勝利への渇望、そして、不撓不屈の精神

大城悠真(1年/DF/渋谷教育学園幕張高校)

一年プレイヤーの大城です。ア式蹴球部への入部feelingsということですが、高校のことを振り返りすぎてほとんど高校卒部feelingsになりました。ご容赦ください。

勝つために必要なことは何だろうか。技術、フィジカル、精神力、挙げ出したらキリが無いほどあるだろう。しかし、全て高い基準で兼ね備えた選手なんてそうそういない。自分はサッカーが下手だ。単純にボールを扱う技術もなければ、持っている技術で器用にプレーする能力もない。だからこそ自分が持つ手札で精一杯勝負する。それが自分の高校時代のサッカーだった。

高一の時、入ったばかりの時はチームについて何一つわかっていなかった。毎日のきつい走り練や筋トレをただしんどいと思いながらこなし、練習では下手すぎて何度も怒られた。公式戦はというと、自分はベンチで試合を眺めることしかできなかった。試合に出たい気持ちは大いにあったが、今思えばきっと試合に懸ける思いは大したものじゃなかったのだろう。

初めて試合に出た時、自分のチームは0−2で負けていた。自分の役割は明らかだった。でも何もできなかった。死ぬほど悔しかった。苦しい思いに耐えながら練習して、ようやく出た試合でチームの足を引っ張った。自分の未熟さを思い知った。自分には何もかもが足りていなかった。

そして一回目の選手権。初戦は予選リーグ最終節で、圧勝していたこともあって最後の方に少し出してもらえた。勝っていたとはいえ負けたら終わりの試合で出場する緊張感は、それまで感じたことのないものだった。そして勝ち上がった決勝トーナメント一回戦、相手は同格の相手だった。自分は試合に出ることはできなかったが、先輩たちの3年間を締めくくる試合にとても胸を打たれた。自分が苦しいと思っている一つ一つの練習を真剣にコツコツと毎日続けることがどれだけ力になるかを実感した、とても印象的な試合だった。

高二の時、怪我人が多かったチーム状況もあってのことだが三年生たちが引退したことでスタメンになった。それによって急にプレーが大きく変わるかといえば、そんなことはない。さらにリーグ戦で昇格したことで相手のレベルも上がり、求められる能力も上がった。練習する度、試合をする度にしょうもないミスを繰り返して、監督に怒られて、何度も自分の未熟さを感じる、そんな毎日だった。そして大した結果を出せないまま、怪我から復帰して来た選手や上手い後輩にポジションを奪われた。やっぱり死ぬほど悔しかったが、それ以上に惨めで情けなくて、辞めたいとも思った。

そして二回目の選手権。自分は顔面骨折により離脱していたので試合には出られなかった。前半で二失点してしまい絶体絶命の中、後半残り３分で２点取り返した時は鳥肌がたった。一年生の時も感じたが、苦しい練習を続け、乗り越えた先の土壇場の気持ちの強さがどれだけ力になるのかということを改めて思い知った。そして次の年、自分もそんな試合がしたいと強く思った。

高三、最後の年。最高学年として、キャプテンとしての重圧を感じ続けた一年間。高校三年間で一番濃い一年間だった。さっきも言った通り学年が変わったからといって急激にプレーが変わることはないが、変えなければならなかった。チームを引っ張らなければならない、勝ちたいという気持ちをプレーで示さなければならない。頭ではわかっていたが、自分のプレーはそんなに良くならなかった。成長してないわけじゃないけれど、足りない。何度も何度も怒られて自分が嫌になる。

そんな中、リーグ戦が始まった。先輩たちが去年残留してくれたおかげでレベルの高いリーグでプレーできることになり、内心期待していたもののプレッシャーが大きかった。結果は惨敗。基本的に大きく点差をつけられて負けた。自分が積み重ねてきたことは全く通用しなかった。悔しかった。毎週毎週、負けを叩きつけられてひたすら苦しかった。

そして迎えた県総体はトーナメント初戦で敗退。相手に先制点を許し、その後逆転するもさらに終了間際で逆転された。自分は精一杯やっているのに、と何度思ったかわからない。どうしてこんなに上手く行かないんだろうと落ち込み、どんどん沼に引き摺り込まれていく。

思えばここが分岐点だっただろう。ここで凹んだままであればきっと今の自分はいないと思う。プレーを何か大きく変えたわけでもない。ただ「自分にできること」をする。それを再認識しただけだ。自分でミスした分、チームメイトがミスした分走ってカバーする。そして誰よりも声を出して誰よりも体を張る。それがチームのために自分ができる精一杯だった。

そして、最後の選手権。一年生の時と違って緊張よりも高揚感が強かった。決勝トーナメント一回戦は快勝だった。年間通して一度も勝てなかったので、最高に嬉しかった。自らの手で2得点もできて大満足。二回戦。自分の中では最高のプレーができたと思う。同学年の仲間も全員出場して、全員がその時点で一番いいプレーをしていたと思う。それでもやはり、勝つのは簡単ではなかった。

正直、高校生活を全てサッカーに捧げた三年間はしんどかったけれど、終わってみるとあっという間で最高に楽しかった。苦しい思いをして、何度も辞めたいと思い、それでも勝ちたい一心で三年間やり通したことは自信となり、どんなに打ちのめされようと闘う渋幕魂は今も力となっている。読んでる人は思うだろう、こんな文章を書いているくらいだから高校サッカーで満足してそう、と。実際は全くそんなことはない。

選手権が終わった直後はまだやり切った感覚でいっぱいだった。しかし思い返せば年間通して負け続けて、悔しくないわけがない。自分の日々の努力も、試合中の頑張りも、全ては結果で測られる。高三の時の戦績は、無関係な人から見れば大して努力していないように見えるだろう。そんな状況で満足なんてできたものじゃない。というわけで大学でもサッカーを続けることを決めた。

例の如く、学年や環境が変わっても急激に上手くなるなんてことはない。自分は相変わらず下手なままだ。もっと言えば、ア式のサッカーは今までやって来たサッカーと全然違う種類のサッカーで絶賛苦戦中である。しかし、新たな環境だからこそ0から色々挑戦できることもある。

負けるのは嫌いだし、サッカーをするからには勝ちたい。勝利への渇望が、また足を動かす原動力になる。そして不撓不屈の精神を生み出す。僕は再びそんな世界に足を踏み入れた。どんなに打ちのめされようと、立ち上がり、信じて歩みを続ける。勝利を掴み取るその日まで。