続いていくストーリー
玉川戦の終了の笛が鳴った時、自然とピッチに倒れ込んだ。
「やっとだ」
昇格の喜びはもちろんあったが、安心感や解放感が大きかった。
達成感でいっぱいだった2シーズン前の昇格決定時とは違う感情
2年前よりみんな泣いていた気がする。
未だかつてないほどイレギュラーなシーズンを最終学年として戦ったこの1年を
改めて振り返りたい。
毎年4年生の存在はチームの核であり、自分たちが3年の時もそうだった。
後ろからチームを支える頼れる主将副将、中盤の要、ア式の心臓
彼らが抜け、毎年恒例のように新チームの練習はふわふわしていた。
「もう4年はいないんだ」「誰がチームを引っ張るんだ」「基準が低い」
またこの言葉、いつも通り
個人的には最終学年として迎えるシーズンには強い思いがあった。
初めて挑んだ1部の舞台、期待されていた中で怪我に不調に何もできなかった前期
後期も復調はしたもののチームに何か残せた訳ではなく敢え無く降格
本当に情けなかった、だからこそラストシーズンは全てを捧げるつもりでいた。
そう思っていただけにオフ前の練習の質の低さはフラストレーションが溜まったし
ミーティングの最後に何か言っても手応えがなかった。
赤木とかはこの頃から相当なモチベーションでやってたのを覚えているけど
こんな感じの日々が続いたまま、東京都トーナメントも敗退し長期オフを迎えた。
オフ前の練習に不満を感じていた選手は同期を筆頭に多かっただろうけど、自分を含めてその状況を変えられたわけではなかった。
頭も身体もリフレッシュして新年の練習はいい雰囲気でやりたい、なんて期待していた。
このオフの間、東京都選抜の交流戦や遠征に参加させてもらった。
ア式にいるだけでは感じられない刺激を肌で感じまくった。
他県の選抜との試合を通して、自分はやれると思えた。
JFLのチームとの試合を通して、自分はまだまだだと思えた。
1部リーグで戦った選手に言われた「東大はうまいけど怖くなかった」が悔しかった。
この経験で得たものを必ずア式に還元すると誓いオフ明けを迎えた。
驚くことにオフ明けからのチームの状態はかなり良かった。
俺が経験した3回の中でも、一番いいプレシーズン
きっとみんなオフ中に色々思うところを整理してやるべきことを明確にしたんだと思う。
意識の変化が行動の変化につながり、うまく言葉にできないけどいい雰囲気だった。
個人的にもかなりプレーの質が高く、周平と俺のサイドでなんでもできる気さえした。
このままリーグ戦に臨める、きっと最高のシーズンにできる、そう思っていた。
そんな矢先の活動停止
強制的にチームとしての流れが止まった。
自分たちだけでなく全ての人が経験した未曾有の事態
リーグ戦開幕の目処もたたず、自粛生活が続く。
この期間に感じていたことはチームの中でも人それぞれだと思うし、サッカーからあえて距離を取った選手もいたと思う。
自分もなんとか有意義にしようと必要以上にオンライン授業とったし、他にできることを色々探した。
でも結局、中心はいつもサッカー
全て捧げていたシーズンが止まり、また始まるかもわからない中でも考えることはサッカーのことばっかり
ペップの本読んで、DAZNでたくさん試合見て、弟とサッカーして
だからオンラインでもトレーニングが始まった時はすごく嬉しかったし、ZOOM越しでみるみんなも同じ気持ちに見えた。
ここからどんどんチームが動いていった。
再開交渉に尽力してくれる部員や関係者の方々がいて、感染対策への意識を徹底して、もう終わったと思いかけたラストシーズンがいろんな人のおかげでどんどん生き返って
活動が再開され、リーグ戦が開催されると決まった時は改めて感謝するとともに、必ず結果で恩返しするって思った。
活動再開後は毎練習楽しかった。
リーグ戦が始まった9月からは毎試合が楽しかった。
サッカーができるありがたみを全身で感じていた。
東工大との開幕戦が東京で開催されなくても、グラウンドがいい状態じゃなくても、アウェーが多くなっても、いろんな人の力で始まったこのシーズンが続いてくれれば良かった。
ただそれでも結果は求めないといけないし、その責任があった。
でもチームも個人もプレシーズンほどの手応えを感じることができていなかった。
2部だから勝てた試合もたくさんあったし、不完全燃焼感はみんなあったと思う。
雨の中亜細亜にはボコボコにされたし、思い描いていた2部を圧倒するア式、躍動する自分ではなかった。
ピッチ内におけるいい要素はもちろんたくさんあった。
積極的にプレーする1年生の3人、トップを紅白戦で倒すセカンド
色んな選手が成長して誰が出てもおかしくない状況だったし、実際相手に応じて起用を変更できる層の厚さにはなっていた。
特に赤木、雄太、石川、拓也の伸びは誰から見てもえぐかったと思う。
周平と和田は言うまでもなく
同期として相当な刺激がもらえた。
遼くんはこのチームを今まで見てきた中で一番いいチームと言ってくれていたし、自分たちの中にもその自信はあったと思う。
「絶対やれる、いいチームになれてる」
それでも大事なところで勝ちきれない。
一橋戦、上智戦、あと1勝で昇格のところでの敗戦が続いた。
先制点を取られることに慣れてしまっていた。
「次勝てば昇格」のプレッシャーに押しつぶされそうになった。
そして迎えた第13節の玉川戦
勝てば昇格が決まり、引き分け以下だとかなり厳しくなる大事な一戦
後半の終盤まで試合は動かず、何度もピンチを作られ精神的にキツイ状況
それでも泥臭く1点もぎとり試合終了
「やっとだ」
喜びというより解放感
