10番

「背番号なんて関係ない。」
とよく言われるけど、その一方でサッカーにおいて10という番号はやはり特別だ。

いつからか自然と自分も、おそらく周りも、今年は自分がその番号を付けると思っていた。
10
番として挑んだ最後の1年を振り返りたいと思います。


「やっとだ、やっと戻れる。」
去年のリーグ優勝が決まった時、喜びの中でそう思っていたことを今でも覚えている。
1年の時に全く通用しなかった1部という舞台で
成長した自分が、チームが
どれだけ戦えるのか、勝利できるのか、楽しめるのかと考えると胸が高鳴った。

しかし新チームが始まってしばらく
リーグ戦を楽しみに思う感情とは裏腹にチームとして質は一向に上がらなかった。
とことん回らないロンド、同じことを何度も注意される前進、現役を引退したコーチ陣が活躍してしまうゲーム。挙げだしたらキリがないほどに酷い練習を重ねて不安ばかりが募った。

そんな中で自分に何ができるか、どうありたいかと考えた結果、まずはとにかく自分がいいプレーをできるようになることを目標にした。
いろんな大学の10番がブログで書いているようにチームを勝たせることが役割となる中で、前の10番もその前の10番もそうだったように常に違いを生める選手になりたかった。
プレーで語れる選手になりたかった。

相手のプレスを冷静に捌けるような、
チャレンジングなプレーをさらっとできちゃうような、
ピンチの芽を摘めるような、
味方のミスを当然のようにカバーできるような、
疲弊した時間帯に全力でスプリントができるような、
苦しい時間帯に声を張り上げられるような、
最後に体を張れるような、
ゴールでチームを救えるような、
仲間に勇気と希望を与えられるような、

チームを引っ張れる10番になりたかった。
背中が雄弁な人間でありたかった。


求められているほど周りに気を配れなかったことで迷惑をかけたであろうことは申し訳ない。ただそういう意識があったからか最後のオフシーズン、これまでで一番成長できたことは間違いない。
これまた幸いなことにチームも豪華なコーチ陣や献身的なスタッフ、チームを引っ張る中心選手のおかげでなんとか徐々に形にはなっていった。
とは言えまあ1部で戦うにあたって満足できるレベルには一切届いていなかったし、不安しかなかったが。

とにかくリーグ戦が始まった。そしてとにかく勝てなかった。
最初はまだ戦えていたと思う。全員が献身的なプレーも、積極的なチャレンジもできていた。
ただだんだんと負け癖がつき、精神的な弱さも顕現するようになった。
リーグ戦を通して加速度的に成長しなければいけない立場であることはわかっているのに、むしろ悪循環に陥っていた。
結局前期中は立て直すことができなかった。この時期のことをまあ思い返したくないけど、思い返すと後悔しかない。

全力でサポートしていたか、
全力で自陣へ帰っていたか、
こだわりを緩めていなかったか、
負けることに慣れていなかったか、
引き分けに満足していなかったか、
自分のプレーの出来にばかり目を向けていなかったか、
手段が目的化していなかったか、
伸び悩む仲間を見捨てなかったか、
苦手な自己開示と言語化から逃げていなかったか、
いつかなんか勝てるようになると思っていなかったか、

考え出したらそれはもう止め処がない。せめて反面教師として役立ててほしいものだ。


思い返すと中断期間の合宿か、そこらへんになってようやく自分もチームも変わり始めた気がする。あの時やった瞑想が実は効果的だったのかもしれない。
自分たちの弱さと向き合い少しずつ前に進めるようになった。

そして迎えた後期リーグ、まあ勝てなかった。
前進できるようになったとはいえすでに他のチームとはかなりの差がついていた訳で、
ある意味当然都1部という厳しいリーグで結果を出すことはできなかった。
ただそれでも後期の間は自分たちが確実に成長しているということを実感できた。


最終節1週間前、4年対3年以下の紅白戦で4年チームが負けたとき、
当然イライラしたし悔しかったがそれと同時に全く別のことを考えていた。
なぜかそのタイミングでやっぱりこのチームが好きだと感じていた。

リーグ戦通してどんどん上手くなるやつ、どん底から這い上がってくるやつ、怪我してもチーム引っ張るやつ、色々いる同期も、
頼りない自分たちについてきて、越えていってくれた後輩たちも、
どんなに結果が出なくても全力で指導、応援、サポートしてくれたみんなも、
全員最高だ。
弱い人間が集まった弱いチームかもしれないけどこのチームが大好きだ。
もっとみんなと勝ちたかった。勝たせたかった。

情熱も悔しさも感謝も全て
あとは最終戦で語るのみ。


そして最後の國學戦、会心の出来だった。
チャレンジができた。弱さを隠せた。集中できた。勝つための行動がとれた。
自分たちの100%の力でやりたいことができた試合だった。
自分がチームを勝たせるなんてとんでもない。
チームメイト1人1人に引っ張られた。
感動した。

理想の10番は体現できなかったかもしれない。
ただそれでも最高の試合だった。楽しかった。

やっぱサッカーってこれだよなあ。
やっぱサッカーって最高だなあ。

人生で1番濃密な90分だったかもしれない。
ありがとう。



最後に現役の後輩に向けて

みんな本当にポテンシャルが高いと思う。技術もあるし、センスだっていいはず。
うまくいけば強いチームを作れることは間違いない。
ただこの1ヶ月ほどAのコーチとしてみんなを見て感じたことでパッと思い浮かぶのは正直ネガティヴなものばかりだ。

11つのプレーに、結果にこだわっているか、プライドを持っているか。緩んでいないか。無意識にできない理由を探していないか。みんなの実力を認めているからこそ物足りない。

新人戦の応援だってそう。出場している選手は自分たちが昨シーズンどれだけ酷い試合をしても声を枯らして応援してくれた仲間たち。それなのにみんなの歌や野次には本気で応援しようという気持ちがあまり感じられない。それどころかふざけたい、目立ちたいというしょうもない感情が先行しているように思える場面すらあった。一度省みて欲しい。

プレーでも応援でも他の何についてであっても、
楽しもうとする姿勢を批判するつもりは全くないし素晴らしいと思う。
でももっともっと高い次元で楽しむことができないか考えてみて欲しい。
そのために何が必要か、どのように振る舞うのか、どういう人間であるべきなのか。
1人1人がどう成長していくのか楽しみだ。一緒に頑張ろう。


最後の最後にトモに向けて、
とは言ったものの言うことなんて何もない。
来シーズン間違いなくリーグで一番上手いトモが見せてくれる
もっともっと大きい背中を、10を楽しみにしてるよ。



白藤優

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