悔しいだけで終わらせない

北川孟(1年/FW/渋谷教育学園幕張高校)

 


明けましておめでとうございます!1年プレーヤーの北川孟です。今年もどうかよろしくお願いします。



 さて、シーズンが終わって1ヶ月ぐらい経つ。改めてシーズンを振り返ると、自分の未熟さを突きつけられた苦しいシーズンだったと同時に、浪人していた僕にやっぱりサッカーは楽しい、最高だと再確認させてくれる充実したものだった。





 苦しかったのは怪我と勝てない・点が取れないこと。辛かった受験が終わってやっとサッカーができる!と意気揚々とア式に入部したが、浪人の一年間の反動からか重めの肉離れを田所さん(フィジコ)やスタッフに隠してしまい騙し騙し亜細亜、大東と戦ったが、肉離れを三度まで悪化させた。3ヶ月くらい離脱してだいぶ痛みがとれ、復帰するとその週に手首を折って、今度は手術をしなければいけなくなった。この時期のサッカーノートは15年間で三本の指に入るほどネガティブ。それでも幸いに怪我したのが手だったからシーズン終盤には間に合った。久々にピッチに戻った成蹊戦。2日前からワクワクして眠れなかった。試合前の緊張、チームメイトの凛々しい表情、その全てが僕に生きている実感を取り戻してくれた。前よりコンディションが落ちていたのは否めないが、貪欲にドリブルすることで6月よりもむしろ成長した姿を見せることができた。しかしそこから勝てない試合が続く。チャンスを作れてもえぐりきれない・駆け引きが甘い・怖いところにいないなど肝心な部分で甘さが出て点につながらない。東経戦では遅刻してチームの士気を下げてしまった。あらゆる場面で自分の未熟さが浮き彫りになった。2部に降格することとなったが自分のような甘い人間がチームにいてはやっていけないんだと思った。対戦相手に罵倒されても何も言い返せない自分が惨めで情けなかった。弱いくせに死ぬほど負けず嫌いな僕にとってめちゃくちゃ悔しいシーズンだった。



 

 

 

 しかし悔しいと言っているだけではなにもかわらない。未熟なプレーヤーである分、変えるべきことがはっきりしているからむしろ改善しやすい。またア式は優秀な人が色々な所にいて、監督、OBコーチ、テクニカル、フィジコの多様かつ的確なフィードバックをモノにすればいくらでも課題を克服し成長できる。例えばケガについて。ジュニアの時からケガがちで手術をたくさん受け、この状況を変えたいと思っていた。ケガをした時は挫折とか壁にぶち当たったとか思っていたが、全然そんなものではない。体の使い方が悪かった。田所さんのトレーニング、通称タディトレを通して今まで気づかなかった悪いくせがたくさん見えた。加速、減速が下手くそで使う筋肉が偏っていた。ジャンプする時に足がうまく刺せない。アップとしてやるはずのタディトレにすごく手こずり、なかなかうまく体が動かなかった。それでも続けていくうちに、意識内・外で徐々に動きが最適化されていった。復帰してからは血腫のせいで動きにくいはずが、ドリブルのスピードは十分戻ったしもも前の負担が減って痛めることがなくなった。



 肝心のプレーも整理された戦い方の中で着実に良くなった。6月の試合では味方に胸を合わせることができずチャンスを作り出せなかったが、復帰してからはボールが集まるようになってより仕掛け、よりゴールに迫ることができた。プレー原則が設定され選択肢が目の前にあって、自分の役割がはっきりしていると全然違うな、と思った。高校の時は大雑把な感じのチームだったから、コーチ陣やテクニカルの言っていることが具体的で的確で、練習もミーティングで示された意図を行動につなげるようにデザインされていて、という環境で再現性を求め着実に成長していく感覚は新鮮で楽しかった。未熟な分まだまだ課題は山積みだが、フィードバックを頼りに甘ったれずモノにしていけばもっと怖い選手になれるはずだ。

 



 


 ピッチ外でもできることは山ほどある。ア式ではスラックのフィードバックチャンネルというものがあり、それぞれがプロの試合を見てやりたいと思ったプレーがあればそれを載せてイメージを共有できる。またテクニカルが撮ってくれた練習の動画を共有することもできる。それぞれが気になったシーンで要求したいことを具体的な動画を使って言い合える。スラックを使うことでオープンな議論ができる。例えばある状況で1人がミスしたように見えるプレーでも、実はほかのところで時間とスペースの貯金を無くしてしまうような判断ミスが起きていたりすることがサッカーではよくあると思う。1人では気づきにくいミスもオープンな場で複数の視点か、見れば何倍も学べることが増える。ピッチの外でも気軽にサッカーに関わり続けられるのは大きいと思う。あとは開放系になるなど、外部の情報を取り入れようとする試みには沢山のメリットがある。



 


 また、テクニカルの友達と試合を観るのもためになった。テクニカルにはフットボリスタに寄稿したりレアルマドリードを分析したりする人がいて、みんな違った見方を持っているので話していて楽しい。好きなチームの戦い方を分かっていたつもりでも彼らと話すと、より整理された、より具体的な言葉が返ってくるので毎回学びがある。この一年で彼らと話す内に試合観戦で見えることが増えたし、きっとそれはチームのゲームモデルをちゃんと理解して自分の役割をもっと明確にしていくのに役立つはずだ。


 



 と、ここまで自分がどう成長するか書きつつリクルート班であることもあってア式に入ってよかったことを紹介してみた。ア式が本当に最高の組織で僕は誇らしい。でもやっぱり自分のfeelingsには自分のプレーを自慢できるようになりたい。ドリブルだったら誰にも負けないと言ってみたい。しかしそう言えるだけの物がないし、努力もしてきていない。ドリブルを武器にできるのは東大だから。一部のウイングは何倍も上手かったしその上にはもっといるはずだ。そういう人たちに比べたら自分のドリブルなんてガラクタ同然だ。そして紛れもなく僕自身の歩みで、そんな中途半端なプレーヤーとなってしまった。ケガを言い訳に中学受験に逃げたり、浪人したり…。才能も努力も三流ということだ。けれどそれが分かっていても時間がある限り上を目指したい。そして分かっているからといって簡単に諦められるものではない。卑下して勝手に限界を決めつけ勝負を諦めるのは絶対に嫌だ。自分の能力だって定量的に測れるものではなく複雑系で予想もつかない現れ方をするものだ。すごい人たちが周りにいるのだから、それを活かして試行錯誤し積み重ねていけばいくらでも化けられる。実際降格はしたけれど一部でも通用した部分は確実にあった。サッカーに不誠実な向き合い方をした期間が長すぎて大学だけでは望むような結果が得られないかもしれない。でも大事なのは上に向かう意思を見せ反永久的に上手くなろうという姿勢を見せ続けることだと信じたい。周りのすごい人たちに俺もまだまだやれるんだ、伸びるんだというプライドを見せたい。そしてサッカーに本気で向き合い結果を求め中途半端な自分を変えたい。



 新シーズンが始まるまであと1週間。今年はア式にとっても自分にとっても勝負の年だ。一部に戻った時にまた悔しい思いをするのは絶対に嫌だ。結果にもっとこだわり積み上げ続ける。上を目指すためにこの一年を全力で戦い抜く。

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