来たれ我に黎明

鹿島田聡(4年/FW/暁星高校)

「モチベーションは考え方」


これは高校のサッカー部のトレーナーの言葉だ。
たしか高3の何かのテスト期間中の練習後に言っていた。その日の練習は、1分6本だけの練習(=キツい走りだけの練習)だった。
この言葉の意味は、モチベーション/やる気というのは、考え方次第で、どうにでもなる、という意味である。そして、そのトレーナーは、「キツイけど、これを乗り越えれば、試合でも相手より走れる。そして勝てる。」という趣旨のことを言っていた。


走りだけの練習の是非や、終わりよければ全てよし的な考え方の是非は置いといて、この言葉を聞いたとき、自分は「なるほど」と。かなり納得した。
この考え方は、今後の人生でもかなり使えるなと思った。
そして実際、その後のキツイ練習や受験勉強などでも有効活用することができた。例えば、成績が上がらなくても、「受験当日に間に合えばいい」と自分に言い聞かせ、過度にネガティブになることを回避し、モチベーションを維持することができた。




話は変わるが、自分は、メンタルが弱い。
具体的には、気分の浮き沈みが激しい。良いことがあるとちゃんと調子に乗り、他方で、悪いことがあれば落ち込んで憂鬱になり全てが手につかなくなる。 
さらに、自分は心配性で、自意識過剰で、人目を気にし、自分に自信がないという性格も持ち合わせているので、特に悪いことがあった時の落ち込みっぷりに拍車がかかる。
この性格は非常に不便である。悪いことがあった時の落ち込みっぷりはもう本当に嫌だ。寝れないし、起きれないし、永久にそのことを考えてしまうし、日常生活に支障が出まくるし、勉強も手につかなくなる。もうだめだ、、立ち上がれない、、、と。


そんな自分を変えたくて、ふと周りを見ると、メンタルが強そうな人がちらほらいる。自分はそんな人たちを見て、よく疑問に思う。「なぜそんなに自信がみなぎっているのか」「なぜそんなに人目を気にせず堂々としてられるのか」「なぜあんなに悪いプレーしてもすぐに切り替えて平気でいられるのか」と。
自分はそんな人々が本当に羨ましい。勿論この人たちも色々考え、思い、悩み、生きているのかもしれないが、少なくとも彼らの振る舞いを見る限り、自分には無いものを持っており、羨ましい。自分も彼らのように、自分に自信を持ち、悪いことがあってもすぐに切り替えて別のことに取り組める人間になりたいと思った。
そして、そんな人間になろうとしてみた。

 
しかしそれは無理だった。
悪いことがあればどう頑張っても永久にそれを気にしてしまうし、考えないようにしようとしてももうその時点で考えてるし、逆にその悪いことに自分が向き合ってない気がして更なる自己嫌悪へと陥っていった。


そして、メンタルが強そうな人間になることが不可能であると知った自分が出した答えは、メンタルが強い人間になることを諦め、メンタルが弱い人間として生きていくことだ。

自分がメンタルが弱い人間であることを受け入れ、弱いなりに頑張って生きていくことにした。
またメンタルが強そうな人間になろうと頑張った過程で、自分は普通の人間であることを知った。というか再認識した。ここでいう「普通の人間」とは、何かを達成しようとする時に、頑張らないと、頑張り続けないと、それを達成することができない人間をいう。この世の中には、最初からうまく物事を進め、それを高いレベルで平然と継続し続けられるような、そんなふうに見える人間がいる。しかし、自分はそんなスーパーな人間ではなく、壁にぶつかり、悩み、苦しみ、うまくいっても自分に甘くなってそれを継続できずまた苦しむ。非常に当たり前のことだが、自分がそんな人間であることを再認識した。


そこで、それからは、メンタルが弱くても、苦しみすぎず、それでも現実から目を背けないように頑張り続ける方法を探していくことにした。
以下では、それらの方法を書いていく。備忘録的な感じで。


まず自分の中での代表的なものとして、冒頭に述べた、「モチベーションは考え方」という思考方法がある。この思考方法は、超万能である。過去現在未来におけるマイナスな出来事について、かなり自分の心へのダメージを軽減できる。また何かに挑戦する時に、やる気を出させてくれる。
具体的な思考方法は、その時の具体的状況に応じて多種多様であるが、心のダメージを軽減する方法の代表的なものとしては、自分を客観視することがある。マイナスな出来事が起こると、自分を追い込みすぎて、周りが何も見えなくなってしまうが、そんな時にあえて他の人と自分を比べたり、俯瞰して自分を見てみると、それほど落ち込んだり悩んだりする必要はないことが割とある。

またもう一つの方法としては、楽観的になることがある。これも客観視することと大差はないが、一回、悩みすぎるのをやめて、「そんな悩むこと?」「なんとかなるんじゃね?」と自分に聞いてみることだ。
これらは悩みすぎて、自分を見失っているときにかなり有効な手段である。
またもう一つよく使える考え方としては、「予想外のことが起きることを予想内にする」である。人間は、というか自分は、予想外のことが起こると、慌てて自分の力を発揮できないことがよくある。そこで、予想外のことが起こることを予想内にすることで、「ああ、今回はこんな変な出来事が起こるのね」とその予想外の出来事に影響されることなく、普段通りの力を発揮できるようにする。ただこの方法は、なかなか難しい。なぜなら、予想外のことが起こる時は大体、必死でそんな冷静に物事を考えにくくなっているからだ。現に最近、この考え方を忘れていた。これを機に、心のどこかにいつも留めておきたい。


