サッカーの地平線を広げる-10日目〜12日目-

岡部惇貴(3年/MF/武蔵高校)


登場人物紹介

マルティン 帯同チーム先の第1監督。人格神。人生で3本の指に入る、尊敬できる人物。師匠。

ジェラール 帯同チーム先の第2監督。いじられ役。とにかく親切。アメリカなどでも指導していたらしい。

ホセルイス(ヨーダガムおじさん帯同チーム先のキーパーコーチ。メキシコから勉強に来ている。ストーリーがうるさい。

ナオキ君 同じプログラムに参加したメンバー。1歳年上の先輩。まさかの同郷。

白石さん 同じプログラムに参加したメンバー。みんなの兄貴。社会人のしっかり者。

高田さん プログラムの責任者。約10年スペインで活動する。ポストがタメになる。

砂川さん スペインで学ぶ日本人指導者。去年の同プログラム参加者。サッカーを学ぶために、スペインに移住してきた。

アンヘレス ホストマザー。テンションの高いおばちゃん。寝言がすごい。

セルジ アンペレスの息子。チャンピオンズリーグ観戦の夢を叶えてくれた。


10日目
起床。今日は朝から個サル。2週間ぶりくらいに身体をちゃんと動かす。8時集合に遅れ、1人で行くことになった。目的地までは余裕で到着。中に入れない。アップをするために早く集合したのに。これはアップ無しで1時間ぶっ続けだな。怪我するにしても2週間くらいで治るやつであれ。荒いらしいから気をつけないと。
めちゃ楽しかった。ジェリーミナみたいな走らないやつとか、絶対いいやつやんっていうDF、太ったデ・ブライネ、主催のデカいおじさん、めっちゃ走る帽子かぶっているやつ。個性豊かで楽しかった。相手にはコロンビア人三人衆(全然国は知らないけど、コロンビアっぽい顔をしていた)、とにかくデカいやつ、上手くて動けるお爺さんになりかけのおじさんがいた。相手のDFリーダーは熱帯雨林の奥で自給自足の生活する村の村長みたいな野性味あふれる風貌をしていた。何歳になってもこうやってサッカーを楽しめるのは素晴らしいことだ。指導者脳で生活していた自分にとってプレーの楽しさを思い出させてくれた。
試合後は近くのカフェでクロワッサンを買って、ビーチを見に行った。海は思ったより綺麗。東京より数千倍綺麗。ほんの少しだけ夏が楽しみになった。次に向かったのはフットボールマニア。有名選手のサインやユニフォーム、スパイクが展示され、信じられない量のユニフォームが売っていた。本物価格だったので手は出せなかったが、見て楽しめた。帰りの電車で日本がずっと雨なことに気づいた。そんな中練習するのかわいそ。こちらは水不足になるほどの晴れ続き。雨ってやっぱ必要である。雨の重要さを理解した上でも雨の中練習は嫌。
一時帰宅して、昼食。出てきたのは例のヨーダ豆。周期が早いて。セルジは目の前でスペインの唐揚げを美味しそうに食べていた。なんでや。ずるいやろ。セルジは英語が使えるので会話ができる。すると突然、ナポリとバルサのチャンピオンズリーグは見たいかと聞いてきた。実は帰国の2日後にホームで2ndレグが行われる。平たく言うとめっちゃいい試合である。見たいと思ってチケットを取ろうとしたが、難しいと言われて断念していた。見たいと伝えたところ、どうやら探してくれるらしい。今は価格が高い席しか売り出しておらず、その値段は80000円。この試合でこの値段なのにプレシーズンに日本に来たチームにあの価格設定は間違えているとしか思えない。この話は今後の進展に期待である。2週間動かないだけで疲労は半端ない。いくら個サルが1時間休みなしのぶっ通しだったからとはいえ、こっちは日本の部活動を耐え抜いてきた猛者なのだ。ベッドに寝ながらフットボールマネージャーをして休憩。気づいたら練習時間である。2日目ぶりに爆睡した。
今日の練習はジェラールが休み。ヨーダガムおじさんがアシスタントとして再び登場。練習開始。見たことない練習がいくつか。ボールがよく無くなる練習でグラウンドを駆け回った。ボール拾いの嗅覚が鍛えられた。セカンドボール拾えるようになっていたりしないかな。この時間は練習をじっくり見るというよりかはボール拾い中心だった。それですら楽しい。なんでこんな練習を思いつけるのか質問してみよう。練習後、ヨーダガムおじさんと帰り方が一緒だったので、マルティンに促され、一緒に帰ることになった。もう1人選手も一緒に帰った。結局その2人がずっと話していたので、それを聞いているだけだった。日記を書く時間も得られたので良かった。ガムも渡されることもなくお別れ。
帰宅後、待っていたのはインディカ米。しかも今回はカッチカチ炊いたのかもわからない状態。これを食べても何も思わないのだろうか。日本人の食への探究心に感謝である。デザートがわりに置いてあった甘いパンはめっちゃ美味しかった。いつものように疲れ果てて寝落ち。ここ毎日泥のように眠っている。充実している。
 
