自分次第

中山凜(4年/テクニカルスタッフ/静岡高校)



遠藤選手が, リバプールの12月最優秀選手に選ばれた。なぜここまでの活躍を見せているのか…というのは恥ずかしながら私にはよく分からないのだが, 試合を見ていてふとすごいなと思ったシーンがある。それは遠藤選手がチームメイトに対して必死に指示を出しているシーンだった。その姿からは, なんというか「俺に懸かっている感」が伝わってきた。自分がチームを勝たせるんだという気迫が感じられて, かっこいいなと思った。

 

同じような感情を, ア式で活動する中でも抱くことがあった。もちろん試合中の選手を見てそう思うこともあったし, 意外とfeelingsから伝わってくることも多かった。feelingsを書くのは正直あまり好きではなかったし苦手だったが, 他の人が書いたfeelingsを読むのは結構好きだった。ア式のみんながそれぞれ持っているサッカーへの熱量やア式への思いが感じられて, 読むたびに自分も頑張ろうと思った。中には辛い思いや苦しい経験について赤裸々に書いているものもあり, それでもサッカーを・ア式を続けている選手やスタッフのことを素直に凄いなと思い尊敬していた。

 

一方で, そんな彼ら / 彼女らのfeelingsを読んで「みんなこんなに一生懸命やっているけど, 自分はこのままでいいのだろうか?本当に選手たちの役に立てているだろうか?」などと, 漠然とした不安を感じることも少なからずあった。「頑張らなくては」と思うものの, 実際に何をどう頑張ればいいのかがよく分からず, とりあえず決められた作業をこなすだけになってしまったりもした。同じようなことを, テクニカルの先輩たちも考えたのかもしれないなと, 先輩たちの書いたfeelingsを読み返してみると思う。そしてもしかしたら, 今この文章を読んでくれているテクの後輩にも同じように悩んでいる(これから悩む)人がいるかもしれない。

 

なぜ私や先輩たちがこのような状態(=自分がチームに貢献できているのか分からない)になってしまったのか。個人によって様々な理由があるだろうが, ひとつの共通点として, 目的が抽象的すぎることがあるのではないかと思う。我々テクニカルスタッフの目的が「ア式の勝利に貢献する」ことであるのは間違いない。しかし, この目的をそのままテク個人の目的に据えてしまうと, 達成できたかどうかが不明瞭なため,「本当に役に立てているのかな…」という状態に陥る可能性がある。

 

この問題を回避するために, あの有名なルロイ修道士の言葉「困難は分割せよ」がヒントになるかもしれない(元はデカルトの言葉らしい)。つまり, 「ア式の勝利に貢献する」という大きな目的(を達成するために解決すべきピッチ上での色々な問題)を局面(プレス回避・ビルドアップ・崩し・ハイプレス・ミドルプレス・ブロック・セットプレー, など)やポジション(SB・CF / DFライン・右サイド, など)といった切り口で分解し, 小さくてもいいから具体的な目的を持ってみることをお勧めしたい。例えば, 「ビルドアップ時のSBのポジショニングを改善する」や「ハイプレス時のWGの寄せ方を改善する」などが考えられる(自チームの分析だけでなくスカウティングにもこの考え方は適用できる)。

 

分割した小さな目的を持ってその達成に向き合うことで, 試合を観るときのテーマが自然と決まったり, 自分が詳しい専門分野的なものができて周りに頼られたり色々いいことはあると思うが, やはり1番は選手・チームに対して本当に役に立つ活動ができることだと思う。これは個人的な意見だが, テクニカルスタッフはチーム全体を俯瞰して改善していくことよりも, もっと分析対象とする局面や選手を絞り込んで, 範囲は狭くとも確実に変化をもたらすことに注力していいと思っている。テクニカルとして入部してくれる人が増えてきた今だからこそ, 一人ひとりが生み出す変化を積み重ねることで大きなインパクトを出せるはずだ(ただし, サッカーを分解してそれぞれ改善すれば全体も良くなる, という単純な話でもないと思うので, その辺りの調整は監督やコーチと話し合ったり, テクの上級生が考えたりする必要はある)。

 

私が最もお世話になった先輩は卒部feelings(http://ashiki-feelings.blogspot.com/2023/02/blog-post.html)で, テクニカルスタッフとしての最高の思い出は選手から頼られたり感謝されたりしたシーンだというようなことを書いていた。私とその先輩は入部の経緯やチームへの関わり方など異なる部分も多かったが, 選手(と陵平さんとオカピ)からの信頼や感謝を感じた瞬間が最高の思い出だという点は全く同じである。そして選手からの信頼や感謝は, 試合後に屋上でテク同士感想を喋ったり, テク内の振り返りmtgでよかった点と改善点を挙げたりしているだけではなかなか得られない(私もやっていたし後悔している…)。まずは1人の選手の, 限られたシーンだけでいいから, 自分が中心人物となって確実に変化を起こすこと。その選手が上手くなれるか, ハイプレスの成功率が上がるか, 対戦相手のキーマンを抑えられるかは自分に懸かっているという意識を持って, あるいはそう思えるくらいに取り組むテーマを絞って, なんとかやり抜く。これを繰り返していくうちに, 選手・監督からの信頼やア式の勝利に少なからず貢献している感覚が得られるのだと思う。私もこのことを意識してから, 少しずつ選手に頼ってもらえるようになったし, 何よりも部活が楽しくなった。

 

ありがたいことに, 最近はア式テクニカルの存在をいろんな人に知っていただけて, 外部の方々と関わる機会も増えてきた。それに伴ってやることも増えていく中で, 任された仕事を(きちんと)遂行していくことでも間違いなくア式の役に立てるし, 充実した4年間を送れると思う。ただもし, 「もっとできることがあるはずだけど, 何をすればいいか分からない」という悩みがあったら, このfeelingsが助けになれるかもしれない。ア式蹴球部テクニカルスタッフであるあなたが, チーム内外で更なる存在感を発揮し活躍することを, 陰ながら応援しています。

 

 

最後になりますが, 多大なご支援をいただいたLB会の皆様, 陵平さん, 杉崎さん, 選手・スタッフのみんな, テクの先輩と後輩, それから同期の3人に感謝を述べたいと思います。ありがとうございました。

 

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