後悔を塗りつぶす

山﨑光夏(4年/スタッフ/旭丘高校)



10月8日、ア式を引退した。

現在の私は、部活を引退して授業ももうほとんどない中、暇な日々をバイトや友人とのご飯や旅行で埋める至極大学生らしいゆるりとした生活を送っている。こうしてみるとスタッフで毎日参加していたわけではないとはいえ、日々の生活の中でア式が占めていた割合の大きさを思い知る。ちなみにまだ、Slackをなんの用事もないのに見る癖は抜けない。

 

卒部feelingsに何を書くべきか、なんとなく以前から考えていたものの、結局よくわからなくなってしまった。過去の先輩方のfeelingsを見ていると、ア式生活を振り返りながら書いているものがほとんどなので、私もその形式に沿って書いていこうと思う。なんだかいつも無難な感じのfeelingsばかり書いてしまって申し訳ないが、冒険はできないタイプなので許してほしい。

 

〈1年生〉

コロナ直撃世代の私たちは、授業も遊びも何もできない日々が続いた。当の私は、オンライン授業しかなく、東京に知り合いがいるわけでもなかったので、9月くらいまでは実家でだらだらと過ごしていた。高校時代の部活がかなりハードだったおかげでもう大学はサークルでいいやと思っていたので、正直通常通りの新歓が行われていたならば、ア式に入っていた可能性は非常に低いと思う。が、コロナのおかげで新歓はほとんど行われず、その中で人員を必要としていたいくつかの運動部にマネージャーをやらないかと声をかけられた。知り合いもおらず寂しい日々を送っていたし、自分からサークルを探しにいく積極性もなかったので、上京してそのまま声をかけられた部活の見学に順番にいった。結局、同クラ・上クラ・高校同期もいるし、シフト制で自分の時間もある程度できそうだと感じてア式を選んだような記憶がある。優柔不断な私は11月に入部を決めたため、1年目は本当に何もわからず、何もできない部員だったことであろう。1年目は正直本当に、ただ「入部した」だけだったような気がする。

 

〈2年生〉

2年生になって最初に印象的だったのは同じ役職であるトレーナーをやっていた1つ上の先輩が2人やめてしまったことである。これにより、我々の代のトレーナーは急速に昇進し、ベンチ入りまですることになった。この時は必死に仕事を詰め込むのに精一杯だった。また、2年の夏から秋頃にかけてグラウンド業務長を先輩から引き継ぎ、ピッチ外でもやることが増えた。色々なことをなかなかできるようにならないことが情けなかったし、周りに申し訳なかったが、この年は新しいことをとにかく覚えて吸収するというすごくやりがいのある一年だったような気がする。仕事がだんだんできるようになるのは嬉しいし、同期とも仲良くなってきていた時期だった。特に2年前期は授業もあまりなく、部活に捧げる時間が一気に増え、それはそれで楽しかった。

 

〈3年生〉

3年生は正直のらりくらりと過ごしてしまったような気がする。一つ上の代にいたフィジカルコーチの先輩がいなくなってしまい、トレーナーがそこを補填しなければならなかったのだが、全然何もできなかった。「女子だから」を自分も言い訳にしていたし、周りも理由にしてくれていたが、単純に能力も知識も足りていないだけだったとおもう。結局後輩の男子トレーナーには大きな負担を強いることになってしまい、自分は育成のアップにチャレンジしたものの大きく質を落とす形となってしまった。結局その後トレーナーによるアップは消失してしまったので、情けない限りである。この頃は、自分の無力感を痛感するとともに、そこの限界を超えるには圧倒的に勉強量や行動力が足りていないと思った。しかし、この頃の私は、もっと質をあげようと積極的に行動し、努力することはなかった。基本的なスタッフの仕事がそこそこ回っている状態に甘んじて、特に何もしなかった。本当にこの年は何にもしなかったし、やろうとしていなかったなという印象が強い。今振り返ると意外とあっという間だった4年間のうちの1年を無駄にしてしまったのは本当にもったいなかったと思うし、もっとやれたことがあったんじゃないかと思う。

 

〈4年生〉

ついにやってきたラストイヤー。最後だからと気合を入れたが、プレシーズンは落ち込むことの方が多かったような気がする。グラウンド業務長なのになかなか周囲のモチベーションをうまくあげられず、部活への愛着というものを他のみんなに芽生えさせることができなかったような気がしている。スタッフは部活への愛着があるかどうかにすべてが左右される。部活が好きなら頑張れるし、好きじゃないなら頑張れない。ここがうまくいかなくて、どうすれば良いかわからなかったし、結局私が何かを改善したわけでもなかったと思う。その後は毎週試合が慌ただしくやってくるので、ただ単純にみんながモチベについて悩む機会もなくなり、私も気にならなくなったのであろう。根本的解決は何もできず申し訳ない。リーグ戦が始まってからは本当にあっという間だった。試合に向けて練習をするみんなを最大限サポートしたいと思い日々シフトに臨み、毎週の試合を応援する、そうしているうちに時が過ぎ去った。ベンチに入ったものだと初戦の上智戦や劇的勝利の横国戦はすごく感動したし、最近だと帝京戦もとても嬉しかった。あまり感情の起伏が激しくない私が珍しく本気で悔しがったり、嬉しがったりする時間をくれたア式の人たちには本当に感謝しかない。

