2017年12月4日月曜日

2%

「まあまた練習来てよ。ちなみに今ア式に入る確率何%?」
「2%です」



新歓期、後輩の付き添いという名目でア式の練習に参加したものの入部する気は無く、先輩からの質問に僕はなんとも失礼な返答をした。
その後も練習や新歓コンパに参加したが結局ア式には入部せず、サークルに入った。



サークルを辞め、8月に途中入部してから「なんで入部しようと思ったの?」とか、「入部の決め手は?」とか聞かれることは多かったが、「なんで入部しなかったの?」と聞かれることはほとんど無かった。そりゃまあ問い質すような感じになるし聞き辛いだろう。
今回は自分が新歓期に「ア式に入部しない」と決断した経緯を振り返ろうと思う。



ア式に限らず運動会への入部をためらう理由として、勉強や遊び、バイトに費やせる時間が減ることや練習がキツいこと、真剣さ故に純粋に競技を楽しめなくなることが挙げられる。だがそんなことは僕にとってどうでもよかった。

僕がア式に入部しなかった理由は、自信が無かったから。

俺のレベルでは通用しないんじゃないのか?
練習を続けて上手くなれるのか?
失敗ばかりでも腐らずにいられるのか?

そんなことを考えていた。



高校時代の自分は決して優れた選手では無かった。ずば抜けた身体能力や反射神経を持っている訳でもなく、一対一が強い訳でもなく、キックを遠くまで飛ばせる訳でもない。練習や試合を重ねていく中で、自分の長所が何なのか、そもそも自分に長所があるのか分からなくなった。技術を伴っていない上にそんな状態で良いプレーができるはずもなく、特に高3の夏、最後の選手権前ではミスをして、自信をなくして、またミスをする、という悪循環に陥り、正面のシュートをキャッチするのも、ハイボールに飛び出すのも、ゴールキックを蹴るのも何もかもが怖かった。何をやっても上手く行く気がしなかった。そんな中で迎えた練習試合で、円陣を組む前にキャプテンから「石川、今日キック飛ばなかったら交代させるから」と言われた。正直、キツかった。自分が信頼されていないということもそうだが、何より自分が初歩的な技術不足でチームに迷惑をかけてしまっていることが悔しかった。だったら最初から代えてくれよ、そう言いかけて飲み込んだ。



自分なりに現状を打破しようと努力していたのだが、選手権が始まる前に怪我をしてしまった。普通に治していたのでは間に合わない。病院の先生やチームのトレーナーと相談し、リハビリと筋トレを続けつつ最後はテーピングをして誤魔化しつつプレーする、ということにしたが、僕の心に陰りが生まれ始めた。元々ろくなプレーができていない上に怪我で万全の状態ではないのだから、仮に無理矢理復帰しても試合には出られないんじゃないのか?だったら今やっている筋トレに意味はあるのか?炎天下に慣れない松葉杖を使って普段の倍以上の時間をかけてグラウンドに行く意味はあるのか?勉強時間を削って病院に通う意味はあるのか?僕は腐りかけていた。そんな考えを振り切り、他のチームメイトが全力で練習しているのに自分だけ手を抜く訳にはいかない、何より中高6年間をサッカーに捧げてきたのに最後まで頑張らなかったら絶対に一生後悔する、そう思ってトレーニングに取り組んだ。



結局チームは地区大会の2回戦で敗退してしまった。泣きじゃくる同期や後輩を見て自分もめちゃくちゃ悔しく感じたし全身全霊をかけて戦ったチームへの感謝の気持ちでいっぱいだったが、どこか冷めている自分もいた。引退ってこんなものなのか、試合に関わっていればもっと感動したのかな、とか考えていた。沈んだ空気のチームメイトを横目に差し入れのオレンジジュースを飲みきり、ゴミを捨てようとグラウンドと部室を繋ぐ散歩道と呼ばれる細い道に入った。すると、皆から離れ声が聞こえなくなった途端、目に涙が溢れた。泣くまいと上を見上げるがみるみる内に涙が溜まり、空が滲む。気が付けば僕は誰もいない散歩道で声を上げて泣いていた。
色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざりあっていたから、なんで泣いたのかはよく分からない。ただ一つ言えるのは、悔しかった。全力で努力して、それでも届かなかったことが悔しくてたまらなかった。涙が止まると、何か燃え尽きたような感覚に襲われた。ああ、ここまでやってもダメだったのか。多分、また同じ様な状況に陥ったらもう頑張ることはできないだろう。きっと腐ってしまう。熱意が枯れてしまった。俺のサッカー人生はここでおしまいなんだな…



こうして僕はサッカーへの自信と熱意を失なった。



ア式に入ってから3ヶ月が経つが、僕が抱えている問題は解決した訳ではない。良いプレーができることなんてほとんど無いし、むしろ上手くいかないことの方が多い。このまま練習を続けて上手くなれるのかも分からない。

だけど、もう一度だけ挑戦してみたい。もし高いレベルのプレーができるようになったら、もっとサッカーを楽しむことができるであろうから。そして、成長した自分がチームに勝利をもたらすことができれば、今まで自分が見たことの無い最高の景色を見ることができるであろうから。僕はもう腐ったりしない。ア式が僕のサッカー人生の本当の最後だ。遅れて入った分を取り戻し、一片の悔いも残さず、最高の経験をするために、僕は毎日全力で練習に取り組む。



僕を快く送り出して下さったサークルの先輩方、未だに仲良くしてくれるサークルの友達、そして、僕を暖かく受け入れてくれたア式の皆には心から感謝しています。必ずピッチの上で恩返しします。



ア式100%
1年 石川 旦

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