先生、頑張り方を教えてください

 2020年4月某日



AM11:00 起床

ああまたこの時間か、身体が重い。

午前中はもう何もできないか、とりあえず服でも替えようか。


PM12:00 朝食

お腹が空いた。もはや朝食なのか昼食なのかわからなくなったご飯を食べる。FastをBreakするから朝食か。でもやっぱ僕は日本語話者だから昼食でいっか。

午後は有意義に時間を使おう。


PM1:00 就寝

ご飯を食べたらうとうとしてきた。

これでは生産性もあがらない。一度仮眠でもとろう。


PM5:00 起床

3時に起きるはずだったが、つい寝すぎてしまった。

でも頭は冴えてるぞ、読みかけの本を終わらせてしまおう。


PM8:00 夕食

もう夕飯の時間か。

本はあまり読み進められなかったな、YouTubeってほんと恐ろしい。


AM1:00 就寝

zoomで友達と話していたらもうこの時間だ。みんなと会えないけどこうやって話せるとやっぱ楽しいな。

今日も結局なんもできなかったな、明日こそは朝から起きてちゃんとやろ。

ほんじゃおやすみ。




AM11:00 起床

ああ、またやっちった。





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はい、東大ア式蹴球部2年の石丸泰大です。

初めて回ってきたfeelings、しょうもない書き出しで始めてしまったけどこのまま進みます。


冒頭の茶番は自宅待機中の過ごし方です。あの日々のことはあんまりよく覚えてないし、思い出したくもないけど、多分大体こんな感じだったと思う。

毎日時間を無駄にしては夜になって後悔して、「明日はちゃんと過ごそう」と誓っては失敗して。


「自宅待機中こそ自分磨きのチャンス」のような言説を目にする度に、頑張ろうと思っても頑張れない自分に嫌気が差していたりした。




僕には短い人生なりに、


「これを頑張ってきた」


と胸を張って言えることがいくつかある。

僕はこれまでの人生いったいどうやって頑張ってきてたんだろうか。



自分はいまセカンドチームにいる。

毎回の試合でベンチ入りできるのはスタメン以外に7人。第6節を終えた時点でベンチ入りは未だに0回。自分がまだ試合で使えるほどのレベルにない事実を突きつけられている。


正直めちゃくちゃむしゃくしゃする。

毎週末ピッチで躍動するトップチームの選手の姿を見ては悔しい想いをして、「今週こそは」と週明けからの練習に向かう。けれど思ったようなプレーができずにまた週末を迎える。



最近はこんなことで頭がいっぱいだ。

頭で考えることばかりが膨れていって身体を追い越してしまっている。行動を変えなければいけないことはわかっているのに。



先日、とある大学サッカーブログで、世の中には努力の世界と夢中の世界がある、というコメントを目にした。


前者は取引の世界だという。目標という「対価」を得るために努力という「犠牲」を払う。この営みは結果によってのみ肯定される。「犠牲」に見合った「対価」を常に期待してしまう。すなわち目標を達成しなければどれだけ積み重ねた努力も無駄だったことになる。


一方で夢中の世界は即時報酬の世界だという。夢中になっているその行為そのものが喜びであり、報酬など求めない。報われる、報われないという概念が存在しない世界だ。



きっと今の自分が辛い思いをしているのは夢中の世界から努力の世界に来てしまったからなんだろう。



なんてことを書き連ねているとサッカーを楽しめていないように思われてしまうかもしれないがそんなことはない。

それどころか部活に復帰してからのこの数ヶ月はすごく楽しい。これまでのサッカー人生で1番刺激を受けている。


プレーでも言動でも魅せてくれる上級生がいたり、同期でありながらチームの中心としてチームを引っ張っているやつがいたり、


多くの変数が重なり合うサッカーという複雑なゲームで起こる現象を切り出して、選手によりシンプルな景色を見せてくれるヘッドコーチがいたり、


動画を一緒に見てくれて、細かいポイントに分けてアドバイスを送ってくれるOBコーチがいたり、苦手とするプレーの参考になる動画を夜な夜な自分のために拾ってきてくれる先輩がいたり、


練習後、個別に動きを見てくれるトレーナーがいたり、普段の練習からプレーヤーを支えるために動いてくれているスタッフがいたり、


どれも高校までの自分のサッカー人生にはなかったものばかりだ。

そういう人たちが身近にいてくれるから、もっと上手くなりたいと思えるし全力でこのスポーツを楽しめている。


サッカーばっかりしていたら遊んだり勉強したり他のことをする時間を失ってしまうんじゃないか、などと考えていた頃よりは遥かに「夢中に」サッカーに向き合えているんじゃないだろうか。



僕には短い人生なりに、


「これを頑張ってきた」


と胸を張って言えることがいくつかある。

面白いことに、そのどれもが頑張ろうとして頑張ってきたものではなかったようだ。


自分のためにしか頑張れないけど、自分1人だけでは頑張ることはできない。そもそも「頑張る」って頑張ろうと思って頑張れるほど簡単なことでもないし。



シーズン終了まで残り7試合。

今の自分につけられる点数はまだまだ高くない。試合にも絡めていない。けれど、それでもまだセカンドチームに置いてくれている。

周りの期待に応えられるように、もっと信頼を得られるように。毎回の練習からチームに貢献できるように。頼もしい姿を見せてくれている4年生がいるうちに1試合でも1分でも長く試合に絡めるように。


夢中の世界と努力の世界の狭間を揺れているような僕だけれど、ここで成長できれば人としてもサッカー選手としてもまた1つ新しい景色を見ることができると信じている。そしてまた、サッカーを始めた頃のような夢中な気持ちでこの競技を更に楽しめると信じている。


絶対、今シーズンの結果を自分事として喜んでやる。




人間、頑張ろうと思ったくらいじゃ頑張れないってことはこの先の人生でも使えそうだ。



よっしゃー、頑張ろ。



2年 石丸

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