正直すぎるfeelings

山田裕次郎(2年/MF/浅野高校)


feelingsは普段他の人に言わないようなことを書くのが一つの魅力だと思うので、自分が入部してから感じてきたこと、そして今感じていることを正直に書いていこうと思う。





2021年4月。東大に入学。

大学でサッカーを続けるつもりは一切なかったけど同じサッカー部で東大に受かった、高校同期の歌(=留年が確定し後輩になってしまった)と一緒にとりあえず体験練習に行ってみることにした。が、


思っていた100倍レベルが高かった。圧倒された。



同期はみんな本気でサッカーやりに来てて、ア式でサッカーをやるために浪人して東大入ったような人もいてサッカーのことが大好きな人ばかりが集まっていた。

先輩たちもみんな自分より上手く見えたし、ここでならまた本気でサッカーができると思った。

ア式に入ることを決めた明確な理由は覚えてないし多分ないんだけど、東大に来てまでここまで真面目にサッカーに向き合ってる先輩・同期たちの姿が自分にはとてもかっこよく見えたのだろう。

しばらく体も動かしてなくてポジションも迷走中だったけど、ここなら成長できると思ってア式に入ることに決めた。




それからの日々はとても充実していたように思う。

新入生の中でも谷とか北川のような1年生からリーグ戦に絡めるような選手が出てきたものの、自分にはまだとてもAチームで活躍できる力がないことは自分が一番分かっていたから、一歩ずつ成長することを意識して練習していた。

先輩やOBコーチから「1年は焦らず怪我しないように、自分のペースで着々と成長していけば大丈夫だよ。まだまだ全然時間はあるから」などと声をかけられていたのも自分の助けになっていたと思う。

今の1年生は焦らず頑張って欲しい。




夏休み。徐々に育成チーム(=Bチーム)の公式戦であるサタデーリーグにもスタメンとして出れるようになってきて、練習試合も含めたら5試合連続で点を決めるなど自分の中でも調子が上がってきているのが実感できていた。

この調子ならもうそろそろAに上がれるだろう。そう思っていた。


あるサタデーの試合前に嶋崎さん(去年の0Bコーチ)に今日のプレー良かったら上げるかもみたいなことを言われた。

サッカーへのモチベーションがめちゃくちゃ高かったしAチームで試合出たい気持ちしかなかった頃の自分だから、試合直前に信じられないくらいやる気も出て、(勝ち試合だったのになぜか引き分けたけど)自分自身は納得のいくプレーができて点も決めれて結構アピールできたかなとか思っていた。

でもAチームには上がれなかった。


それから約1ヶ月後の玉川大学とのサタデー。確か後半1-1とかで引き分けてた時に自分がPKもらって、決めたら流れも完全にこっちに来て勝てるみたいな状況で綺麗にバーに当てて外した。一平さん(3年生プレイヤーで一番モテる人)には「お前がPK決めてたら絶対勝っとったなー」って言われた。試合はちゃんと2-3で負けた。


負けるような試合ではなかったし確かに自分が決めてたら勝ってた試合だったからすごい悔しかったし、「これがAチームに上がれない今の自分の実力だよな、また来週から頑張ろ」なんて思ったりしていた。




でも次の週からAチームに上がった。

なんか育成チームには申し訳ないままAチームに上がっちゃったけど念願のAチーム昇格だったし調子も悪くはなかったから自信を持ったままAチームの練習に参加した。が、


またもや圧倒された。


守備の強度が全然違うし気を抜いてたら一瞬でボールを取られた。高一の時に高三の人たちの練習に混ぜてもらってた時のような、久しぶりの感触だった。

でもここで練習してたら絶対上手くなれると思った。なぜなら、プレーは全然通用しなかったけど、めちゃくちゃ上手い先輩たちに揉まれて練習してた高一の時が間違いなく一番成長してたから。

守備とか球際・切り替えの課題は確かにたくさんあった。それでもAチームに上がりたての頃は結構調子が良かった。監督にアピールするために積極的にゴールを取りに行ってたし、良いゴールを決めれる時もあった。

