ブレイクスルー

気づけばもう3年生になってしまった。入部してからの2年間はあっという間だったとも言えるし、長かったなとも思う。

そんな2年間で自分が成長できたか。胸を張って「はい」とは言えない。

有難いことに、1年生の早くからAチームでプレーさせてもらって、後期には少し試合に絡むことが出来た。スタメンとして出場できたのは先輩が負傷離脱していた2試合のみで、基本はセカンドだったが、悲観はしていなかった。


そして2年生になり、チームを少しでも引っ張るつもりで新シーズンに臨んだ。しかし小さな怪我を重ね、プレシーズンは全くプレーできなかった。遼さんの下で急速に成長していくチームや仲間を見ながら、心の中で焦りがどんどん膨らんでいく。ようやく復帰できたのはリーグ戦開幕週だった。復帰すればこの焦りもどうにかなるだろうと思ったが、むしろその逆、上手くいかないことの連続でその気持ちは更に大きくなった。「まあ復帰したてだし仕方ないだろう」くらいに思っていれば良かったものを、良くない癖で真正面から受け止めてしまった。過剰な焦燥感に苛まれていた僕は、あまり調子は戻っていないのに、「試合に出なきゃ」と過度に意識するようになった。そして試合に出ることへの"近道"として僕が心掛けたのがミスをしないことだった。これがいけなかったと思う。酷く後悔している。なんやかんやで前期の後半は試合に出られるようになったが、ミスへの恐怖に支配されながら、まさに騙し騙しプレーしていた。いくつか点は取れたが、センターバックとして求められるプレーがこなせていたとは言えなくて、素直に喜べなかった。
ミスを恐れる姿勢は癖になった。悪い癖ほど簡単につく。ミスへの恐れが生み出すのは、ミスだ。分かっていてもどんどん怖くなった。通せるパスのレンジも、その精度も、見る見るうちに落ちていった。
中断期間を迎えてもそれは変わらず。そんな状態ではいいプレーができるわけがなく、何より、成長できなかった。当たり前だ。積極的なミスを繰り返しそのフィードバックを受けて一つ一つ成功体験を積んでいくことでしか成長はできない。そんな当たり前のことにも気付かぬまま、1試合を、1回の練習を、1プレーを、無駄にする日々が続いた。迎えた京大戦、酷いプレーだった。必然だった。スタメンから落ち、いよいよ歯車は狂いきった。
そのまま後期に突入し、試合に出られぬまま、チームが勝ち点を積んでいくのをベンチから見ていた。そして昇格が懸かった帝京戦。終了間際にクローザーとして出場したが、笛が鳴ったとき心から歓喜することはできなかった。あの瞬間が一番悔しかったし虚しかった。ずっと目指してきた昇格の瞬間に、心から喜べないこと。胸を張ることが出来ないこと。輪の中にいながらどこか蚊帳の外のような気持ち。二度とあんな思いはしたくない。

そして3年になった自分は、相も変わらずセカンドに身を置いている。試合に出てもクローザーのまま。
次々と先輩方が卒部していく中で立場が変わらないということは、次々と仲間に追い抜かれているということ。停滞どころの騒ぎじゃない。
そこそこ自信に満ちていた1年の時の僕は、2年後のこんな現状を想像すらしていなかったと思う。



やっぱり昨シーズンの1年間は悔やんでも悔やみ切れない。

沈んで、沈んで、また沈んで。自分でどんどん首を絞めていることにも気付かず、やがて浮き上がれなくなった。
上手くいかない時、下を向いて沈むのが一番楽だ。痛いところから目を背けられるし、簡単に自分を守ることができるから。
でも本当は痛みと向き合って、傷付いて、無理矢理にでも顔を上げて前に進まなくてはいけない。こんな単純なことが分かっていなかったのか。或いは頭では分かっていながら、逃げていたのか。自覚も覚悟も責任も、何もかも足りていなかった。
チームと、色々な人に対して、申し訳ない。

そんな中でも、僕を気遣っていろいろな声を掛けてくれた先輩や同期がいたのが救いだった。掛けてくれた言葉は全部覚えているし、それが今になって生きていたりもする。本当に感謝している。それと同時に、ごめんなさい。

結局、自分の背中を押せるのは自分自身でしかない。周囲の人はきっかけやヒントを与えてくれるだけで、最終的にどうにかできるのは自分以外いない。
いくら客観的に遠かろうと叶えたい目標は近くにあると思い込まなきゃいけないし、それに辿り着くまでの小さな目標も自分で立てていかなきゃいけない。自分を小さな箱の中に閉じ込めてしまったら何を頑張ればいいのかわからなくなる。
突破口が見つからなければ見つからないほど、ネガティブな気持ちに支配されていくものだが、だからこそポジティブな気持ちを作り出していく必要がある。自分が自分を信じられなかったら、一向に事は良くならない。それがめちゃくちゃ難しいんだけど、それも努力なんだと思う。

そんなことは既に知っている人が大半だろう。でも僕はそれを理解するのに1年かかった。長過ぎだと思う。

まあ、後悔したところで意味は無い。下を向き続けて無駄にしてしまった昨シーズンはもう帰ってこないし、過去を省みて今を無駄にするのが、何より馬鹿馬鹿しい。

最近は、割と前を向けていると思う。下を向かず前を見据えて取り組めている。ミスを恐れなくなってきてるし、今すべきことも去年よりは見えている。
鍵はほんの少しのきっかけだと思う。それが分かったら苦労しないのだが、そんな簡単にはいかないだろう。自分で手繰り寄せるしかない。



木曜の練習で相手チームの振りをすること。セカンドで全然勝てないこと。スタメンのアップをベンチで見てる時間。それに少しホッとしてる自分に気付いた時の不甲斐なさ。昇格を心から喜べない虚しさ。試合後の挨拶で観客の中にいる親と目が合った時の申し訳なさ。
正直もう沢山。

残すはあと1年半。あんまり時間が無い。
でも成長するしかない。
技術、認知、判断、決断力、サッカーIQ、柔軟性、身体操作、メンタル。素晴らしい環境のお陰で高校までは考えてこなかったような能力のベクトルまで見えてくるようになった。その全てに対して真摯に向き合って伸ばしていきたい。

結果は出ようが出まいが、なんて綺麗事は言えない。心から結果を出したいと思う。
でも酷かった1年のおかげで、結果は目指すものじゃなくて付随するものだってことにも気付けた。それもみんな知ってるか。

自分がこれまでサッカーに対して注いで来なかった努力を、惜しむことなく注ぎたい。
サッカーが好きだと、終わった時に胸を張って言い切りたい。

この先のことを思うと、正直怖いこととか不安なことだらけだ。でもやり切りたい。足掻いて足掻いて駄目だったら、それは仕方ないと割り切ろう。



という訳で、がんばります。



最後に、申し訳程度になるけど、
セカンドも育成も、目標を勝手に遠ざけて成すべきことを見失うことなく、顔も心も上を向いて取り組んでほしいと思います。

3年 大谷

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