Knock
大学生活では、その恐ろしくて魅力的な匣を一旦閉じて、開けないことにするつもりだった。 もうこれからは、その匣の中のエネルギーに耐えられるような自分じゃないと思ったから。 …匣ごと遠ざけておけばよかったのに、その匣を近くで眺めながら過ごすことを選んでしまった。 外から見ている分には魅力的だけど、その中には苦しさや辛さが入っている。 匣の中にいる人たちは、やっぱり苦しそうだった。 これでよかったんだ、この中に入るのはもう無理なんだ、と思うようにしていた。 でも、彼らは生き生きしているようにも見えた。 羨ましいようで、羨ましくないようで、匣の周りをぐるぐる歩き廻った。 そして、開けずに眺め続けるには、近すぎるところに立ってしまったのだと気付いた。 遠ざけるか開けるかの 2 択。 きっかけは偶然だったけど、開けることにした。 今は開けたばかり、中を恐る恐るのぞいたばかり。 上の方には、きらきらしたものもたくさん積もっているように見える。 深くまで入っていけばいくほど、そうじゃないのは分かっているつもり。 どれくらい深いのかはわからないし、恐ろしくもある。 それでも、もう一度内側に。 振り返るのは、次に匣を閉じる時でいい。 "only one" に人は弱い 女子部 2 年 大多和 愛