ザコキャラになる勇気

馬屋原翔(1年/MF/千葉高校)


春から短いながらも大学生としての生活を送ってきて、常々感じていることがある。

 

なぜ自分は大学に通っているのだろう、ということである。まだ見つけられていない夢を見つけられるように自分から教養を身につけ関心分野を探っていこうという気概は早くも薄れてしまったし、講義中に睡魔が襲ってくることも増えた。

 

僕には妹がいて、大学に通っている理由について考えるようになったのは妹の影響である。正直に言って、妹はとてつもなくバカである。高校を卒業できるのか、将来は果たして大丈夫なのか、など割と真剣に心配になってしまうくらいに。

 

ただ、そんな大バカな妹にどうしても敵わないと思うことが一つある。妹はすでに夢を見つけていて、それに向かって走り出しているということだ。明確な夢が決まっていないから周りの多くの人がしているようにとりあえず大学に通っている僕とは違って、妹は夢を叶えるべく専門学校に入ろうと着々と準備を進めている。自分の方が頭がいいということを仮に認めたとしても、人間としては完全に負けているのである。将来が大丈夫でないのは僕の方なのである。

 

ここまでの内容に如実に表されているかもしれないが、僕は何かと一人で考えることが多いタチの人間であり、自己分析をすることが多い。そんな中で気がついたのは、僕を知っている人にとっては意外かもしれないが、僕は中身がアツい人間だということである。

 

好きな曲は何かと聞かれれば、流行りの曲ではなく絶対に『栄光の架橋』(ゆず)などの自分を鼓舞するような歌を答えるし、難化したと言われた今年の東大入試の一日目の帰りの電車内では、二日目への気持ちを奮い立たせるために『勝って泣こうゼッ!』(T-Pistonz+KMC)を聞いたりもした。

 

このような自己分析を日々繰り返しているわけだが、サッカーだけには全力で取り組めていると思う。まだまだ遠くはあるけれども、いつかリーグ戦に出場してチームに貢献するという目標だけはブラさずに持っていたいと思う。

 

前置きが長くなってしまったが、ここでどうして僕が大学に入ってまでサッカーをしているのかについて話したい。実際、高校時代のチームメイトでサッカー部に入ってサッカーを続けている人はほぼいない。

 

僕は、小学校入学前に兄の影響でサッカーを始めた。

 

小学校時代、僕は学校の友達とやる休み時間のサッカーが大好きで、逆に所属していたクラブチームの一員として週末にやる競技としてのサッカーは嫌いだった。土日なんて来なければいいのに、そう毎週思っていた。

 

だから、中学生になって、自分と同じ学校の仲間たちとチームになる部活動はとても魅力的に感じられた。部活が休みの日には必ず公園にボールを蹴りに行っていたし、この時期はサッカーを純粋に楽しんでいた。

 

高校に入っても、部活動としてのサッカーを続けた。しかし、学年が上がるにつれてサッカーだけに注いできていた情熱を勉強にも注ぐようになった。時に勉強の方に重点をおくこともあったし、中学生の頃と比べると純粋な楽しさというよりも、息抜きという印象が強かったかもしれない。

 

こういう背景があって、大学でも部活動としてのサッカーを続けるか本当に迷った。大学では選択肢が今までよりも格段に多いこともあり、サークルで趣味としてサッカーをすることも考えたし、他の競技に挑戦してみようともした。

 

しかし、それらの体験に行ってみた結果、何となくしっくりこなかった。結局自分には部活としてのサッカーが向いているのだろう、と思って東大ア式蹴球部の体験練習に足を運んだ。成り行きでこのまま何にも邪魔されることなく入部を決めたのだろうと思う方がいるだろう。自分もこの時は相当のことがない限り入部することになると思っていた。

 

ところが、相当なことが起こってしまった。体験練習に参加していた周りのみんなが自分とはかけ離れて上手かったのである。決して強くはないチームに今まで所属し、公式戦への出場機会にも恵まれて生きてきた自分にとって、もし入部したら公式戦に出られないかもしれない、下手であるから肩身の狭い思いをしていかなければならないかもしれない、という不安は入部の意志を揺るがすほどに影響力を持っていた。やっぱり部活はキツイかな、と諦めたくもなった。

 

ではなぜこの部に入ろうと決意したのか。バシッと言い切ることはできないが、弱い自分になりたくないから、というのが最も近い感覚のように思われる。

 

再び自己分析の話になってしまうが、僕は楽な方向に流されてしまうのを耐え難く感じ、少しでもたくましくなりたいと思う性格を持っている。最悪辛くなったらやめればいい、そんな気持ちを持ちながら入部式に向かったことを覚えている。

 

そんな迷いがあったにもかかわらず、今となっては毎日の練習で少しでも上手くなりたいという気持ちがとても強くなっている。ザコキャラになる勇気を持ってくれたあの時の僕にはとても感謝している。結局のところ、僕という人間は、このような環境下でたくさん成長できる人間なのだ。

 

自分のアツさはこれまで受験勉強に向いたり、恋愛に向いたりしてきたが、今は夢探しとサッカーの二つに向いている。これらは自分にとってとても大切なものだと思うので、一生懸命に向かい合っていきたい。

 

最後に、好きな名言に重ね合わせながらサッカーを含めたこれからの自分の決意表明をして締めくくりたいと思う。

 

下のようなアツい心持ちでこれからも頑張ります。読んでいただきありがとうございました。

 

 

努力すれば報われる?そうじゃないだろ。報われるまで努力するんだ。           (リオネル・メッシ)

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