M (プリプリじゃないよ)
今年の春、昔からの友人Mと大きな勝負をした。
どちらが先に大きなステップアップをできるか。
僕らには明確な基準が確かにあった。兎に角それはプレイヤーとして、いや1人の人間として大きな成長をできるもの。
夏までにお互いが成長しようと意気込んだ。
こうして始まった戦いだが、二人ともなかなか目に見えた行動を起こさない。
確かに自分を変える、周りを変えるというのは面倒くさいし、実際に大変な労力を要する。
その労力を想像しただけで逃げ出してしまう人も多いだろう。
頑張ってる自分をどこかで客観的に見てしまう。痛々しい、恥ずかしいと思ってしまう。
その恥ずかしさで辞めてしまう人もいるだろう。
いつも口だけの二人は現実をなめていた。そんな簡単に人間的成長など出来るわけがなかった。
進歩のない日々が続いた。
そんなある日、僕に絶好の機会が訪れた。リミットとしていた夏を目前とした日の事だった。
これを逃せばおそらく二度とチャンスはないだろう。自分を奮い立たせた。
結果は惨敗…最後の最後で恐れてしまった。素の自分を全く出せずにあっという間に終わってしまった。
自分を変えることがこわかった。他人からどう思われるかを気にしてしまった。
僕はその場から逃げ出してもう二度と試みることもなかった。
「まだ来年がある」自分にそう言い聞かせて戦いの場から立ち去った。
そのまま僕の部活は夏のオフ期間に入った。僕は部活の友達と旅行に出かけた。完全に現実を忘れ去ってしまいたかった。
Mもどうせ目の前の練習だけをこなし、なんの生産性のない日々を過ごしているのだろう。あいつはいつも口だけは偉そうなことを言い現実では行動を起こさない、そんなやつだ。
そう高を括っていた。
そんなときMから着信があった。
勝利宣言だった。
Mはとうとうやったのだ。僕が現実逃避をしている一方で彼は自分に真摯に向かい合い、自身の成長を常に考えていた。そしてやり遂げたのだ。
急に自分が恥ずかしくなった。何度も失敗を繰り返し、恥ずかしい姿を晒し、泥臭くも成功を掴み取った彼に比べてたった一度の失敗で逃げ出した自分がたまらなく恥ずかしかった。僕はこの石垣の地で何をやってるんだ。一刻も早く帰りたかった。
夏のオフが明けた。
Mと久しぶりに飯を食う約束をした。
正直Mに会いたくなかった。変わってしまった彼に会うのがこわかった。それは自分の惨めさを突きつけられるからなのか、敗北を認めることになるからなのか。
Mは冷ややかな目で僕を見るようになった。その目は「お前は一体何をしていたんだ?」と僕に問いかけているようだった。
昔よく2人で語った夢物語も彼とはもうできない。彼はもう上の舞台に立ってしまったのだ。
僕はMに追いつけないのだろうか。そんな不安が心をよぎった。
4ヶ月後
今も僕は彼に追いつけていない。だけど彼も一つ上のステージでまだ僕を待ってくれている。彼にもまだ上がある。二人の最終的なゴールはまだまだ先だ。
いつかMに並びたい。2人で同じピッチで戦えたらどんなに嬉しいか。
そして彼をいつの日か必ず追い抜く。そんな日を夢見てる。
ガッキーのドラマが始まりましたね。2話目から早速見逃しました。
3年 MF 田中豪
P.S. 靭帯って意外と簡単に切れる。。。
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