だから早くベンチ入りして途中出場でいいから1部の相手と勝負したいと思っていた。でも一向に試合には絡めなかった。



セカンドチーム(Aチームのベンチ外の選手たちが主)はトップチームや育成チームの人たちに比べ、十分な試合出場時間を得ることはどうしても難しく、コンディションを維持し続けるのは容易ではない。

なおかつAチームと育成チームの狭間にいるため、調子が悪ければすぐ育成チームに落とされてしまうような難しい境遇である。

それでも自分でちゃんとコンディションを調整して、来たるリーグ戦の舞台に向けて毎週全力でアピールしているセカンドの選手たちは本当にすごいと思う。

自分に関しては、なかなか試合で点を決めることが出来なくなり、Aチーム昇格後のような勢いはだんだん無くなっていったし、自分で最近調子悪いなと感じることも多くなっていた。


それでも10月初旬の朝鮮大学校戦で初めてベンチ入り。

初めてのベンチ入りはめちゃくちゃ嬉しかったし、絶対いいプレーしてチームに貢献したいと思っていた。前日は緊張していたけどそれよりもワクワクする気持ちの方が圧倒的に大きかった。

しかし試合に出ることは出来なかった。

後半ビハインドの状況で自分以外の前線の選手が交代で呼ばれていく中で、一向に自分の名前が呼ばれることはなかった。

正直自分を出してくれないのが悔しすぎたし、交代で入った選手が何も出来てないのを見て、「俺でいいじゃん」とか思っていた。

練習でもっとアピールして今度こそは絶対試合に出てやると決めた。






しかし間も無くして大怪我をした。


左鎖骨骨折


10/17 この日は育成の試合に人が足りなくて急遽呼ばれ出場していた。

絶好調ではなかったが、Aチームにも慣れてきて徐々に調子を戻し始めていた時の怪我だった。

サッカーを小4で始めてから一度も一週間以上の離脱をしたことがなく、”絶対に怪我しない男”として浅野高校でその名を轟かせていた山田裕次郎の怪我は全浅野高校生を驚かせた。

最初は脱臼かもと言われていたからすぐに治るだろうと思っていたが、念の為レントゲンを撮って骨を確認したところ信じられないくらい綺麗に骨が折れていた。

鎖骨の骨折は半分くらいは自然治癒で治すことが可能で、手術したら自然治癒よりサッカーの復帰は遅れるとのこと。

手術なんて怖すぎるし絶対自然治癒で治しますと言いたいところだったが、自分の折れ具合だと自然治癒では正常に骨が戻らない可能性が高く、手術したほうが良いだろうと言われた。すぐに全身麻酔の手術をすることが決まった。

(左が手術後、右が怪我した時)



鎖骨が折れてから最初の4日くらいは、服を脱ぐことが物理的に不可能だったから怪我した時に着ていた練習試合ユニフォームをずっと着ているしかなかったし、もちろんお風呂に入ることもできなかった。一度ベッドに寝っ転がったら自分の力では立ち上がることもできない。左腕は基本使えないからご飯を食べるのもかなりきつい。大学の授業も受ける余裕ないからついていけず撤退。(これは自分のせい)

もうとにかく辛かったし健康の大切さが痛いほどわかる日々だった。


でも怪我した時に助けてくれたトレーナーの方を含むア式の方々や、この期間に自分のことを支えてくれた家族、たくさんの励ましのメッセージをくれた友人たちには感謝の気持ちしかないです。この場を借りて感謝申し上げます。


怪我は辛いものだったけどいつまでもクヨクヨしてても仕方が無いので出来ることをやって前を向くことに決めた。陵平さんから、怪我したのは残念だけどサッカー選手に怪我は付き物だから強くなって帰ってきて欲しい、と言われたのも前を向くきっかけになった。





その後もチームは苦戦を強いられそのままリーグ戦を終えることとなるが、結局自分は一度も公式戦の舞台に立つことはできなかった。

1年生のうちに公式戦に出ることを一つの目標にしていたからこそ悔しさはとても残ったが、怪我に関してはどうすることもできないので早く治してまた来年頑張ることに決めた。



