確かなこと

杉山弘樹(2年/MF/駒場東邦高校)


4/21

ア式に入ろうと思う

 

部屋の隅に置いてあったノートのとあるページにこう書いてあった。去年の自分によると、僕はこの日に入部を決めたらしい。なんでこんなことが記されてあったのかというと、受験生時代の習慣によるものなのかもしれない。

 

 

現役時の受験には失敗し、ひどく落ち込みながらも、悔しさから来年こそはぶっちぎって受かろうと意気込み、もう一年の受験勉強が始まった。勉強する中で、何となく理解していたところを原理から深く理解できたときや知識が頭の中で体系化されていく感覚を得たときには楽しさを感じた。しかし、入試が近づいてくると不安は大きくなっていった。一度解けた問題も入試の極限状態では解けなくなるかもしれない、模試では偶々解ける問題が出ただけで本番では解けない問題が出るかもしれない。浪人した以上、絶対に落ちることはできないというプレッシャーも感じていた。そんなネガティブなイメージで頭がいっぱいになり、何度も不安に襲われた。

 

そんなとき、自分の気持ちを紙に書いて吐き出すようにした。自分が何を恐れているのか見えるように。そして、今までの自分を肯定し、これからの自分を鼓舞する言葉を書いた。特に、2月に入ってからは毎日のように書いている。ある種の日記みたいだ。でもそれだけ不安が大きかったのだろう。結局、大きな失敗はなく無事に合格することができた。

 

 

合格後、ア式のHPに訪れる回数が増えた。また、新歓の情報収集のためにTwitterで東大ア式蹴球部をフォローした。ア式の存在自体は、以前ふとした時に東大サッカー部について調べたことがあり、さらには高校同期が入部していたこともあり知っていた。HPの記事を見たりツイートを遡ったりしているうちに、東大ア式への興味が強まっていった。まず、ボールを保持しながら前進し攻撃を組み立てていくゲームモデルに惹かれた。こんなサッカーをやってみたいと思った。サッカーについて詳しくなりたい気持ちもあった。ほかにも、ア式でスポーツ科学を追究するフィジカルコーチがいたり、サッカーを切り口に世界一周した人がいたり、さらには、テクニカルスタッフの分析、元Jリーガーの監督の招聘、企業とのスポンサー契約など、しかもこれらを学生主体でやっているということを知り、本当にすごい集団だと思った。どんな形でもいいから関わりたいなと思った。

 

4月に入り、練習参加するようになった。そこで感じたのは不安。周りのレベルが高くてついていけるのか。他のことを犠牲にしてまで週5, 6で部活をするべきか。ゆとりをもって勉強したり、旅行したりする生活もしたかった。めちゃくちゃ悩んだし、すんなりと入部を決断することはできなかった。でも、先輩達が真剣にサッカーに向き合う姿はかっこよかった。ゆるく過ごす生活を続けたとしてもいつか、サッカーを真面目に取り組む人の姿を見たら羨ましくなるだろうなと思った。入部しないと後悔するだろう、だから、やれるところまでやって、もう続けられないと思ったらやめればいい。そう思い入部することにした。421日、御殿下グラウンドでの練習から帰ったあと、不安を紛らわそうとしてなんとなくノートを開き、決意のようなものを書き記していた。

 

 

というわけで、正式にア式部員となった。しかし、授業を受けてから部活に行くという生活を繰り返すのは想像通り苦しかった。慣れない授業では履修や成績に関して不安に思うことがあったし、なまりきった体で部活をするのは辛かった。ボールを受けてもミスが怖い。ボールを奪おうとしても遅れて出て行くからなかなかはまらない。なんでこんな苦しんでまでサッカーをやっているのか。グラウンドへ向かうときはいつも暗かった。こんな精神状態ではもたないと思った。入部したことを後悔した。でも、このままじゃ終われないという気持ちがあったから、とりあえず続けることにした。怪我したときも、体力やボール扱う感覚を戻そうと必死になっていた。

 

迷う気持ちはプレーにも出ていたみたいだった。何人かの先輩から、「失敗してもいいからもっとチャレンジしてみな」「もっとボール散らせると思うから自信持ってやってみな」などと声をかけられた。自信のなさが見透かされた気がした。だけど自分を気にかけてくれる人たちがいて挑戦できる環境があるということを感じることができた。何気ない声かけでもう忘れているかもしれませんが、個人的に気持ちが沈んでいた時期だったので結構救われました、ありがとうございます。

 

夏の暑さがピークを過ぎた頃、少し走れるようになってきた感覚があった。夏休みが終わる頃に、育成チームの中でカテゴリーを上げてもらえた。続けて頑張ってみようと思えた。だけどその後、足首捻挫してそのまま冬オフに入った。

 

 

今シーズンになってからは、選手同士やOBコーチと話す回数が増えた。プレーを言語化することで、理解できている所とできていない所に輪郭を与えることができる。まだまだだけど、以前よりはサッカーがわかってきたかもしれない。意図したプレーが少しでも試合で出来たときは楽しかった。プレーについて選手間で真剣に話し合えて、コーチからもフィードバックをもらえる環境があるのは恵まれているんだなと思う。最近何度かAチームの練習に参加させてもらうことがあった。ポゼッションやゲームなどではボール回すテンポやトランジションがはやくて頭と体が追いつかず辛いときもあるけど、今自分にできることをチャレンジしていくしかないなと思った。基準高くやっていけば、いつか新たなサッカー観や楽しさを得られるかもしれない。

 

前向きな気持ちを書いたところで、そろそろ締めようと思う。

 

去年の一時期は入部しなければよかったとか思ってたけど、入部したから経験できることが多くあって、今では入ってよかったと思う。今後いつどのような壁に当たって、どう悩んで、何を選択するかわからないけど、たしかなことは、ア式にはピッチ内外で積極的に活動する人が集まっていて、その環境は貴重であるということだ。

 

 

feelings初投稿ということで、入部のきっかけやこの一年間での心境の変化をざっと書いてみました。最後まで読んでくださりありがとうございました。

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