2016年12月22日木曜日

憧れ


2008-09シーズン、新しいバルサのサッカーは衝撃的だった。会話や挨拶でも交わすかのように短いパスを交換しながら、いとも簡単に相手の守備組織を破壊していく。こんな攻撃は見たことがなかった。それは美しくて、かっこよくて、なにより楽しそうで。僕は瞬く間にそのサッカーの魅力に取り憑かれてしまった。









この前、Jリーグのトライアウトが実施されたという記事を見た。

名古屋のユースで10番付けてたあいつ、札幌で代表にも選ばれてたあのCBに一個上の10番だったやつ、エスパで代表の一個下のFW。ユース時代は相手チームにいるとチーム内で噂になったような同年代のトップ選手達の名前がメンバーリストには何人も載っていた。プロの世界の厳しさを見せつけられる。思わずため息が漏れた。









ここ数年で一番退屈なクラシコだ。少なくとも60分までは間違いなくそうだった。繋げないバルサ、精彩を欠くブスケツ、孤立するメッシ、哲学を持たない指揮官。憧れのチームがそのスタイルを自分たちから捨ててしまったのが寂しかった。サッカーを少しだけ嫌いになりそうだった。









あの8番が途中から入ってきた。圧巻だった。彼がボールに触るたびにバルサがバルサらしくなっていく。1人入っただけでこんなにも違うのか。メッシにもスアレスにもできなかった仕事を、その男は淡々とこなす。サッカーの醍醐味をその体に詰め込んだみたいなプレーだ。









サッカーを始めてからもう15年、やりたいサッカーをするチームには出会えなかったし、ユースでは自分のレベルの低さを痛感し、一度は夢を諦めさえした。理想のサッカー人生とはもう掛け離れたものになってしまった。

もう一度サッカーにかけようと思うまでにかかった2年という時間は思ったよりも重い足枷になっている。自分がここからどこまで這い上がれるのか、焦りを感じてはいるものの思ったような成果は出ない。









結局、バルサは終了間際にレアルに追いつかれて1-1。後半は内容で圧倒しながらも、勝ちきることはできなかったのだけど、そんなの全然気にならないくらい素晴らしい30分間だった。かつては色白でひょろひょろで、いかにも頼りない顔をしていた小さな天才は、いつの間にか32歳になり、今ではバルセロナの象徴としてキャプテンマークを巻いてピッチに立っている。顔つきは別人のように頼もしくなったが、プレーはあの頃から少しも変わらない輝きで僕を魅了してくれる。









だから、もう少しだけ頑張ってみよう。どこまでこの夢を追いかけられるかはわからないけど、もう少し。あんな風にプレーしてみたい、そう思わせてくれたあの小さな背番号8が、変わらずに僕に夢をみせてくれる限りは。








2年 山口遼

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