11日目
起床。バイト。そろそろお金のためとはいえ飽きがきている。実はスペインに来てから、サッカーの試合を見ることはなくなった。そりゃもちろん生では観たが、パソコンで見ることはなかった。それはなぜか。もちろん最大の理由は時間がなかったことである。バイト→観光→練習のサイクルをひたすら回していたので、空いている時間はなかった。ただ時間がないからと言って、素直に観ないほど試合観戦への情熱がないわけではない。眠いのに無理矢理起きて観たり、観てはいけない時に観たり、様々な障害を乗り越えてきた。だが今回最大の理由は単純にSPOTVDAZNも使えないのである。なんでわざわざ近くに来たのに見れないん。今日は帯同チームの練習はオフなので、時間を自由に使える。この時間を無駄にしてはいけないと思い、先日のカンファレンスの復習をしつつ試合をみようと思った。ゲントのメンションは一旦置いといて、Aチームの玉川戦を観た。日本のサッカーはルールに忠実。審判は変だったけど。誰もファールスローしない。荒が上手くなっていて驚いた(何様だという意見は聞きません、客観的に見ただけです)。裏誰も走らんな。ラインガバガバなのに。そのせいで中盤詰まりすぎてしんどそう。そんなことを思いながら、1本目で飽きてみるのを辞めた。フットボールマネージャーを少しして昼食。1日目に食べた唐揚げとトマトソースのかかったパスタだった。美味しかった。家庭の味である。スペインのお土産をまとめて探したかったので、セルジにでかいショッピングモールを教えてもらった。3つ教えてもらったので、帰るまでに全部行きたい。調べてみるとマジでデカかったので、午前中から行ける日に行くことにした。練習前に暇があるので、プチプラの服屋に行ってみることにした。スペインのGUみたいなものだと思う。
1人移動はお手の物。最寄り駅について歩き出す。多種多様な店があって面白い場所だった。例えばラーメン堂。メニューを見るとラーメンを売っていなかった。セットメニューのうち半分がカレー。いち早く店名を変えて欲しい。プチプラ服屋に到着。GUUNIQLOを足して2で割った感じ。香水の匂いがキツかった。プチプラ2店舗目。男物は3階って書いてあったのに、3階へ行くと子供服しか置いておらず、1人だったのでめっちゃ店員に怪訝な顔をされた。いやそっちが騙してきましたやん。男物は地下にもあると書いてあったので地下に行くと冬服がメインですぐに出た。冬服を見て春を感じた。次はZARA。じゃんけん大会をしたくなる服がちらほら。卒業旅行はここだね。鳩が多過ぎるカタルーニャ広場を横目に、コルクでモノづくりをしている店でスマホケースを見つけた。今のスマホケースはバキバキ。良いケースがあったので手に取ってみようとしたら土台を落として割ってしまった。店員の目の前でやって鬼気まずい。さすがに全力で謝罪した。ただここでスマホケースを買うとスマホを買い替えづらくなる。気まずさと買い替えを天秤にかけた結果、選ばれたのは買い替えでした。ごめん店員さん。そそくさと店を出て次に入ったのはIKEAみたいな商品が置いてある雑貨屋。金メダルチョコ、ボードゲーム。やっぱり彼のお土産は置いていない。練習に向かう。練習場の付近にあるデカショッピングモールに寄り道。1階で雨漏りしていた。屋上で綺麗な景色を見た。写真を撮るけどiPhoneXR、たかが知れている。スマホ変えたい。今日はずっと1人。自分は1人を楽しめる人である。だがそれは1人ではない時があるからなのだろうな。明日でなおき君は日本へ帰る。着々と1人に近づいている。大丈夫かな。そして練習場へ。やっていたのは小学生年代。先週見た天才少年たちをまた見に来た。ゴール前のスローインに対する攻防のトレーニングをしていた。この年代なら何をやっても新鮮な練習になるから、練習なんて何でもいいのかなとか考えながら(そんなわけない)、昨日のトレーニングの復習をしていた。
練習が終わり日本食レストランへ移動。明日帰るなおき君の送別会的な感じ。前に他の3人が行った日本食屋は日本食に似た何かを食べたと聞いていたので、逆に楽しみである。少しだけ時間があったので、近くにあるカンプノウまで散歩。尋常じゃない量と大きさのクレーン車を見て引き返す。バルサショップまで行こうかと思ったが遅刻するわけにはいかない。スーパーに立ち寄る。ドンキに売っている音が鳴る鳥と同じような色をした。リアルなチキンが売られていた。あいつも運が悪ければこうなっていたのかな。その後別の日本食レストランを外から見た。店は混んでいる。餃子売ってるやん。寿司も海鮮だけのものは少ない。海鮮と何かしらが乗っている。やはりガチ日本食を出すとウケないのだろうか?これから行くところに期待である。
いざ実食。マジで美味かった。本当の日本食だった。食べたのはトンカツ。カツ丼を頼んだつもりだったが、トンカツが来た。昼に友人とトンカツの話をしたので、珍しく海鮮ではなくトンカツを頼んだ。バルセロナに来て初の日本食。日本の米は美味い。雑談をしながらゆっくり食べる。またここに来よう。やはり話すのは楽しい。昼に1人だったからこそ思う。最後はヨーロッパで1番でかいカジノがバルセロナにあることを聞いて解散。良いこと聞いた。乗り換えで斉藤和義の「ずっと好きだった」にめちゃ似ている歌を聴いた。イントロほぼ一緒やん。今まで夜ご飯を外で食べたのは初だったなあ。そんなこと思いながら就寝。
 
