底力 

道田翔太(1年/DF/県立旭丘高校) 

 

 僕はカロリーメイトのcmが大好きだ。かの有名な受験生応援動画のことである。受験生の時はテストの結果が悪い度に観ていたし、大学生になった今もYouTubeのおすすめにあがっていると再生してしまう。そんな数ある受験生応援シリーズの中でも一番好きなcmが、去年放映された「見えないもの」。森山直太朗の「さくら」と共に流れるのは、コロナ禍の中受験を戦い抜く受験生や先生の姿だ。この作品が一番好きな理由は先生役の飯塚さんが贈る言葉にある。

 

「上手くいかないときに、それでも続ける努力を底力って言うんだよ。」

 

 僕の現状はお世辞にも上手くいっているとは言えない。両足首の慢性的な不安定症に続き、B1からB2へ降格。「怪我だから(降格は)仕方がない。」という言葉をかけてくれる人もいた。しかし、単に実力不足で落とされたことは自分が一番よくわかっている。悲観する必要はないけれど、この現実と向きあう必要がある。自分を見つめ直す必要がある。

 

 どうして怪我をしてしまったのか。これに関しては今まで体幹や筋トレ、柔軟から逃げてきたツケが回ってきたのだと思う。先日、リハビリの先生に診てもらったところ、僕の体はサッカー選手として必要な要素が多く欠落しているとのことだった。その後、先生の指導の下体幹トレーニングを行ったが、先生からのアドバイスはどれも田所さん(ア式のフィジカルコーチ)が常日頃から言っていることだった。入部から半年。もっと田所さんの言葉に耳を傾けていれば。もっとフィジカルトレーニングに注意深く取り組んでいれば。もしかしたら、今頃サッカーをしていたかもしれない。みんなと一緒に試合に出場していたかもしれない。

 

 どうして降格したのか。同じミスを繰り返してしまったからだと思う。ミスのあと、僕が一番最初に取る行動は「落ち込む」だ。試合後もただただ「落ち込む」だけ。僕は大学からCBというポジションを始めたが、なかなか精神的に苦しいポジションである。ディフェンスラインでのミスは失点に直結する。同じミスで何度失点したかわからない。チームに迷惑を掛けるのが怖くなり、途中からサッカー自体が嫌になっていた。ミスに対し具体的な改善策を考えることもなく、「今日は失敗しなければいいな」という半端な気持ちで練習に臨んでいた。

 

 思い返せば、今までの二十年間、中途半端な取り組みで終わってしまうことが多かったと思う。高校サッカー。100%の気力で取り組んだのは最後の大会だけだった。それまでの練習や試合は全力ではなかった。最後の大会は地区予選敗退。県大会ベスト8という目標を掲げながらも県大会出場すら叶わず。現役時の受験。センターまでは頑張ってみたものの、過去問の難しさに心折れ、2月にはもう諦めていた。落ちる気で受験会場に到着。結果はボーダーから50点落ちの不合格。

 

 そんな僕にも唯一全力で取り組めたものがある。それは浪人時の受験。現実と、自分としっかりと向き合えた一年だった。結果は合格。普段あまり感情を表に出さない父がきつく抱きしめてくれた。少し震えた「よく頑張った。」が何よりも嬉しかった。去年は僕にも底力があることを証明できた一年だったと思う。だから、きっと今の自分とも向き合える。

 

 ここまで自分のことについてだけ語ってきたが、上手くいってないのは何も僕だけに限ったことではない。二年生の水本さんは僕と同じ足首の不安定症(僕より程度が酷い)を患い、何度も離脱を繰り返しながらもリハビリを続け、復帰を果たしている。サッカーに取り組む姿勢は勿論のこと、人間的にも尊敬している先輩である。そして同期のはじめん。Aチームに昇格後すぐに怪我で離脱。何度も怪我を繰り返し、手術をするほどの大怪我も負った。怪我でボールが蹴れない時は、できる範囲でウェイトトレーニングをしていたし、戦術理解を深めるために試合観戦・分析も行っていた。チームのカテゴリーが違うので彼の努力を部分的にしか認識していないが、きっと影ではもっと努力しているのだろう。そんな彼は先日、ついに公式戦復帰を果たした。この二人以外にも病気や怪我に苦しみながらも努力を続けている人達がア式にはたくさんいる。選手だけでなく、スタッフも上手くいかない現状を変えようと日々奮闘している。こういった人たちは本当に頑張る勇気をくれる。

 

最後に。この時期にfeelingsを書く機会をもらえて良かった。先週までは劣等感と自己嫌悪で悶々としていたが、やっと気持ちの整理ができた。今の気持ちをこういった形で言葉にできたのは本当に幸運なことだ。今はやる気に満ち溢れているけれど、豆腐メンタルの僕のことだから、きっとまた上手くいかない現状に心が折れてしまうと思う。そんなときは、ア式の仲間たちを見ながら、自分にこう言い聞かせたい。

 

「見せてやれ、底力。」

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