また怪我で満足に練習できないこの機会を有効に使って、春休みの期間にはずっとやりたかったボランティア活動をすることに決めた。これについて詳しく書くことはボランティアの規則上できないが、1ヶ月以上週6の部活と週6のボランティアを両立する日々が続いた。

めちゃくちゃ忙しかったし、両方とも中途半端になってしまっている時もあった。でもボランティアを通して自分が知らなかった世界を見ることができたし、非常に充実した日々だった。

でもこの期間に自分は育成チームに降格した。

当時冬オフが明けて新チームとなり、怪我で練習の途中までしか参加できないがAチームに入れさせてもらっていた。(鎖骨の骨折は術後、割とすぐに走ったり動けたりできるようにはなるが、なかなか試合復帰はできない種類の怪我であり、精神的に辛い。)

途中までしかできないからと気持ちを緩めて練習に取り組んでいたわけでは一切なかったが、練習は全然うまく行っておらず当然すぎる降格だった。



なかなか治らない怪我と並行してサッカー以外にやりたいことが増えていく日々。

正直自分が何をやりたいかは分からなくなっていた。このままサッカーを続けるのが正解なのか。それともボランティアなどサッカー以外の世界でやりたいことをしていくのが良いのか。充実したボランティア活動を通してサッカー以外の世界の素晴らしさも実感して、大学生活がサッカーだけになりかけている自分が怖くなっていたのだと思う。



そんな春休みが終わり徐々に怪我も治ってきて再び試合に出れるようになった。

4月。約半年ぶりに試合に出場。一橋との試合だった。

試合が久しぶりすぎて体力的にキツかったが久しぶりに点を決めれてやっぱサッカーって楽しいなと感じた。

しばらくしてAチームに戻ることとなるがセカンドのスタメンにすらなれない日々が続いた。

全体練習でもみんなの半分くらいしかゲームに出る時間をもらえない。

上手くなっている感覚は全く無かったし、何よりそんな状況の自分が悔しすぎてイライラしていた。もちろんプレーも上手く行ってなかった。

程なくして再び育成チームに落とされた。




夏休みに入り、Instagramのストーリーには長期休みを生かして短期留学する人や海外に旅する人の姿で溢れていた。特に自分の所属するボランティア団体の友人たちは本当にたくさんの人が海外に旅していた。シンプルに羨ましかったし、自分もサッカー以外の世界をもっと見てみたいという気持ちがだんだん強くなっていった。

でも夏休みも週6で活動している部活を続けていたらそんなことは絶対にできない。春休みに陥ったものと同じジレンマに再びハマることとなる。

案の定、サッカーの調子はだんだん悪くなっていった。それも相まってサッカーを続けるモチベーションが落ちていったし、このままサッカーを続けているだけで良いのか自分の中で迷いが生じていった。




feelingsなので正直な気持ちを述べよう

自分は今後サッカーを続けるか迷っている。これについてはまだ自分の中で答えを出せていない。自分の中で整理がついたらfeelingsを提出しようかなとか思っていたが、流石にこれ以上期限を伸ばしてもらうことはできないので”迷っている”という表現で勘弁してほしい。


正直ア式には大学生活をア式だけで過ごしている選手は多い。月オフ(ア式は基本的に毎週月曜日がオフ)もア式と過ごし、結果週7でア式の人と一緒にいる生活をしている人も結構いるだろう。ずっと一つのことに対して全力で向き合い続けることはめちゃくちゃすごいと思うし、尊敬している。でも同時にこれはすごいリスクのあることでもあると思う。自分の見ている世界の狭さに気付かなくなってしまうかもしれない。

誰かのfeelingsにも書いてあった気もするが、ア式というクラブは世間一般的に見たら非常に均一性の高い集団。ほとんどがサッカーと勉強をある程度両立して頑張ってきた人たちの集まりである。

だから当たり前のように入部当初からみんな馬が合う。

元々似たような集団の中で、一緒に時間を過ごせば過ごすほど必然的に彼らはもっと似通っていく。そして本人たちが気付かないうちにその集団はほぼ同じような人たちの集まりになっていき、自然とア式には選手たちにとって非常にcomfortableな環境が形成されていく。


