常識

F(4年/MF)


常識を打ち破れ。
(2024年度、ア式蹴球部女子の新歓キャッチコピーだそうだ)

引退して数ヶ月、後輩たちが新歓に向けて動き出しているのをみて、時の流れの早さを実感している。

4年前、サッカーを大学から始めるなんて遅すぎると思っていた。
中高生の頃、部活やクラブチームは身近になくて(より正確にいえば、練習場所や時間を選ばなければ入れるチームはあったのかもしれないけれど、本格的に始めてもいない競技をいきなり優先順位のトップにおいて物事を取捨選択する覚悟はなくて、)いつの間にか、サッカーをしたかったこと自体を忘れていた。
それでも、いつかの欲求は消えていなかったらしい。大学の部活動一覧に女子サッカー部を見つけてから連絡するまでは一瞬だった。

入部した時の部員の構成は経験者、初心者半々くらい、中には高校まで運動部に入ったことがない先輩もいた。
ーサッカーって誰がやってもいいんだなと思った。

週4回のうち2回は文京LBレディースという地域チームと一緒に練習している。そこには、私の親世代くらいの、しかも、大人になってからサッカーを始めたという選手が何人も所属していた。
ー始めるのに遅すぎるということはないのだと思った。

私の祖父母世代くらいの方もいるLB会シニアチームと女子部で交流戦をしたこともあった。
ーサッカーは、文字通り、生涯スポーツになり得るんだなと思った。

大学女子サッカーはまだまだマイナーで、強豪校を除くと、競技人数を揃えるので精一杯のチームも少なくない。そんなチームでも公式の大学リーグに参加できるようにつくられたCiEリーグ(先輩方が立ち上げに関わったという)にア式女子は2020年度から参加している。
ー場がないならつくればよいし、枠組みも絶対ではないんだと思った。

サッカーは、男子の、若者の、スポーツ万能な人のための競技だろうか???
ーそんなことはなかった。

大抵の場合、常識を一人で打ち破ることは難しい。そこに場があること、同じ想いをもった先人が可視化されることは大きなエンパワメントになる。
ア式女子は、私にとって、そういう場であった。
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さて、そんな場で過ごした4年間の中身はどうであったかということについて。

自分の技術を上げながら、チーム全体のことも考えるのは簡単ではなかった。
だからこそ、チーム全体が上手くなっているのを実感できた時はすごく嬉しかった。

部活に対する温度差に苛立ったこともあった。
色んなスタンスの人がいるからできたこともあると気がついた。

自分が好きなのはボールを無心に蹴ることであって、サッカーではないのかもしれないと思ったこともあった。
でも、ア式女子として出る公式戦が何だかんだ一番好きだった。

格上の相手に試合で勝った時は最高だった。

戦績が振るわない理由をピッチ外に求めて割り切ろうとしたこともあった。
そんな言い訳で悔しさは消えなかったし、やっぱり試合で勝つしかないと思った。

手放しにア式女子が素晴らしかったとは言いたくない。小規模ゆえの柔軟性は組織の脆さと紙一重であることとか、それぞれの良さをいかせる一方で個人の負担が重くなりがちであることとか、互いを尊重したいはずが時に遠慮に変わってしまうこととか、未だにどうしたらよかったのか分からずにいる部分もある。

「とても遠くまで来た、と思えるのではないでしょうか。」去年の卒部式の監督挨拶が思い出される。
確かに、そうだ。悔いはない。
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創部から現在までア式女子に関わってくださった皆様、応援してくださっている全ての方々に感謝します。
これからのア式女子を応援しています。


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