チャンスは必ず巡る

加藤彩花(女子部4年/DF)


男子部の同期の皆さんは、feelings担当の後輩の催促があって、卒部feelingsをなんとか書き上げたようだが、女子部は担当者が私のままだったので、卒部式直前まで先延ばしにしてしまった。流石にそろそろ書こうと思う。


ここで卒部feelingsによくある言い訳をしておくと、本当は2月に一度書き終えていたのだが、入部から時系列で振り返るパターンになってしまい、冗長になってしまったので、書き直すことにした。印象に残ってる試合とか、そういうのもつらつらと書いたけど、自分のためだけに残しておけばいいと思った。


ということで何を書くかだが、引退するにあたって最近考えていたことを書いておこうと思う。



私は引退しなくてもよかった。入学年度では4年生だから卒業だが、関東大学女子サッカーリーグCiEリーグの規定では、卒業後2年間は出場できるし、なんなら私は転学部で留年したので来年も大学にいる。後輩たちのことは大好きだし(もちろん残ってる先輩と同期も)、コーチたちにも恵まれてるし、サッカーするのは楽しい。引退するか決めてなかったから、後輩たちには引き止めてもらいもした。


だから私が引退することを決めて、後輩たちは少し失望したかもしれない。私が素敵な先輩かどうかの問題以前に、部員が多くないのに辞める理由なんて想像できなかったと思う。私は私で、最後の試合が終わって、今後の身の振り方をお風呂でずっと考えてたが、引退するもっともらしい理由はなかった。


正直、みんなに伝えた時は直感的に、自分は引退すべき人間だと思ったから引退を選んだ。このチームの中で私にできることはなくなったと思った。東大にはもっと部活に全力で取り組んでいる人は当然たくさんいて、自分もそうすべきだったのかもしれないが、自分の大学生活のバランスの中で、部活動には後悔のない水準で取り組んだと思っている。そして、チームのことも大体やってきた。入部して割とすぐに主務をやらせてもらったし、その後も「先輩」として1年間チームにいさせてもらった。だから、やり切った気持ちが大きくて、心の底から後悔しているようなことは何もなく、後輩に道を譲ろうと、そんな気持ちだった。



卒部feelingsとしてこの文章をアップすると、たまたまたどり着いた新入生に勘違いされて敬遠されてしまう危険性がある。だからここで弁解させていただきたいのだが、私の大学生活にとって、ア式女子以外の選択肢はなくて、もう一度東大に入り直すとしたら(19歳に戻れるなら)、再びア式女子に入部すると自信をもって言える。東大運動会女子部の中でも、部活環境は恵まれているし、早くから試合経験も積める。何よりサッカーは面白いし、ア式女子なら誰だって活躍できる。そして、伸び代があるほど楽しいと思う。私はただ、ア式女子の中で後輩も先輩もし終わったから、引退するだけなのである。


このチームは、たくさんの人に支えてもらっている。3人体制のコーチ陣は心強すぎるし、OBOG組織のLB会に面倒を見てもらっているし、一緒に練習する(というか入部する)文京LBレディースがいてくれる。でも、ア式女子だけで切り取ると危ういところがある。悪く言えばバッファがない。全員が主体性を持っていてくれないと、組織を保っていけない。ただ、私にとっては、それが自分の責任感につながっていて、裁量があって面白かった。

自分のミーティングでの発言がチームの決定に大きく影響を与える。だからこそお風呂でチームのことをたくさん考える。執行代、最高学年として自分と同期が作る雰囲気でチームの雰囲気がある程度決まる。そういったことを楽しいと思うかどうかは置いておいて、そのような立場を後輩たちに譲らなければならない時が来たと思っている。



この前、つくばフェスティバルに参加させてもらったら、初日で足が攣って使い物にならない私がいなくても、なんとか大丈夫になっていた(異様に高い自己肯定感と、後輩への過小評価が多分に含まれている)。なんとなく感じた安心は、勝手に責務から解き放たれた安心感もあるのだろうが、新しいチームが動き始めていることに対する喜びからだったと思う。このまま、今年度よりもいいチームを作ってほしい。


今考える理由としてはこんなものだ。部活動をする中で得られる、ありとあらゆるチャンスは全て私にも巡ってきた。



もちろん上手くできなかったことはたくさんある。都合のいいように、これまでの経験をポジティブに解釈する自分への戒めとして書き残しておくが、私は最高学年になった時にはセンターバックとしてディフェンスラインを揃えることもできていなかった。自分が相手の目の前に立った時にどうするのか言語化できていなかったし、チームとしてどこでボールを取るのかのイメージもついていなかった。それらがマシになったとしても、後輩に対して日々のサッカーに対する姿勢を示すとか、苦しい時に適切に手助けをするとか、そういうことも曖昧に済ましてしまった。


これらの場面で自分が成長するチャンスは確かにあった。ある程度は掴み、残りは全て過ぎ去ってしまった。これからチームに訪れるチャンスは、私が取るのではなく後輩たちが掴むべきだ。だからあとは、後輩たちに任せたい。



最後にこれまでのア式女子での経験全体を振り返る。1vs1で勝った時、インターセプトが決まった時、チャンスメイクできた時、2年前茨城大学戦でハーフラインからシュートを決めた時、1年前の最終節で文教大学に1-0で勝った時、このチームでしか経験できなかったであろう高揚を感じることができた。主務を終えた時の達成感も忘れられない(グラウンドの取り忘れがなくて本当に良かった)。そして最後の一年は苦しんだ。プレー面でリーダーシップを発揮することが求められた中で、結果を残せなかった。先輩として未熟だった。


就活をしていると、部活での経験は社会人としての人生の縮図なのではないかと感じる。社会に出たら、もう少しうまくやりたいと思う。これまでたくさんの伸び代を埋めてきたが、それでもまだまだ残っている。次に自分が何をしたいのか、どうなりたいのか改めて考えようと思う。



改めて、日頃支援してくださるLB会の皆様やこのチームを代々引き継いできた先輩方、そして一緒に部活動に取り組んだ先輩方・後輩たち、コーチたちと前監督、文京LBレディースの皆さん、そして唯一の同期に心から感謝申し上げます。本当にお世話になりました。このチームにいさせてもらって幸せでした。大人になってお金持ちになったらちゃんと会費を払うつもりでいるので、ひとまずは還元できることを探して積み上げていこうと思います。

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