卒業文集

最初4年生feelingsをやると聞いて、なんだよ、卒業文集かよと思った。Feelingsは自分の書きたいことを書くのが気持ちいいのであって、こういう風に取り上げられるのは制約があって良くない。卒業文集という形をとられると、その形式に即した内容を書かなければならないからだ。

案の定同期の内容を見ると皆いいことを書いている。そればかりか、最近は後輩もとんでもない熱い文章を書いている。書きづらいことこの上ない。というわけで、熱さで対抗することはやめた。

4年間を思い返すと色んな出来事が思い出され、自分は人より波乱万丈な現役生活だったと感慨深くその話もしたいが、そんなのはア式150周年パーティーで現役相手に語ってやればいいのである。CBとして入部し大失敗し入って2か月で戦力外を食らったとか、合宿で皆がつらいラントレをしている間に、なぜか俺は海までサイクリングをしていたとか、社会人リーガー時代の首位攻防戦東蹴倶楽部戦とか(今のLBが三部でやれているのは僕の殊勲弾のおかげである)、Iリーガー時代の惨敗の歴史とか、自分の選手としての未来に不安を覚え休部したとか、その2か月後なぜかリーグ開幕戦でスタメンだったとか、岩政さんへの愛とか、2部優勝、シーズン7得点6アシストだったとか。そんな苦労話、自慢話はこんなところで語るべき話ではない。

僕がこれから述べたいのは卒業文集定番の「将来について」である。僕の斜に構えたスタイルのfeelingsは一部で根強い人気を得ていたと聞くが、今回は卒業文集なので、申し訳ないが諦めてほしい。将来罪を犯したときに取り上げられて困るような内容は書きたくない。

僕の夢は金融を通じて日本の産業界の発展に貢献することである。そのためには、企業はより積極的に市場から資金調達をせねばならず……


というのは、建前で、本当の夢は、「容姿、頭脳とも優れた女性と結婚し、より良い遺伝子をまだ見ぬ子供に与え、自分が社会的に成功していく様を見せながら、子供に良い教育を施し、今は数の少ない井小路家の発展に目を細めながら死ぬこと」である。

この夢を見て、浅いと思った人はおろかである。より良い遺伝子を子供に残し、自分の種を守ること、これこそが人間に与えられたより本能的な使命なのである。

そもそもこの夢、かなえることはこの上なく難しい。容姿、頭脳とも優れた女性と出会うこと、そしてその女性を落とすこと。これには、雄としての能力、つまり、外見、頭脳、中身、トーク力、年収などの社会的成功力、などたくさんの能力が必要となる。要するに男として「向上」していかねばならないのである。

ではこの「向上」を目指すにあたって、どのようにア式での経験を生かすのか、これが重要だ。部活4年間、楽しかったねでは意味はない。ア式で得た経験をいかに将来に活かすのか。これが部活動の本質的な目的であろう。

男としての魅力を要素分解する。見た目、中身、トーク力、年収、社会的成功…これらの魅力をどうすれば向上できるのか、仮説を持って考える。そして仮説を試してフィードバックしてまた考えて…
岩政さんの大切な教え通りだろう。全部サッカーと一緒である。仮説を持って考えながら練習するんだ。どうすればトラップをきれいに止められるのか、どうすればクロスをうまくもらえるのか、どうすれば速く判断できるのか…

どうすれば意中の女性を落とせるのか。自分の武器はなんだ。外見か?学歴か?育ちか?相手のことを考え、そして自分の武器を生かしていかなくてはならない。
中沖さんの大切な教え通りだろう。チームのことを考え、自分の武器を生かす。その経験はきっと役に立つはずだ。

翻って見れば、サッカーの「向上」、チームへの「貢献」ばかり考え続けた4年間は決して無駄ではなかった。あらゆる物事の「向上」のプロセスは共通すると思われるし、チームが自分に何を求めているか考えることは、この先会社で働くにしても、女心を理解するにしても大事なことだ。

この4年間の経験は僕の男としての魅力をあげる土台作りとなったことは間違いない。あとは、この汗のにおいで充満した男くさい部室から旅立ち、実践するのみである。



4年間関わらせていただいた全ての方に感謝いたします。
4年 FW 井小路菖

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