ブラコン
大久保璃歩(1年/マネージャー/恵泉女学園高校)
2歳上の兄が所属していたサッカークラブでは父がパパコーチとして子どもたちを指導しており、母も兄の試合を観るためにいつも車で各地の遠征に付いていっていました。小さい私のことを1人置いていくわけにはいかないので、私も母と一緒に兄の応援に行くことが、兄が中学受験に本腰を入れ始める時期まで続きました。
他にしたいこともありませんでしたが、言わずとも毎週末の家族の予定は兄のサッカーに関することと決まっていて、私はそれが不満でした。私だってもっと両親に構ってもらいたかったのに、2人はいつも兄のことばかりで、「にいにばっかり」と母にこぼしては怒られていました。
ただ、楽しかった記憶もあります。毎週月曜日には三鷹にあるサッカースクールに母と兄と私で向かい、終わった後は帰り道の途中にあるはま寿司やららぽーとのフードコートに寄ってご飯を食べました。私と同じように試合中に待ちぼうけを喰らっている選手の兄妹と仲良くなって、一緒に遊びました。ただ、楽しかったのはサッカーにまつわる出来事であって、サッカー自体はずっと嫌いでした。ルールもよく分からないから見ていてつまらないし、両親が取られてしまうし、それでいて兄が活躍しているわけでもなかったからです。
兄が中学のサッカー部に入ってから、私まで観戦しに行くことはほとんど無くなったものの、他に変わったことと言えば父が指導する立場から観戦している保護者の1人になったことと、両親が応援に行く頻度が少し下がったことくらいで、私のサッカーに対する認識は小学生の頃から何も変わりませんでした。兄がテレビでサッカーの試合を流していたら、怒ってチャンネルを変えました。家族とサッカー観戦に行った日は、試合中ずっと座席でiPadをいじっていました。
転機が訪れたのは高校1年生の時でした。11月25日、父と一緒に父の贔屓チームで私も何度か観戦したことのある横浜FC対湘南ベルマーレの試合を観にいきました。座席に向かうために階段を登っていると、コンコースで決起集会をやっている横浜FCサポーターの集団がいて、コールリーダーが「ここで負けたら降格だぞ!」と言っていたことを覚えています。なぜか私はその言葉に奮い立たせられ、初めてちゃんと試合に注目しました。その時から嫌々サッカーを観ることがなくなりました。
案の定負けて横浜FCは降格し、24/25シーズンはJ2で過ごすことになったものの、サッカー観戦に抵抗の無くなった私は、父から誘われたり逆に自分から誘ったりして、シーズンの半分を現地で応援しました。実際にサッカーをやったことのない私は、それまでゴールが決まった瞬間くらいしか試合中の動きとして掴めるものがありませんでした。今も大したルールは分かっていませんが、オフサイドがなにかとか、クリアは大きくした方がいいとか、サッカーの多少のなんたるかは観戦中に父から学びました。
昨季を2位で終えてからの25/26シーズン、横浜FCは再びJ1で戦うことになりました。私も2月15日の対FC東京戦を皮切りに、何度も試合を観に行きました。受験勉強よりもサッカーを観ている時間の方が長かったような気がします。
それまでも特別仲良くしていたわけではありませんが、兄はこの年の10月から一人暮らしを始め、ただでさえ兄がア式に入ってから私との生活のリズムが合わなくなり顔を見る頻度が減っていたのに、一層距離が離れることになりました。
なんとか受験を終え春からの新生活を楽しみにしていた時、大学では体育会の部活に入ることを約束して欲しいと両親に言われました。「熱中できるものを見つけて欲しい、そうしないと璃歩はぼんやり4年間を過ごすことになってしまう。サークルでは駄目だ」と言われ、そもそもサークルですら何にも入るつもりのなかった私は困惑しました。部活というコミュニティが苦手で高校1年生の時にテニス部を辞めた私が、なんで大学に入ってまで部活をしなくちゃいけないんだと思いました。
結局観念し、いくつか自分の大学内の部活を回ったもののピンとくる場所がなく悩んでいた時、以前兄が「ア式のマネージャーをやったら」と言ってくれたことを思い出しました。
その言葉を思い出して練習見学に行くと、元々兄から名前を聞いていたり、試合映像を通して名前を存じ上げていた方々や、自分と中高が同じ素敵な先輩がいらっしゃったこともあって、そのまま入部させて頂くことになりました。
5月に入部式があり、それから今までの毎日はあっという間に過ぎていきました。誰かを支える立場に身を置いたことがなく、先回りができず先輩方・同輩にご迷惑をお掛けしてしまう場面も多くありますが、ア式に入部したことでもっとサッカーに詳しくなりたいという気持ちが芽生えたり、大学以外にも深いコミュニティができたりして毎日が楽しいです。
そしてもう1つ良かったのは、家族の距離がまた縮まったことです。私がア式に入部したことで兄と顔を合わせる頻度が以前よりも増えただけでなく、週末の試合には小学生の時のように家族全員が集うことができるし、4人でご飯を食べている時も共通の話題で盛り上がることができます。当時はそれに気付くことができませんでしたが、思い返してみると小学生の頃も、兄がサッカーをしていることが家族を繋いでくれていた一面もあったのだと思います。
長くなってしまいましたが、これからの3年半は兄妹ともに成人した今もこうして家族で集えることに感謝しつつ、ア式蹴球部という組織に自分が身を置くことの価値を見出せるように努力していきたいです。
コメント
コメントを投稿