いつか出る芽を信じて


早いもので3回目のfeelingsが回ってきた。そして大学生活2年目が終了しようとしている。定期試験を終えて春休みを迎えた今は、サッカーで例えると前半戦を終えて、回復を図りながらも前半戦の課題をはっきりさせ、後半に向けて作戦を練るハーフタイムといったところだろうか。前半戦を終えた今、考えることは色々あって、残された時間をより密度の濃いものにするにはどうすればよいか、とかこれからはこうしてみようとか試行錯誤を繰り返すべき時期であると思う。


入部してから丸2年が経とうとしているが、流石に見えている景色はその当初とは全く違う。初めてfeelingsを書いた時のことを思い出してみると、期待に胸を膨らませて、ハングリー精神全開で「すぐにAチームに上がって活躍してやるんだ」と周りのことには見向きもせず、自分をどう出すか、ということに全神経を集中させて良くも悪くも視線は内向きになっていた。しかし、当たり前のことではあるが、段々と月日を重ねるに従って自分のことを考えるだけでは事足りず、外向きの視線も要されるようになる(もちろん1年生の頃から、学年とか関係なしに周囲にも目を向けてチームを動かしていかなければならないが、自分にはそれだけの余裕はなかった)。そこで3回目のfeelingsはチームに主眼を置いて書いていこうと思う。とは言っても、まだそこまでチーム全体を大きく動かす程のことは何もできていないから、今回は自分が深くコミットしているリクルートユニットについて書く。


前述のように、個人単位で考えると今の時期は後半戦へ向けて、今までの課題を洗い出して後半戦での修正を試みるハーフタイムだと位置付けたが、チームとしても冬のオフが明け新シーズンへ向けて始動し、より強く、より魅力的なクラブになるために試行錯誤を繰り返しながら色々な変化を経験する時期だ。



そんな中で、今シーズンのア式の大きな変化といえば「ティール組織」なるものが導入されたことだろう。ここではティール組織について詳しくは書かないが、簡単に言うとチームに対する個々人のコミットがより大きく求められるようになった、と自分は理解している。ア式を構成するメンバー一人一人が自分のことだけではなく、自分の外側(チーム内だけでなく、チーム外にも)へ目を向けていかなければならないのだ。もちろんコミットの仕方は、サッカーや自分の所属するユニット等色々とあるが、自分の中でより外側へ視線を向けることを要されるな、と感じることは間違いなくユニットでの活動だろう。


ア式には広報やフィジカル、プロモーションなど様々なユニットが存在して、各ユニットがア式をより強く、より魅力的なものにするために自分たちで主体的に活動している。その中で自分はリクルートに所属していて、ユニットのリーダーであるリクルート長を務めている。リクルートユニットについて簡単に説明すると、全国の高校生にア式について知ってもらい、有望な人材の入部に繋げてチームを強化していくのが主な役割である。


正直に言うと、最初はそこまで積極的に活動をしていたわけではない。与えられた仕事をただこなしているような感じだった。そもそも、リクルート活動をするためにこの部に入ったのでもない。では、なぜリクルートに所属することになったのかというと、高校時代に一度ア式と練習試合をしたことがあり、そこからア式への意識が強まって入部に至ったという経緯があったことから、リクルートの先輩にやってみないか、と声を掛けられたのである。他にやりたいこともなかったし「まあ、自分で良ければ…」くらいのノリで配属が決まった。


振り返ってみると、様々な活動をした。全国の高校にパンフレットを送らせてもらうために電話を掛けまくる、なんてこともした。しかし、そういった活動をする中で、どこか釈然としない部分があった。多分それは、自分がやっていることが正しいのか、また何が正解なのかも分からずにもがいていたことから来る違和感であったのだろう。ユニット全体として、メンバー間で明確なビジョンの共有ができておらず、組織としてあまりうまく回っていなかったように感じる。


リクルートの仕事が難しいのは、何か行動を起こしたからといってそれがすぐに結果に繋がらないことが多いということ。そもそも本当に結果が出るのかすらも確かでない。これをちゃんと理解できたのは平メンバーを卒業し、リクルート長になって真剣に考える機会が多くなってからである。リクルート活動とは、将来(それがいつかは分からない)に芽を生やすために、土を耕し、種をまき、少しずつ着実に栄養と水を与えるという地道な活動を続けていくようなものだ。いつ成果が出るのかも分からない状態で行動し続けるのははっきりいって難しい。しかし、そうやって一つの芽が出るようになるのに多くの手間と時間がかかる分、芽が出た時の喜びはそのコストに比例してより大きくなるだろう。逆にいうと、その喜びを味わうためには行動を取り続けなければならない。ただ、自分が今取っている行動が本当に結果に繋がるのかは分からないという難しさもある。

このような葛藤を抱きながら活動をする中で、最近少し嬉しいことがあった。まだ芽が出たと言うには少し大袈裟ではあるが、自分たちがやっていることは間違ってないと再確認させてくれた出来事だ。


リクルートユニットでは活動の一環として、東大やア式という選択肢を認識してもらって入部に繋げたり、文武両道の意識を高め各々のステージで活躍してもらったりすることを目的として全国の高校生と練習試合を組ませてもらっている。嬉しいことに、最近は練習試合をやって欲しいと声を掛けていただく機会が少しずつ多くなってきた。その中で、まだ今まで関わりを持っていなかったある高校のサッカー部の顧問の先生から連絡があったのだ。その先生はリクルート活動に取り組む自分たちと同様の考え方を持った方で、「サッカー部の生徒たちに、部活も勉強も精一杯、納得がいくまでやり切って欲しい、そして一人でも多くの生徒が大学でもサッカーを続けて欲しい」という思いから連絡をしてくださったようである。

「大学でも学業との両立を図り、サッカーに打ち込んでいる学生から刺激をもらいたい」

その先生の言葉に、自分たちが常日頃行なっている活動の意味と可能性を感じた。自分たちの活動によって、誰かの人生をより良い方向に変えることができるかもしれない。そんなことができたらどれだけ嬉しいだろうか。

もう一つ嬉しかったのは、その先生がfeelingsや、リクルートユニットが出した記事を読んでくださっていたということ。しかも、生徒にも読ませて何か変化をもたらすきっかけにしたい、と言ってくださったのだった。今まで、このような声が直接届くということはあまりなかったので、冗談抜きで心の底から嬉しかった。自分たちの活動、そして思いが本当に僅かではあるけれど届く人には届いている。やっぱり、やっていることは間違ってはいないんだ。

このある種の小さな成功体験は、リクルート長としての自分を突き動かしてくれた。もっと多くの人に自分たちの思い、経験を届けたい。もっと多くの人がサッカーと勉強、どちらも妥協せずにやり切ることができるように後押しをしたい。そして、このような成功体験をもっと積み重ねていきたい。そのためにはどうすればいいか、より真剣に考えるようになった。

自分がア式にいる間に芽が出るかは分からない。そもそも自分の行動が正しいのかも分からない。でも、芽を生やすためにはいつかはその芽が出るということを信じて、土を耕し、種をまいて、栄養と水を与え続けるしかない。例え小さなことでも、もしかしたら誰かに響くことがあるかもしれない。だから、一見地味で即効性があるとは思えないことでも、それが何かを生むという可能性がある限りやり続けよう、そう決めた。




22番を自分の色に染めていこう
2年石野佑介

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