことを意味する(正確には翻訳されるアミノ酸が変わらない塩基配列の変異もあり、これを同義置換と言う)。アミノ酸が変わると多数のアミノ酸が連なってできているタンパク質の構造が変わることがある。コロナウイルスの変異体ではこういった変異が積み重なり、スパイクタンパク質の構造が変化してウイルスの感染力に影響していると思われる。前述の通り、スパイクタンパク質は宿主の受容体ACE2と結合しウイルスの宿主細胞への吸着を担っているので、スパイクタンパク質の構造が変化して、よりACE2に結合しやすくなったら、ウイルスの感染力は上昇する。ただ、変異による毒性の変化に関しては、少し考え方が異なる。仮に変異により強毒化したとすると、強毒ウイルスの感染者は発症して入院するなど、健全な他者から隔離されるため、感染を広げる可能性が低くなる。感染が広がらなくなると、そのウイルスは増殖できなくなるので、こうした強毒ウイルスは、ウイルスの生存という観点では不利な可能性がある。一方、弱毒ウイルスの場合は、無症状の患者がみられるように、自身の感染に気付かない感染者が、健全な他者にウイルスを感染させる機会が多いとも考えられる。つまり、全員のPCR検査をするような集団でない限りは、弱毒ウイルスの方がウイルス生存の観点からは有利な可能性がある(あくまで可能性なので、これだ正しいとは限らない)。実際、オミクロン株に関しても、感染力は従来の変異株と比較して高い傾向にある一方で、症状の重さに関しては他の変異株と大差ないようである。

 

いい機会だと思ってコロナウイルスについて調べてみたが、ここまで読んでいる人がどれくらいいるだろうか。とんでもないクソfeelingsが完成されようとしているが、生憎読み手のことを考える余裕は僕にはないので、このまま書き連ねていくこととする。

 

ただ、卒部feelingsでサッカーのことについて書かないのは如何なものかと思い出した。サッカーのことと4年間で関わった人への感謝を記してこのfeelingsを締め括ろうと思う。

 

 

山口遼・前監督に教えられた言葉に"アフォーダンス"というものがある。

affordanceは「知覚や行為を促すものとして環境が内包している一種の力」という意味で、日本語で当てはめるなら”行動可能性"といった訳になるのだろうか。

日常生活を例として説明する。

目の前に椅子があるとして、あなたがとりうる行動には何があるだろうか。

恐らく大多数の人が「座る」だろう。中には「上に立つ」だったり「机にして作業する」といった行動をとる人もいるかもしれない。

この時、椅子が放つアフォーダンスをあなたが汲み取り、「座る」という行動を起こしたと説明される。つまり、その椅子が放つ"行動可能性"の中からあなたは「座る」を選択し実行したということである。

一つのシーンを切り取っても様々な"行動可能性"が存在するサッカーにおいて、あるプレーの選択は個人の能力と経験に依存する。眼の前に起きている現象が放つアフォーダンスを自分の能力や経験というフィルターを通し、通り抜けてきたものを選択肢として受け取り行動に移す。自分の技術や身体能力が高いほど、あるいは成功体験の回数が多いほどフィルターの目は粗くなり様々な選択肢が頭に浮かぶようになる。

物理的に同じものが見えていても、上手い選手はそれだけでは得られる可能性が少ないから首を振ってより多くの選択肢を得ようとするし、下手な選手は首を振ろうとも思わない。

では、上手くなるにはどうしたらいいのか。

1つ目、技術や身体能力が足りていない可能性。これは地道な努力によってしか改善されないので、足りないと思っているなら筋トレやパスコンの練習をひたすらやるしかない。

2つ目、成功体験が足りていない可能性。言い換えると失敗から学んでいない可能性。自分が選んだ行動が失敗に終わった場合、そこから何かを感じ取らなくてはならない。ボールの置き位置、体の向き、立ち位置など失敗の原因は様々あるが、それを追究しないことには成功体験は得られない。失敗の原因がわかったのなら、次にどうしたら上手くいくのか考え行動する必要がある。パスコースを選べるように開いた位置にボールを置いてみよう、すぐに前を向けるように半身でボールを受けよう、ラインを越せるようにもう少し高い位置を取ってみよう。一回のサイクルで成功しないことは少なくない。何度も試行錯誤を繰り返して成功体験がようやく得られる。

3つ目、2つ目に付随して、イメージが足りていない可能性。どうしたら上手くいくのか、わからなければ成功している例を見るほかない。陵平さんがサッカーをたくさん見るようにおっしゃっているが、これはイマジネーションを豊富にするために必要である。

(アフォーダンスについては僕の理解が乏しいので、気になったら自身で調べてみることをお勧めする。)

 

育成のコーチをやっていて思うことは、2つ目の試行錯誤の回数が少ない人が多いということである。

まあ1つ目も足りていない人が多いがここで言うことではないと思ったので割愛する。筋トレ(身体操作?)に関しては田所というその道のプロがいるので、積極的に聞きに行くといい。

試行錯誤の回数は、こちらから指摘したとしても本人が気づいて自ら動かないと増えないし、よって成功体験も積めない。懸命にもがいてほしい。それを僕らコーチは全力でサポートする。

楓は「自分がコーチとしてすべき選手への働きかけはコペルニクス的転回を起こしうる言葉と鍵候補となるプレーをたくさん提示することだ」と言っていた。僕たちが渡した「鍵」を使い、成功へと繋げるのは君たち自身である。僕たちコーチもまだまだ至らない点が多いので、僕らは「鍵」を渡す側として、君たちは「鍵」を使い「扉」を開く側として共に成長できていければいいなと思っている。

 

 

 

最後になるが、4年間で関わらさせていただいた全ての方々へ。

LB会を始め、平素ご支援いただいている方々へ、直近2年間のコロナ禍において部としての活動が継続できたのは、変わることのない多大なるご支援があってこそのものです。深く感謝申し上げます。今後ともご支援・ご声援の程、よろしくお願いいたします。

 

ピッチ内外でサポートしてくれた監督、コーチ陣、スタッフの方々へ、自分のやりたいこと、目の前のことに集中できる環境がどれほどありがたいことか、離れてみるとよくわかります。様々なサポートがあってサッカーに集中できました。本当にありがとうございました。そして同期スタッフへ、4年間本当にお疲れ様でした。すごい人ばかりで、本当に尊敬しています。

 

共にプレーした先輩、後輩へ、上手いだけじゃなくて人間としても面白みのある人が多く、同じピッチでプレーすることができて幸せでした。後輩については、何も残せなかった身としてこんなこと言うのは恐縮だけど、一年での一部復帰を期待しているし、できるチームだと本当に思っているので、これから1年間頑張りましょう。

 

4年間を共に過ごした同期選手たちへ、僕含め間違いなく下手な代だったと思う。辛いことばかりだったけど、みんなが頑張っている姿を見て、自分も頑張らなくては、と元気をもらいました。引退試合後のベンチで、隣に座る秀樹の涙を見てケラケラ笑っていたのは、もらい泣きに耐えるためだったのかもしれません。4年間を共に駆け抜けたみんなは、一人一人が熱いものを持った最高の同期です。またサッカーしましょう。(4月から働く人は積極的にご飯おごってください。)

 

 

 

4年間ありがとうございました。

 

提出日:2022年2月1日

http://ashiki-feelings.blogspot.com/2022/01/blog-post_23.html

松山樹立





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