自分自身の考えではあるが大学生活が”ア式だけ”の人間にはならない方がいいと思う。決してこれはサッカーに打ち込まないことを意味しているわけではない。サッカーをやりながら他のことにも挑戦するのである。

大学生は自分で自由に使える時間が高校生までとは比べ物にならないくらいたくさんある。だから自分次第ではア式以外の世界を見る余裕は全然あると思うし、”ア式だけ”なんていう大学生活は、もちろんとても素敵なことではあるけど、あまりにも勿体無い。

その点、色んな活動をしながらサッカーでもチームに欠かせない存在になっているミライさん(3年プレイヤー)は自分の目指すべき姿であり、実は勝手にめちゃくちゃ尊敬しているのはここだけの話。





正直な気持ちを書きすぎて自分でもややビビっているが、feelingsは正直に感じていることを書かないと意味ないと思うのでどうか暖かい目で見守ってほしい。






色んな迷いがあってサッカーを続けるかすら迷ってる自分ではあるが、ここまでサッカーをしてきて一つだけ明確に分かったことがある。



それは

      ”サッカーは誰かのためにプレーするもの”

                        ということ



自分はプロを目指していないし、大学でサッカーを続けるメリットはそこまで多くない。むしろ失うものの方が多いかもしれない。だけどア式には自分たちを応援してくれる人がたくさんいる。


毎日グラウンドに来て教えてくれるコーチ陣。


絶対にプレーしたいだろうけど動画を撮ってくれて分析もしてくれるテクニカルスタッフ陣。


自分なんかよりも何十倍・何百倍も部活を続けるモチベーション維持が難しいだろうけど、文句一つ言わず様々な面で日々サポートしてくれるグラウンドスタッフ陣。


他にもLB会の方々など数えたらキリがないくらいたくさんの人に支えられて選手たちは伸び伸びとサッカーができている。

そういった人たちに自分が闘う姿を見せて感動を与えられることがサッカーの醍醐味であり、同時にプレイヤーとしての使命なのだと思う。

だからプレイヤーはみんなの思いを背負って日々努力を続ける必要があるし、その努力の成果を試合で見せなければならない。

自分のためだけにプレーするのではなく、チームのため・応援してくれるみんなのために闘えるようになった時、サッカーはめちゃくちゃ面白くなるし、大きな感動を生むと思う。



正直に言うと一時は9/10のサタデー最終節一橋戦をもって休部することも考えていた。でも応援してくれる人のことを思ったら試合で闘う姿を見せて恩返しするのが正解だし、自分にはその義務がある。だから今辞めたら何も恩返しできないと思った。

欲を言えばトップチームの公式戦に出て活躍して成長した姿を見せたいが、公式戦に出るのはそんな簡単なことではないのは分かっているので謙虚に少しずつ頑張りたい。もちろん諦めてなんか一切ない。

育成チームは今年サタデーリーグ5勝3分無敗でグループリーグを突破することができた。

この後迎えるトーナメントで勝ち上がって、優勝という結果で成長した姿・闘う姿を見せて、サポートしてくれる人、特に育成チームを支えてくれたOBコーチ陣への最大の恩返しをしたい。

だからトーナメントで結果を残すまでは自分にサッカーを辞める選択肢はない。今はそう断言できる。その後自分がどういう選択をするかはまだ分からないが、全てを捧げる覚悟でトーナメントに臨むつもりだ。






長いfeelingsとなってしまったが改めて、感謝の気持ちを伝えることは大切だと思う。

支えてくれる人たちへの感謝の気持ちが少しでもあるなら、例えばログや練習動画をとってくれたスタッフの人たちにSlackのありがとうスタンプを押すという形でも良いから、ちょっとした感謝の気持ちを伝えるのが当然だと思うし、これくらい誰でもできる。

サッカー選手たるもの勝利という結果で恩返しをするのが一番かもしれないけど、そういった些細なところも同じくらい大切で、今のア式に、もっと支えてくれる人たちを大切にする空気が出てくればより素敵な部活になるのかな、なんて思ったりする毎日である。









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