次に使える方法としては、日頃から、冷静でいることだ。自分は気分の浮き沈みがかなり激しい。プラスな出来事があって調子に乗っている時にマイナスな出来事があれば猛スピードで気分が落ちていく。そこで、普段から冷静でいるようにして、気分の振れ幅をなくすことで、気分が落ちるスピードを抑え、落ち込みすぎないように事前にカバーすることができる。  
これらは主に考え方の部分から、過度に落ち込みすぎないようにする方法だが、物理的に(?)落ち込みすぎない方法もある。それは「没頭」である。
何かに没頭することは良い。なぜならそれに没頭している間は、ネガティブなことを考えなくて済むからだ。それは自分にとっては、勉強やFC東京やコナンとかなのだろう。ただ先に述べたように、思い悩んでいると、それを気にしすぎて、没頭すらできないという状況に陥ることもある。でもそんな時は一回割り切ってみることが大事だろう。割り切ることもそんな簡単ではないが、「今日はもうコナンの漫画を読む日にしよう」と具体的に心に決めてみると、結構ちゃんと没頭できたりする。
あともう一つの物理的に落ち込みすぎないようにする方法として、シンプルに音楽を聴く、という方法がある。こんなこと当たり前かもしれないが、自分は元々、全く音楽を聞かない人間だったので、たまに音楽を聴いてみると、意外と気分が楽になるからいいなって思う。


次に、落ち込んだ状況から、抜け出していく方法を一つ書いておこう。それは、「初心に帰る」である。この方法はまだ自分の中で確立した方法ではないのだが、有効な手段になる可能性がある。最近、自分は初心を忘れていた気がする。そして、もう一度、自分が本来やるべきこと、今までうまくいっていた時にやっていたことを思い出し、それを実践しようとしている。初心に帰る、初心を忘れない、というのは、以前から意識していたつもりだが、その時はおそらく「初心」をわかっていなかった。「初心」を忘れて初めて自分の「初心」がわかった気がする。
この方法が有効な手段となるかはこれからの自分次第なので、まあ自分に期待したい。


ここまで色々な方法を書いてきたが、これらは例示に過ぎず、思い出せば他にもいくらでも出てくる。全てを書くことは現実的ではないので、ここら辺でやめておこうと思う。ただ最後に、これだけは忘れたくないというものを、将来の自分のためにいくつか記しておく。
・準備する
・将来の自分のために今頑張る
・何も考えず身を置く


以上、メンタルが弱いなりにこの世界で生きていく方法を書いてきた。こう見ると、これだけ豊富な手段があれば、何かマイナスな出来事があっても、あらゆる手段を駆使することで、もはやどん底まで落ち込みすぎることは無いようにも思える。
しかし、意外とこれらの手段をうまく使うことは難しい。気分が落ち込んでいない時は、常に意識し続けることができるし、なんなら意識しなくてもうまくいく。ただ実際に落ち込む出来事が起こった時に、これらの方法をその時の具体的状況に応じて、使い分けられるかは難しい。なぜなら、そんな余裕ないからだ。「...という考え方をしよう!」なんて考える間もなく、落ち込んでいくからだ。そこで、これらの事態を回避するため、今回のfeelingsでは、これらのことを忘れないために書こうと思ったのである。


そして、これらの方法にはもう一つ落とし穴がある。それは、これらの方法を使いすぎると、いつのまにか現実から目を背けていることになっている可能性があることだ。最初の方に述べたように、自分は、最初から何でもできるスーパーな人間ではなく、何かを達成するためには、達成に値するほど頑張らないといけない。そしてその過程では、必ず自分に向き合い、試行錯誤しなければならない時がある。にもかかわらず、現実から目を背け続ければ、当然、目標は達成できないだろう。といっても、落ち込むのもそれはそれで嫌だ。では、どうすべきか。
それは結局のところ、「バランス」なのだと思う。マイナスな出来事が起こった時に、成長の過程であると自分に言い聞かせて、現実に向き合い、反省、修正する。でも落ち込みすぎると、諸々に影響が出過ぎるから、上記手段を使って、落ち込みすぎないようにする。この「バランス」は自分でもまだ何が正解なのか、そもそも「バランス」をとること自体、正しいことなのかすらわかっていない。しかし、メンタルが弱い自分が、落ち込みすぎずに成長していくために、最も適した方法なのではないかと思う。


以上が、メンタルが弱い自分が、弱いなりにこの世を生きていく方法である。おそらくこれらの方法には今後、様々な手段が追加されるだろうし、そもそもこれらが間違いであり根本的に変更する必要性が出てくるかもしれない。ただ、そんなことが起きるのも、想定内にして、生きていこうと思う。




最後に、最近の自分のサッカー事情を少し書いておこう。
今シーズン、公式戦は5試合あった(4/21現在)。そして、今のところ全試合に出場している。しかし、チームの力に慣れていない自覚はあるし、このままではヤバいことは自分でもわかっている。最近、FWで継続的にプレーするようになり、当初よりもできることは増え、成長していると思うが、到底満足できるレベルではなく、もっと成長しなければならないと思う。そして、まだまだ自分は成長できると思う。



もう引退まで6ヶ月を切った。引退までの期間、不安が僕を占め、時々ダメになることもあるだろう。しかも、自分が今やっていることが、報われるかなんて分からない。それでも、とりあえずまだ僕は折れず、明日も頑張ろうと思う。

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