Command + Z
自分の使っているパソコンでは、選択対象をコピーするにはCommand + C、カットするにはCommand + X、ペーストするにはCommand + Vを押す。パソコン作業を多く行う大学生ならば日常的に使うコマンドである。他にもCommand + Tabはクールにアプリケーションの切り替えができるし、Chromeのタブ切り替えはCommand + option + → (or ←)でできる。
しかし上のコマンドよりも数段頼れる、そして便利なコマンドがある。Command + Zである。Command + ZはUndo機能のショートカットであり、編集した内容を元に戻す時に用いる。
プログラミングを行う際Command + Zのおかげで、自分はプログラムのビルドを行い、失敗したらCommand + Zで元に戻し、再編集する、というような作業を行うことができる。Command + Zを使用した記録はプログラムには残らない。完成品は無傷のピッカピカな新品なのだ。
対して、人生は、特にサッカーはどうだろうか。
無論、Command + Zなど存在しない。時の流れは常に一定で元に戻すことなどできない。
「あのシュートを決めていたら」
「あそこでファールしなければ」
「もっといい練習ができていたら」
5歳からサッカーを続けていれば後悔することなどいくらでもある。サッカーにおいて、一つのプレーを失敗することでどれだけのチャンスを無駄にしたか、信頼を失ったか、立ちたい場所に立てなくなったか。ふとした瞬間にそういうことを思い出し、Command + Zを押したくなる。プロになって活躍している友達、選手権に出て活躍する友達、高校選抜のレギュラーとして活躍する友達。彼らを見るたびに頑張って欲しいと思うが、心の片隅にはいつも羨望、嫉妬がある。
これまでの自分のサッカー人生を現時点での完成品(決して完成をしているわけではないが)とすれば、それは傷だらけの中古品である。一つ一つの失敗が積み重なり今の自分がいる。しかし失敗というものは時間と共に風化していく。確かに積み重なっている傷はいつの間にか見えなくなったように錯覚する。そしてある時、ふとその存在に向き合った時に傷がついてしまったことを後悔し、同時に思い出したくない過去としてまた風化を待つようになる。
先に述べたようにサッカーにCommand + Zは存在しない。しかし、コンピュータが一瞬で行うCommand + Zの処理を長い時間をかけて、できてしまった傷の埋め合わせのために必死に自分を磨くことはできる。自分はこのことを理解するのが遅すぎた。いや、理解していたのに、していないふりをしていたのかもしれない。なんにせよ遅かった。
これからいくら傷の埋め合わせのために自分を磨いても確実に傷だらけの中古品にしかならない。いつ自分のサッカー人生が完成品となるのかはわからないが、あっという間にその時は来てしまうのだろう。
そうであるならば今の状況下での最善を尽くすしかない。今までの傷をできるだけ埋め合わせる。新しい傷を風化させない。たとえ傷が残っていたとしても自信を持って完成品と言える、そんなサッカー人生にこれからしていきたい。
追記: この文章作成で一番多く使ったコマンドはCommand + S(保存)でした。
1年 古賀樹
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