ハイファイ・ローファイ

山根萌々子(4年/テクニカルスタッフ/国立高校)
 

前回のfeelings以降、私がア式の部員として活動できたのは、たった2ヶ月。

引退まで数ヶ月となった4年生の夏、一年の留学を終えた私が部活に戻ってくると思った人は、きっと私の想像よりも少なかったのだろう。

実際に最後の数ヶ月で私がア式に貢献できたことは0に近いことはわかっていた。そのまま蒸発しても誰も気づかなかったのかもしれない。それでもア式に復帰した理由を考えてみた。

それはおそらく私のなかに、ア式部員としてのアイデンティティーが確立していたからだ。

サッカーを見始めた小学校3年生から今まで、色々な試合を観てきた。東京都リーグ、ブンデスやプレミア、Jリーグ、CLEURO、ワールドカップetc...しかし、私が本気で心を込めて応援していたのは、東大ア式と日本代表の2チームのみである。

ア式に入ってから色々な人にどのチームが好きなのか聞かれたが、いつも返事に困っていた。テレビで放送されていれば楽しんで観るものの、私が本気でサポーターとして応援していたチームはなかったように思えた。

イギリスに住んでいた頃ぼーっと観ていたドイツのチームや、住んでいたからという理由で応援していたイングランド。高校生の時は(久保くんを観に)味スタへ行き、昨年1年間は何度かサウサンプトンのセント・メリーズに足を運んだ。どの試合も、観戦中はもちろん応援しているのだが、それが心から本気だったかと言われるとかなり怪しい。

留学中、プレミアの試合を何度かスタジアムで観戦した。文字通り人生を賭けて、自分がサポートするチームを応援するイギリス人(8割がはげたおじさん。そのほか、家族みんなで観に行く人も多いし、自我が芽生えてない頃からセインツとして洗脳されている少年少女もよく見かける)がとっても羨ましかった。

地元武蔵野にJ1のチームがあればな、と一瞬思った。でも、あったとして、私が本気でサポーターになっていたかはわからない。

しかし、2022年カタールワールドカップで私は本気で日本代表を応援していた。ドイツ、スペインを倒して首位通過する日本代表に叫んだし、本気でベスト8進出を願って応援していた。

これは21年間で確立した日本人としてのアイデンティティーが私にあるからではないか。たった1年弱しか滞在しなかった私に、セインツになるほどのサウサンプトン人(?)としてのアイデンティティーは生まれなかった。

帰国後、部活に復帰する前に学習戦を覗きに行った。久しぶりに見たア式のチームは留学前とは少し変わっていたけれども、私は変わらない熱量で応援できていた。次こそ勝つぞ!と横国戦に行ったら、一旦は追いつかれたものの終了間際に追加点が入り、無事勝つことができた。自分のことのように嬉しかったし、やっぱりア式は自分のことなのか、と気づくことができた。

決して長い間ア式で活動していたわけではなかったけれど、確かに私の中に、私がア式テクニカルスタッフである、という自覚はあったのだ。

だから、私は自然とア式に復帰したのである。

ほとんどの部員にとっては、ほんの数ヶ月間、突然現れた謎の頼りないテク4年生であったと思う。倍になったテクニカルに迎え入れてもらったり、双青戦を見届けたり、拙いスカウティングを行ったり、同期の活躍を見たり、後輩をみて来年以降どんなチームになるのかなと考えたり、ア式の応援を全力でしたり、貢献は少なかったけれど、私的には十分と言っていいほどの満足のいく活動ができたな、と感じている。

長々と復帰の理由を書いてみたが、よくよく考えると答えはいたってシンプルだった。「同期やテクの後輩が、戻ってきてね、待ってるよ、と私に伝えてくれたことが嬉しかったから」が一番の理由だと思う。直接は伝えられなかったけど、実はとても嬉しかったです。





ふと今日更新された中山のfeelingsを読んだ。

そこで、改めて私ほど「ア式に貢献できているかわからない」スタッフはいないだろうな、と思った。それはずっと感じていたし、どうにか貢献できないかな、と思ったけれど、どう考えても私よりサッカーに人生を懸けてきて、本気でプレーしている選手たちにどうこう指示を与えることができる知識も経験も自信もなにもなかったし、一歩踏み出す勇気もなかった。試合を見て私なりにこの試合がどうだったか心の中で消化していたけれど、声に出せるのは薄っぺらい感想くらい。決められた仕事しかできない自分をどうにかしたいと思ったけどどうにもできなくて、お得意の見なかったふりをしていた。当時はちょっと嫌だな、面倒くさいな、責任重いな、とも思っていたけれど、復帰後ア式に何も価値を出せていなかった私に成城戦のスカウティングを任せてくれてみんなありがとう。決められた仕事しかできないけれど、私に任せてくれた仕事だけは自分の精一杯やろう、と思って頑張っていたア式生活を締めくくるにはいい機会だった。結果は負けちゃったことが、私のテクニカルスタッフとしての実力をよく表しているな、と悔しい思いもあったけれど、きっと無駄にはならなかったのかな、と思うことにする。

そんな任された仕事を自分なりに遂行することしかできなかった私を、それもそれでア式の役に立てていると認めてくれたとちょっとした救いでした。ありがとう。(本来のメッセージはこれではなかったのかもだけど)



何はともあれ、ア式という、生まれて初めての自分のチームを応援するのはすごく楽しかったし、屋上でテクのみんなの副音声を聞きながら試合を見るのもすごく好きだったし、いろんな

人との出会いもあったし、充実した時間を過ごせました。

4年間(よりは全然少ないけど)本当にありがとうございました。

同期のみんな、テクの皆さん、先輩後輩、監督コーチ杉崎さん、関わってくれた全ての方々へ、たくさんお世話になりました。


提出期限をかなり過ぎてしまいました。星くん、迷惑かけてごめんなさい。
 

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