12日目
起床。やはりぐっすり寝られない。7時半に起きてしまった。今日は落ち着いた1日になりそう。今までで1番短い日記になるだろう。眠い目を擦りバイト開始。ずっと眠いし集中できない。一旦終わらせて寝る。いつになったら思いっきり寝られるのだろう。用事があったので、白石さんとなおき君が泊まるマリアの部屋へ。眺めが綺麗だった。水が日本とは違う味がした。これが軟水と硬水の違いなのだろうか?そんな質問をできるはずもなく用事を済ませて退散。急に来た日本人にも優しく対応してくれる、さすがスペイン人だ。
昼食。マカロニとスペイン唐揚げ。今更気づいたが、スペイン唐揚げの中身はちゃんと火を通せば色がつく。初日にピンクだったのはミスであった。あれはあれで美味しかったけど。
練習のため、スタジアムに向かう。なおき君とははるき君同様、非常にあっさりとしたお別れをした。彼は服を捨てていた。最寄り駅にはスペイン版鈴木Q太郎みたいな人が歌を歌っていることがある。最近は見ていなかったのだが、今日久々に会った。初心を思い出して嬉しくなった。
ユースの練習。白石さんの数々のエピソードトークを聞かせてもらいながら、自分の人生を考える。社会の話、人としての話、所属チームの話、大学の話。人生経験が違う。関わる人は子どもであれ大人であれ全員人間である。忘れないようにしよう。その後は小学生年代の練習。やっぱり人と話しながらだと色んなアイデアが出てくる。スペインと日本の違い、それを意識しないといけない。
集合に向かいにロッカールームを探す。おかしい。マルティン、ジェラールだけでなく選手たちもいない。はて、どうしたものか。マルティンに連絡すると、送られてきたのは違うグラウンドの写真。絶望。幸いそこまで遠い場所ではなかったので急いで電車で向かう。高田さん(このプログラムのコーディネーター、コルネジャユースチームの分析スタッフ)30分前にマルティンとスタジアムで話したらしい。どゆこと。
到着。ちょうどアップが終わったくらいだ。みんな笑顔で迎えてくれた。良かった罰金じゃなくて。昨日は狭い場所から遠い場所へ逃げる練習。週末の相手を仮定した動き方のトレーニング。数種類の形を仕込んでいた。マルティンがメインで指導していたので、ジェラールがメニューについて教えてくれた。
すると突然練習が終わった。いつもより少し早い。マルティンが英語で何か伝えてくれた。この後サンドイッチとかを食べるらしい。分からないまま着いていくと選手が続々とやってきた。テーブルを囲んでワイワイ食べる。どんどん出てくるサンドイッチ、食べた個数など気にせず、どんどん手を出す選手たち。大人びているとはいえやはり中学3年生である。奥の方に座る子はひとつしか食べていないというのに。これが競争社会に生きる選手たちの覚悟か。食事が始まる前にマルティンが月曜日のトレーニングについての質問に答えてくれた。絞っても5つになってしまった。多いにも関わらず丁寧に答えてくれた。ちなみにマルティンの英語は聴き取りづらい。ジェラールは聴き取りやすい。こんなん別に書くことじゃないか。そして食事が始まる。なるほどチャンピオンズリーグがあるから、早く終わってみんなで食事をしているのか。バルサ対ナポリ。バルサが点を入れた時にはみんなで喜び、ナポリが入れた時には失望した。チームの一体感を感じた。このチームはやはり素敵である。こんなチーム作りが出来たら最高だな。選手が全員楽しんでいる。スペインはそこを大切にしている。
帰宅。ボカディージョを食す。サンドイッチもポテトも食べていたので、そこまで重くなくて助かった。どうせ明日も早く起きてしまうのだろう。確かに日中眠い時はあるが、部活をやっている時の授業ほどではない。やはり週6の部活は偉大である。そんなことを思いながら就寝。なんやかんやいつもくらいの文の量に落ち着いた。

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