嬉し涙というより安堵感からの涙だった。
結局最終節は亜細亜に及ばなかったけど、昇格という最低限の置き土産を残して自分のラストシーズンは終わった。
正直もっとやれた気持ちはみんなもあると思うけど、とりあえず結果が出て安心している。
個人的には3点しか取れなかったし、シーズン前ひっそりと立てた10ゴール10アシストの目標なんてかすりもしなかったけど、この未曾有のシーズンを最後まで完走できたことが一番良かった。
最終節、ずっと応援してくれていた家族にプレーを見せられたこともよかった。
改めて今シーズン、このようなイレギュラーな状況の中でサッカーをさせてくれたこと、そのために尽力していただいた全ての方に感謝いたします。
本当にありがとうございました。
さて振り返りも終わったし定番の後輩へのメッセージを
特にAチームの後輩とは色んな話をしてきたけど、サッカープレイヤーとしての伸び悩みを相談してくる子達が多かったように思う。
成長が感じられないとか、どこを伸ばせばいいのかわからないとか
自分も伸び悩みは感じたことがある。3年生の前期なんて急に何もうまくいかなくなったし、何がダメなのかもわからない時期もあった。
でも引退した今、この4年間でサッカーが上手くなったと自信を持って言える。
その過程の中で大事なこと、意識した方がいいと感じたことを3点残しておきたい。
どれもシンプルなので参考にしてほしい。
まずは自分のプレーを見ること。
ピッチ内で感じる問題点はピッチ内だけでは見えてこないことも多い。
だからしっかりと練習や試合の映像を見てほしい。
例えば、自分ではタッチの問題ばかり気にしていても、ビデオで俯瞰的に見るとポジショニングや認知の問題が浮かび上がることが多くあった。
この作業を徹底的にする選手がア式の中で飛躍的に伸びる選手になる傾向があると思う。
赤木とか雄太とか拓也はそうだし、隼さんや佐俣さんもよくテク部屋にいた。
身体能力や個人技で他校に劣りがちな東大の選手たちが傑出するとしたら、認知の部分になると思う。ア式のサッカー上、ここを磨くのが活躍の近道にもなるし、そのためには映像で認識した課題をピッチ内でトライすることに限る。
ア式には優秀なテクニカルスタッフがいて、ほとんどの練習や試合の映像があるんだから、妥協せずしっかりと頑張ってほしい。
次に周りに聞くこと。
みんな真面目だからこそ、プレーの中で感じたモヤモヤを一人で解決しようとしがちな気がしてる。茶谷とか特にね
吉平はいつもそれで悪い方向に向かってたよね
悩んだ時にベクトルを自分に向けすぎてもよくない。
自分は悩んだ時は帰り道で優や拓也に聞いてもらったり、監督である遼さんにもよく相談した。
シュートの時後ろ重心になることを何気なく田所に相談したら、動画付きの詳細な解説をくれて、4年になってからさらにシュートの威力が高まったこともあった。
無我夢中で頑張るうちに自然と成長している1.2年生時代と比べて、3.4年は成長が難しかったと感じるけど、周りに聞くことでそのヒントがもらえることもあった。
ぜひ実践してほしい。
最後に、外の世界に視野を向けること。
ア式でずっとサッカーをしていると、無意識のうちにア式という箱での基準が自分の中で標準なものとして設定されてしまう。
ア式の基準の中では問題ないプレス強度、パススピード、プレスバック
それらはア式以外では通用しないこともある。
自分にとって、上に書いたヴィアティン三重との試合は、自分の中の基準を思い直させてくれるきっかけになった。
自然とできていた「これくらいやればいいや」じゃダメなことに気づかせてくれた。
どうしても人は周りの環境に影響を受けてしまうから、自分から積極的にア式以外の世界にまで視野を広げる経験をしてほしい。
選考会に参加してみてもいいし、他大の試合を見てみてもいい、伊地知みたいにサッカー短期留学してもいいと思う。
以上の3点が自分の経験から後輩に意識してほしいことです。
少し堅苦しいアドバイスみたいになったけど、結局はア式でのサッカーを楽しんでほしいだけ。少し悩んだ時に参考にしてね。 来シーズン応援しています。
この4年間、サッカーが本当に楽しかった。
それはア式という環境があったからこそでした。
岩政さんに言われた「ともはもっと王様になれ」という言葉、ずっと大切に持ち続けました。
戸田さんに「ファンだよ」と言われた時全てが肯定された気持ちになりました。
遼さん
サッカーをさらに楽しいと思わせてくれてありがとうございました。
遼さんに出会えて間違いなくサッカーがもっと上手くなれました。
今まで学生スタッフがいる環境でプレーしたことがありませんでした。
多くの人に応援歌を歌ってもらうのも初めてでした。
自分は支えられている、自分以外の想いも背負って勝ちたいとあんなに思いながらプレーすることも初めてでした。
ありがとう。
この部で10番を背負えて幸せでした。
一番好きな番号
憲介さん、中沖さん、優とつながってきたこの番号を最後のシーズンにつけてプレーできたことは自分の誇りです。
たくさんの方に支えられてサッカープレイヤーとして成長できました。
ア式での活動を通して関わってくれた、支えてくれた全ての方のおかげです。
今までお世話になりました。
こんなに好きなスポーツに出会えてよかった。
5歳のころ両親に連れてってもらったのがサッカー教室でよかった。
ア式でのサッカーは終わるけど、自分のサッカー人生は一生続きます。
中村知朗
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