見たことのない景色
四月も終わりかけた頃、私は駒場のラグビー場に向かっていた。新生活の疲れからか体調を崩しまくり、やっと行くことのできた体験練習の日だった。太陽は沈み切っていて白いライトの中に真っ暗なグラウンドが浮かび上がっている。自己紹介の後に始まった基礎練で、人生で初めてボールを蹴った。なんとなく足の内側を使うことは知っていたが、実際にやってみると思うようにいかない。先輩のアドバイスに従いボールに対して足を垂直に出すよう意識する。何度かやってみた末に真っすぐボールが転がった。楽しいなと思った。ウォーミングアップの次にミニゲームをして、それが終わるころにはア式に入ろうと決めていた。
五月二十六日。ア式に入って初めての練習試合の日。私は二本目から、右サイドハーフで出場した。何が何だかよく分からないまま、先輩の声を頼りに走り続ける。段々息が上がってきて、シャトルランみたいだなと頭の隅で余計なことを考える。とっくに限界を迎えた足を動かしてひたすらボールを追いかけた。乱れた心臓と呼吸の音が体中にこだましている。それでも、とにかくボールが蹴りたいと思った。自分が結構強欲だったこと。サッカーを始めてから知った新しい自分だった。
六月に入って、左足首の捻挫をきっかけに部活の練習を見学することが増えた。筋トレをしたり、広報用の写真を撮ったりしながらピッチの中で練習する皆を見つめる。始めて一か月で怪我は早すぎるよなとか、同期のボール捌き段々上手くなってるなとか色々なことを考える。しょげている私に声をかけてくれたOGの人たち、筋トレを教えてくれたコーチ、一緒に筋トレしてくれた先輩、励ましてくれた同輩。ピッチの外に立って、この二か月で出会った人たちとのつながりを改めて感じた。このチームに貢献して、このチームで勝ちたいなと強く思うようになった。
毎日は、新たな出会いの連続だ。新しい場所、新しい人、新しい自分。一つひとつの出会いが折り重なって、ある時突然見たことのない景色が立ち現れる。自分が想像もしなかった景色に出会ったとき、胸の中で何かがはじけて高揚感で溺れそうになる。その瞬間が何よりも好きだ。
入部を決めた体験練習の日の夜。
ア式で過ごす四年間の先に、どんな景色が広がっているのだろう。私はそれを知りたいと思った。
五月二十六日。ア式に入って初めての練習試合の日。私は二本目から、右サイドハーフで出場した。何が何だかよく分からないまま、先輩の声を頼りに走り続ける。段々息が上がってきて、シャトルランみたいだなと頭の隅で余計なことを考える。とっくに限界を迎えた足を動かしてひたすらボールを追いかけた。乱れた心臓と呼吸の音が体中にこだましている。それでも、とにかくボールが蹴りたいと思った。自分が結構強欲だったこと。サッカーを始めてから知った新しい自分だった。
六月に入って、左足首の捻挫をきっかけに部活の練習を見学することが増えた。筋トレをしたり、広報用の写真を撮ったりしながらピッチの中で練習する皆を見つめる。始めて一か月で怪我は早すぎるよなとか、同期のボール捌き段々上手くなってるなとか色々なことを考える。しょげている私に声をかけてくれたOGの人たち、筋トレを教えてくれたコーチ、一緒に筋トレしてくれた先輩、励ましてくれた同輩。ピッチの外に立って、この二か月で出会った人たちとのつながりを改めて感じた。このチームに貢献して、このチームで勝ちたいなと強く思うようになった。
毎日は、新たな出会いの連続だ。新しい場所、新しい人、新しい自分。一つひとつの出会いが折り重なって、ある時突然見たことのない景色が立ち現れる。自分が想像もしなかった景色に出会ったとき、胸の中で何かがはじけて高揚感で溺れそうになる。その瞬間が何よりも好きだ。
入部を決めた体験練習の日の夜。
ア式で過ごす四年間の先に、どんな景色が広がっているのだろう。私はそれを知りたいと思った。
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