君は僕のひかり

「A10662」の受験番号がどこを探しても見つからなかった。自分はまた落ちたのだと悟った瞬間、目の前が暗くなった。目眩がした。隣にいた妹が泣いていた。僕の合格を誰よりも待ち望んでいたばあちゃんは、絶句しているのか声が聞こえなかった。

二浪することが決まった瞬間から、僕はずっと暗闇の中にいた。自分の将来が何も見えなかった。自分はこのまま一生受験勉強を続けることになるのだ、と本気で思っていた。先が見えなかった。辛かった。

それでも僕は何とか受験勉強を続けることができた。二浪の真っ暗闇、人生のどん底においてもだ。それはなぜか。遥か遠くから、僕に向けて一筋の小さなひかりが射し込んでいたからだ。3度目の東大受験の日を迎えるまで、それは絶えず遠くで光り続けていた。そのひかりが君だった。

僕と君は、二浪の間は会わないという約束をした。僕が勉強に集中できるようにするためだ。僕は新潟から東京の予備校に出て寮に入った。2人の間はすっかり離れてしまった。それでも、君はいつも僕の心の中にいて、長く陰鬱な浪人生活の途上で何度も挫けそうになる僕を励ましてくれた。

僕の人生を思い返してみれば、僕はいつも君と一緒だった。保育園の時、君と家の前の道路で遊んだのを覚えてる。小学校の時、君を巡ってクラスのガキ大将と何度も喧嘩をしたのを覚えてる。中学の時、初めて君に本気で向き合ったのを覚えてる。高校の時、君に沢山の喜びと悲しみを味わわせてもらったのを覚えてる。一浪の時、ときどき君と遊ぶのが何よりの楽しみだったのを覚えてる。

そんな君と離れ離れになるのは本当に嫌だった。それでも、東大に合格すればまた会えると信じて勉強に専念した。そして君は、そんな僕を信じて遠くで待ち続けてくれていたのだ。合格が分かった瞬間、僕の目に今まで見たこともない眩しいひかりが飛び込んで来た。




入学の手続きや履修登録などの面倒な手続きがやっと片付いた4月半ばから今日に至るまで、僕は毎日のように君と仲を深め合っている。長いブランクがあったから最初は全然上手く行かなかったけど、段々と打ち解けてきたように最近は感じる。でも、もっと仲良くなれる。まだまだこれからだ。

君とまた会えて僕は本当に嬉しい。君と過ごす日々はやはり刺激的だ。楽しくて仕方がない。君を通してまた新しい出会いが沢山あった。君のおかげで僕は本当に幸せだ。君には改めて感謝を述べなければならない。


「サッカーよ、ありがとう。君は僕のひかり」


元じゃなくて玄です
一年 立川玄

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