ゆらのとを
富松日南子(1年/スタッフ/横浜サイエンスフロンティア高校)
タイトルは、百人一首から取った。
百人一首とア式に関わりは全くない。しかし、大学で親しくなった友人がかるた会に所属しており、その話を聞くうちに少し詳しくなったため、せっかくなので初めてのfeelings のタイトルに使ってみようと、以前から考えていた。
「由良のとを 渡る船人 かぢをたえ 行方も知らぬ 恋の道かな」
由良の海峡を渡る舟人が舵を失い、行く末も分からず漂うように、恋の道は先が見えない――そんな意味の歌である。
由良の海峡を渡る舟人が舵を失い、行く末も分からず漂うように、恋の道は先が見えない――そんな意味の歌である。
初めての feelings に何を書くべきか迷ったが、この歌は私が初めてグラウンドに足を運んだ日の記憶とどこか重なった。
すでにア式への入部を決めていた友人に誘われ、あまり深く考えずに見学に訪れたあの日、正直入部する気はほとんどなかった。マネージャーという役割には興味があったが、週3〜4日、しかも屋外で活動する部活など、超インドア派の私には想像もつかなかった。
しかし、ふらっと見学に来ただけの私に、マネージャーやトレーナー、選手の方々が気さくに話しかけにきてくださった。グラウンドにはその会話を遮るほど大きく熱量を帯びたコーチ陣の指示の声が響き、真剣にボールを追う選手の方々の姿が目に入るたびに、心は少しずつ揺らいでいった。自分がこれまで身を置いてきた環境とは全く異なるその光景を、純粋に「美しい」と感じた。自分がその一員になる姿は想像できなかったが、「ここに身を置いてみたい」という気持ちが芽生え始めていた。
気がつけば、その日以降に行く予定だった他のサークルや部活の新歓をすべてキャンセルしていた。そして流れるように入部し、まだまだ未熟ながらも、東京大学ア式蹴球部の一員であるという自覚が少しずつ芽生えてきた。
もちろん、慣れない環境で辛く感じたことは一度や二度ではない。特にインドア派の私は、夏の炎天下で滝のように汗をかきながら紫外線を浴びるのは、やはり苦手だ。それでも、「ア式があるから」とグラウンドに向かう自分がいることに、自分自身が一番驚いている。辞めたいと思う瞬間があっても、それと同じくらい楽しいことや嬉しいことがあり、私を留まらせてくれている。
まるで、由良の海峡を渡る舟人が波に運ばれ、思いがけない地へと辿り着くように。ア式との出会いは、私の大学生活の進路を大きく変えた。4年後、自分がどこに辿り着いているのかは見当もつかない。しかし、ア式に出会っていなかったら自分は今どのように過ごしていたのか、それもまた想像できない。それほどまでに、ア式はすでに私の生活の一部になっている。
今はまだ先輩方から学ぶことばかりで、部に貢献できる機会が少ないことが歯がゆいが、これから少しずつ、貢献できるよう努めていきたいと思う。
改めまして、マネージャーとして入部しました、1年の富松日南子(とみまつ ひなこ)です。これからどうぞよろしくお願いいたします。
コメント
コメントを投稿