 

さて、ここまで良い感じに振り返ってきたが、こうして振り返って4年間を思い出していると、自分はすごくエゴまみれだったなと感じる。3年の頃何もしようとしなかったのは、かなりの頑張りが必要だったのもあるけど、やってみて結局認めてもらえないのも癪だったからだ。結局諦めて、トレーナーの仕事をほぼやらなくなってしまったのは、不可能だったというよりはできない、情けない自分をみんなに見られるのが嫌だったからだ。でもこんなことは序の口で、何よりも自分の自分勝手さが出たのはスタッフの仕事だと思う。私はずっと多分自分が「使える・働いていると思われる存在」でありたかったのだと思う。(本当にそうであったかはおいておく)そうであろうとすることで自分の存在価値を確認していたし、自己肯定感を満たしていた。でも本来私がやるべきだったのは、自分が積極的に動き回り、自分一人を選手やコーチ、他のスタッフから認めてもらうために頑張ることよりも、スタッフみんながそうなるように励むことだったと思う。自分が褒められたいという気持ちがあるからか、他人にものを頼むのが苦手だからか、多くのことを自分でやろうとして、仕事の引き継ぎや割り振りはきっとうまくできていなかったと思う。嫌われることが怖かったから良い人ぶってみんなを怒るべきところで怒れなかったし、自分で勝手にやってしまうせいで後から「すみません、やってもらっちゃって…」と気を遣わせることも多かったと思う。こうしてみるとすごく自己保身に走ることが多い4年間だったなと思う。正直、上の振り返りは多くを省き、綺麗にまとめてしまった。

 

この反省は、みんなにできればこうなってほしくないなと思い書いたのもあるが、私はこうやって自分のネガティブな面を嫌でも表出させてくれるところにこそ部活はすごく価値があると思う。試合に勝ったり、選手と仲良くなったりして、楽しい思い出を積み上げることができるのはもちろん部活の魅力だ。でも、みんな一度くらいは部活をしていると、自分の汚い一面をなんとなくでも自覚することがあると思う。多分普通に大学生活を送っていたらこんな風に自分を認識することもなく、なんとなーく4年間を過ごしていたと思うが、ア式で過ごしたおかげで自分に関しても他人に関しても良いところや悪いところをしっかりと見つめることができたと思う。これがあるからこそ、部活は苦しいし、その分楽しみも大きいと思っている。どうかみんなも部活にいる間は、自分や他人から目を逸らさずしっかり向き合ってほしい、きっとその時間は無駄にならないと思う。

 

大学生活で、わざわざ運動部、そしてア式という選択肢をとったことを私自身は後悔していないと思っている。けれど、実のところそう思い込ませているだけかもしれない。今ア式に所属している人にも、広い選択肢が用意されている大学でア式を選んだことをいくばくか後悔している人もいれば、全く後悔していない人もいるだろう。後悔していない人に関しては全く問題ないが、多分後悔している人に関してはどの選択肢を選んでも何かしらの後悔はあるのだと私は思っている。部活を選んだら、「自分の時間が少ない、もっと他にやれることがあるのではないか…」と思うだろうし、逆に自由時間の多い団体に所属したらしたで、「結局何も成し遂げない大学生活だったな…」などと思うのではなかろうか。だから、私は少しでもみんなが、終わったときに自分のことを誤魔化せる程度には部活を楽しんでくれると良いなと思う。多分部活生活4年間毎日が楽しくて楽しくて仕方がない人の方が少ないとは思う、私だってそうである。でもせっかくア式に入ったからには、悔しい思い出でも嬉しい思い出でも良いので、少しでも後悔を塗りつぶせる思い出を増やしていって、終わった後に少なくとも「悪くなかった、そこそこ楽しかった」と思い込めるような部活生活をア式部員が送れるよう、切に願う。

 

最後に、4年間私に、部活を楽しかったと思えるような、自分の小さな後悔や苦しかった記憶を塗りつぶすことができるような、抱え切れないほどの思い出をくれた全ての人たち、本当にお世話になりました。怠惰な私にとって、メリハリや彩りのある大学生活を送るにはア式が必要不可欠でした。これからの私の人生にもア式に関わる人やイベントがちょくちょく登場してくれたら嬉しいなと思います。4年間で私に関わってくれた全ての皆様、本当に今までありがとうございました。


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