心のクラブ

923日 帝京大学戦 @御殿下
この試合のことを僕はきっと忘れないだろう。



サッカーを始めてからもう15年くらい経った。その中でも忘れられない試合というのが何試合かある。小学生の時に市大会の準々決勝で負けた試合、中学生の時に遠征でボコボコにされてどうしていいかわからなくなった時、私学大会の3位決定戦で負けた試合。思い返すとそのほとんどが負けて悔しくて泣いた試合だ。高校でキャプテンをやっていた時、個性の強いメンバーの中で一歩引いて、勝った時も負けた時も出来るだけ感情を出さないようになっていった。今思えば負けることが怖くて、ただ逃げていただけかもしれない。こうしていつしかサッカーで感情を爆発させることはどんどん無くなっていた。

大学でサッカー部に入るつもりはなかったが、気付いたらまたサッカーがやりたくなってア式に入っていた。今までより深くサッカーについて考えるようになって毎日楽しかった。最初の頃は遼とか日野とか、正直怖かったけど必死に考えて、教えてもらって、練習して、試合して、また考えて。忘れかけていたサッカーの楽しさを思い出していた。でも、やっぱり公式戦に出てない分チームの勝ち負けに対して一歩引いてしまっている自分がいた。もちろんリーグ戦に勝ったら嬉しかったし、負けたら悔しかったけどなんか違った。一年の時の最終節、東経に負けて泣き崩れる先輩を見て、この人たちと本当の意味でチームメイトになれていなかった気がした。

一年の秋、新人戦チームに呼んでもらって初めてAチームでプレーする選手と一緒に練習した。
けど何も出来なかった。
技術的に下手だったとかそのレベルではなく、練習中ずっとびびって、コーチや周りに怒られないように、それで精一杯だった。そんなメンタリティでは試合に出られるわけもなく、折角の機会を無駄にしていつの間にか新人戦が終わっていた。きっとこの時にもう選手として限界だったのだと思う。そこから必死に頑張ってみたけど一個下が入ってきて、育成でも試合に出られなくなって、二年の夏に選手としてのア式での日々が終わった。

そこからスタッフになって、選手の時以上にチームにコミットしようと頑張った。グラウンド業務、サッカーフェスティバル、カイザー杯、五月祭、主務、学生GM。本当に色々やって自分なりに頑張ってきたつもりだった。選手の時以上に結果に責任をもって取り組んだつもりだった。でも、去年のリーグ戦は勝てなかった。そして、僕は何も出来なかった。チームを強くすることも、魅力的なクラブにすることも。これ以上何をすればいいのか。先が見えない不安、結果に結びつかないもどかしさ。そんな暗い気持ちのまま三年生のシーズンが終わった。


ラストシーズン。組織を一から見つめなおして幹部やスタッフでミーティングをする日々は続いた。学生GMとしての仕事も主務の仕事も慣れてきて、少しずついい方向に進んでいる手応えはあった。でも、プレシーズンでチームは全く結果を残せなかった。アミノでの日商戦後、わずかながらの手応えを感じてしまっていた自分が情けなくて自己嫌悪に陥った。チームに迷惑かけられないから、毎日部室に行って出来ることをひたすらやって気持ちを落ち着けていたが、得体のしれない何かに押しつぶされそうな毎日に、何度解放されたいと願っただろう。このままでは自分が何者にもなれない気がして本当に辛かった。

迎えたリーグ戦。開幕戦の亜細亜と試合。プレシーズンとは見違えるようなプレーを見せる選手の姿にはっとさせられた。選手はぎりぎりのところで全てを賭けて闘っているのに自分は何をびびっているのか。自分たちが信じて歩んできた道は決して間違っていなかったと証明しなければいけない、そんな風に勇気づけられた。試合は負けたがこの試合を記録員として観ながら、このチームならやれる、そう確信した。

リーグ戦の日は朝から食事が喉を通らないほど緊張する日々が続いた。それは試合への不安と高揚感の混ざった、サッカーで感情を爆発させていた頃に感じた感情そのものであった。試合前の円陣、入場、キックオフの笛。その瞬間に感じる武者震いのような感覚はきっと自分がピッチでこれから闘いに向かうかのようであった。本部からピッチで躍動する選手を観ているといつの間にか引き込まれていき、いつの間にか熱くなっている自分がいた。(何回か本部は静かにと注意されました笑)試合が終わると自分はプレーしていないのに身体の力が抜けて疲れがどっと押し寄せる。まさしく選手と一緒に闘っている感覚であった。


順調に勝ち点を積み重ねて迎えた帝京大学戦。勝てば昇格決定、負ければ首位陥落という大一番。この試合も本部から観ていたが、はっきり言って感動した。プレーだけでなくこの試合に賭ける想いでも相手を圧倒していた。3点取っても最後までボールを動かして、プレスかけて点取りに行く。9月下旬にしては暑い中できっときついはずなのに誰一人として最後までハードワークをやめなかった。今年ずっと見てきた光景だったはずなのに感動した。
試合後の集合で遼が言葉に詰まったのを見て涙が止まらなくなった。それは嬉しさからきたものか、安堵からなのかわからない。でも涙が止まらなかった。高校の時にいつの間にか忘れていた感情をア式のみんなは思い出させてくれた。集合の後も泣き続けてみんなに笑われたけど。


この4年間で本当にたくさんの人にお世話になった。同期、先輩、後輩。他の部活の仲間、大学関係者、色々な高校の先生、文京区の方、LB会の先輩方。挙げだしたらキリがないほど多くの方と会い、未熟で生意気な僕を指導して下さった。そんな人たちに支えられた4年間、入部したころよりは少しは大人になれた気がする。僕自身は一人の部員としてこのア式というクラブに何が出来たかわからないけど、ア式は僕に本当に多くのことを教えてくれた。きっとこれから先、死ぬまでずっと僕の心はア式にある、そんな気がする。



4年間お世話になりました。そして、最後にこれだけ言います。

僕は東京大学ア式蹴球部が大好きです。


4年 STAFF  糸谷 歩

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